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  • 掲載:2026年02月24日 更新:2026年02月26日

経験と冒険で体現するエクセレント空間。インテリアデザイナー笠原英里子が描く、店舗デザインの美学
株式会社カサハラデザインワーク 代表取締役 インテリアデザイナー 笠原英里子

笠原英里子さん
ウェディング施設から飲食店、レジデンスまで多彩な空間を手がけるインテリアデザイナー・笠原英里子さん。代表作「BLOOMY'S(川口)」は日本空間デザイン賞を受賞し、住宅街に新たなコミュニティを生み出した革新的なプロジェクトとして注目を集めている。今回は、デザイナーとしての歩みや、記憶に残る空間づくりへのこだわり、そしてこれからの店舗デザインの可能性を伺った。

Guest

笠原 英里子 | Kasahara Eriko

桑沢デザイン研究所スペースデザイン科を卒業後、近藤康夫デザイン事務所で約9年間にわたり経験を積む。1999年に独立し、カサハラデザインワークを設立。2007年に株式会社化し、以降、空間デザインを中心に建築デザインやプロダクトデザインなど、幅広い領域で活動を続けている。

株式会社カサハラデザインワーク
東京都港区南麻布1-5-8
南麻布スキップフラット401
03-6435-0908

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原点はガラス。好奇心から切り拓かれた空間設計への道

笠原英里さん

―まずはじめに、インテリアデザインの道に進まれたきっかけを教えてください。

笠原  もともとガラス工芸に打ち込んでいましたが、作品制作を続けるにはデザインを一から学ぶ必要があると感じ、桑沢デザイン研究所に入学しました。当時倉俣史朗さんが発表したガラスの編み込み棚や椅子、割れガラスのテーブルなど夢のような作品に惹かれ、次第に空間デザインを志すようになっていきました。
卒業後は近藤康夫デザイン事務所に入り、論理的なデザインの組み立て方を学びました。ここで培った空間の象徴性や空間を異化する視点は、今も私のベースになっています。

―1999年に独立されて以来、空間設計で一貫して大切にされていることは何でしょうか?

笠原  「まだ見たことのない世界を見てみたい」という探求心です。商業施設のデザインではいかにブランドを最大限に表現するか、ビジネスとして成功させるかが、重要な課題です。必ずしも自分が思い描く世界を作るわけではありません。でも、どんな条件下でも、1%でも新しい挑戦を取り入れてみる。ディテールや素材の組み合わせ、光の効果など、毎回一歩先を目指して工夫しています。


手を離れた後の“育ち方”まで見据える店舗設計

HILLTOP THE SQUARE「St. Wave」
© N acasa & P artners Inc.

HILLTOP THE SQUARE "St. Wave"
チャペル内に波のうねりを表現するため、高さ8.5mの自立アーチ型フレームを設置。直径54mmと17.3mmの鋼管で構成され、8つのスパンで連続するフレームが広がる波を象徴。白いフレームは宙に浮く布のように光を柔らかく拡散し、神聖で静かな空間を演出している。

―店舗設計は、住宅設計などと比べてどのような違いがありますか?

笠原  店舗は不特定多数の人が訪れる場所です。年齢も性別もさまざまで、誰が来るかは分かりません。だからこそ例えばブティックであれば「どんな動線で空間を体験し、どのポイントで魅力を伝えるか」を想像しながら設計する過程がとても面白いのです。
一方、住宅は住む人が心地よく暮らせることがゴール。店舗はそれだけでは終わらず、オープン後に利用者やスタッフがどのように使い、空間がどう育っていくかまでを見据える必要があります。設計者の手を離れたその先で、空間がどんな変化を遂げるのかを想像する。それが店舗設計ならではの魅力だと感じています。


葬祭場とカフェという対極な空間の融合にチャレンジ

Bloomy's
© N acasa & P artners Inc.

Bloomy's
空間全体に植物や花を取り込み、“花と緑に包まれた”心地よいムードを演出。大きな窓や開放的なガラス開口が、自然光をたっぷりと取り込み、内と外をやわらかくつなぐ。建替えによって従来の葬儀施設の印象を一新し、地域に開かれた新たな場として生まれ変わった。

―代表作の一つであるフラワーカフェ「BLOOMY'S」は、どのように設計を進められたのでしょうか?

笠原  「BLOOMY'Sは、もともと葬祭場の計画から始まったプロジェクトです。住宅街での葬祭場計画が進んでいたのですが、コロナ禍で家族葬が主流となり、従来の大規模葬祭場のあり方に疑問が生じました。クライアントとも「これまでの発想にとらわれず、未来を見据えよう」と話し合い、私から「1階にフラワーカフェを作るのはどうでしょう」と提案したのです。
葬祭場は一生に一度しか利用しない施設である一方、カフェは日常的に人が集う場所。真逆の施設を組み合わせれば、敬遠されがちな葬祭場を地域に開かれた親しみのある空間にできると考えました。

―葬祭場にカフェが併設され、あんなに素敵な空間ができるとは驚きでした。

笠原  完成するまでは受け入れられるか不安もありましたが、実際にオープンすると、カフェのお客さんは同じ敷地で葬儀が行われていても気にせず、スタッフ主催のフラワー教室には子どもからお年寄りまでが集まりました。地域のコミュニティが自然に広がっていく様子を見られたのは本当に嬉しかったですね。

―2022年の日本空間デザイン賞、iF デザインアワード2023など、数々の受賞も話題になりました。

笠原  受賞をクライアントに報告したら、祝賀会を開いてくださいました。恵比寿のレストランのシェフが料理を作り、日比谷花壇のトップデザイナーが会場をお花で彩ってくれて・・・。その光景を目にした時、空間を通じて人と人が繋がり、喜びが広がっていく良い循環を実感することができました。


時代を超える空間づくりの鍵は“提案力”

インタビューを受ける笠原英里子さん

―長年空間設計を手がけてこられましたが、時代とともに求められる空間のあり方は変化していると感じますか?

笠原  確かに変わっています。近藤事務所に入った当初はファッションが全盛で、新しいデザインが次々と生まれていました。その後バブル期に入り、さまざまな業界から依頼があり、ヘリポートまでデザインしたこともあります。
独立した頃は飲食店が好調で、現在はホテルが主流です。経済やトレンドの影響を受け、約10年単位で大きく変化してきましたね。時代に左右されず続けていくには、その都度新しい価値を提案できる力が不可欠です。決められたことをこなすだけでは、他の誰かに代わられてしまう。経験値を積みながらも常に新しい視点やアイデアを提示し続けること。それがクライアントから信頼され、選ばれ続ける理由だと感じています。


取材

建材ナビ インタビュアー・ライター 藤井 由香里
笠原さんの柔軟な発想力と細部まで妥協しない姿勢に強く心を動かされました。変化の激しい時代でも好奇心を原動力に挑戦を重ね、空間に記憶を宿すデザインは、形を超えて人々の心に寄り添い、息づく体験を生み出していると感じました。

笠原英里子さん・建材ナビインタビュアー・ライター



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笠原 英里子 | Kasahara Eriko

桑沢デザイン研究所スペースデザイン科を卒業後、近藤康夫デザイン事務所で約9年間にわたり経験を積む。1999年に独立し、カサハラデザインワークを設立。2007年に株式会社化し、以降、空間デザインを中心に建築デザインやプロダクトデザインなど、幅広い領域で活動を続けている。

株式会社カサハラデザインワーク
東京都港区南麻布1-5-8
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