- 掲載:2026年01月23日 更新:2026年01月30日
VMDと展示会、異分野のプロが語る“人が集まる空間”の作り方 SUPER PENGUIN 株式会社 代表 竹村尚久 × フォーハーツ株式会社 代表 大髙啓二

Guest
SUPER PENGUIN 株式会社 代表取締役
展示会デザイナー/プロデューサー/一級建築士
竹村 尚久 | Takemura Naohisa
1970年生まれ。一級建築士。ゼネコンで設計業務を経て独立し、「ディーコンセプトデザインオフィス」を設立。その後、展示会ブース専門の空間デザイン会社「スーパーペンギン」として業務を特化。来場者心理を軸に、デザインから陳列・コピー・立ち方までを総合的に提案。自治体や企業への支援やセミナーも高評価を得ており、著書『集客できる展示会ブースづくり』(2023年)を刊行。
SUPER PENGUIN 株式会社
東京都品川区上大崎3-10-50
シード花房山405
03-6417-4497
フォーハーツ株式会社 代表取締役
VMD 専門家/空間デザイナー
大髙 啓二 | Ohtaka Keiji
1968年山梨県生まれ。VMDのパイオニアとして、売場づくりコンサル・空間ディスプレイ・空間デザイン・プロジェクションマッピングなど、幅広くデザインとディレクションを手掛け、 JAPAN SHOPや中国 海外など数々の特別講師を勤める。VMD事業+五感に訴える 光・音・香・動をデザインする五感クリエイターとして、お客様がたくさん集まる場所にふさわしい、楽しさや、感動、そして共感と「心価値空間づくり」をプロデュースし活躍。
フォーハーツ株式会社
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-13-20
第七宮廷マンション 801
03-6804-2710
アートか、ビジネスか。空間デザインに潜む二つの世界
―異なる分野でそれぞれ活躍されるお二人ですが、お互いの印象と共通点についてお聞かせください。
大髙
竹村さんのすごいところは、ブースで人を集め、商品に触れてもらい、スタッフがお客様とコミュニケーションを取るところまで、すべてを一貫してコンサルティングされている点です。僕が店舗で手掛けるのは、販売員の方がお客様に接客するまでの「場」と「導線」を作ること。でも、竹村さんは箱を作るだけでなく、商品の魅力をきちんと伝え、体験してもらい、接客に繋げるという流れを展示会で実現されています。それはまさに、僕がVMDで重要視している「価値をどう伝えて導線を作るか」ということと同じなんです。
竹村
共通項は多いと思います。だから、僕らが役割を交代しても、きっとうまくいくはずです。VMDの概念と展示会の概念は融合できるし、融合させた先にこそ、次の店舗や展示会の進化形がある。それが、現状を突破する鍵になるんじゃないかと考えています。
大髙
展示会は、広いホールの中に大勢の人がいますよね。その中で、どうやって自社のブースに人を引き込むか。遠距離・中距離・近距離からの見え方を計算し、視覚効果と顧客心理を組み合わせて「あっ」と思わせて、入りたくなる導線を作る。その作り方が、僕のVMDと全く一緒なんです。だから、竹村さんのブースにはたくさんの人が集まる。
竹村
世の中のインテリアデザイナーさんや建築家って、実はあまりそういうことを学んでこないんですよね。僕は展示会の世界に入ったからこそ、必要に迫られて考えてきましたが、学校ではそういう勉強はしませんから。それは、非常にもったいないことだと感じます。
竹村 展示会の業界に移ってから気づいたのですが、インテリアや建築をやってきた人たちは、集客があまり得意ではないんです。なぜだろう、とずっと考えて、一つのキーワードとして「空間デザイン」という言葉の捉え方の違いがあるのでは、と思い至りました。
展示会業界の人は、「空間デザイン」という言葉を誤解している節があります。僕らが建築の世界で学んだ空間デザインとは、単に形を作ることではなく、その場の空気感や、そこにいる人の心理を作ることでした。しかし、展示会業界で空間デザインを手掛けているのは、広告業界出身者など、必ずしも建築や空間を専門的に学んでこなかった人たちが多い。だから、彼らの言う「空間デザイン」は、どうしても「造形物」を作ることになりがちなんです。結果として、展示会ブースは空間ではなく、造形物の集まりになってしまう。
一方で、インテリアデザイナーがブースを手掛けると、今度は「余計な要素を全て削ぎ落とすことこそが空間デザインである」という考え方から、真っ白でミニマルな空間を作りがちです。これも、集客という点ではうまくいかないことが多い。
そこで僕は、空間デザインには二つの側面があるのではないか、と考えるようになりました。一つは、アートとしての空間デザイン。もう一つは、ビジネスとして集客を目的とする空間デザインです。世の中で評価されている著名なデザイナーの方々が手掛けるのは、前者のアート系の空間デザインが多い。店舗デザインの場合、開業当初の集客には責任を持つかもしれませんが、その後の運営は店舗側に委ねられるため、どうしてもアート表現に寄りやすくなる構造があるのではないでしょうか。
僕も以前はそうでしたが、展示会の世界ではそれでは通用しない。3日間という短期間で結果が出なければ、次の仕事はありませんから。
大髙 ものすごく共感します。竹村さんがおっしゃる「アートとビジネス」という分け方は、VMDの世界と全く一緒です。僕は完全にビジネスサイドの人間です。アートサイドにいるのは、ショーウィンドウのデザインなどを手掛ける方々。ショーウィンドウは商品を直接売る場所ではないので、よりアーティスティックで自由な表現が可能です。
一方で、僕が手掛けるのは、店舗の売上を直接上げるためのレイアウトや基準作り。竹村さんがBtoBでクライアントのために空間を作るのに対し、僕はBtoCでお客様視点を徹底します。「入りづらい」「見づらい」「分かりづらい」「手に取りづらい」といったお客様の「〜しづらい」を、「〜しやすい」に変えていく。その顧客視点での店づくりが、結果的に企業のビジネス成果に繋がり、次の依頼をいただける。竹村さんが3日間で結果を出すのと同じで、僕も売上が上がらなければ仕事は来ません。そこがまさに共通点ですね。
2022/KITTE Marunouchi "WHITE KITTE"
日本の自然の大切さを後世に繋げる「KITTEの森~自然からの贈り物」をテーマにし、終了後はツリーをベンチとして再利用されている。(フォーハーツ株式会社)
言葉とビジュアルで直感を刺激する。リアル体験の価値が問われる時代へ
―デジタル化が進む中で、リアルな店舗や展示会の価値をどのように捉えていますか?
大髙
デジタルの時代だからこそ、逆にリアルの体験価値がより重要になっています。
コロナ禍を経て、お客様はリアルな場で商品を直接体験できることへの欲求が高まりました。今、オンラインで成功しているブランドが、こぞってリアルな体験型店舗を出しているのがその証拠です。リアルで商品を体験し、ブランドのファンになったお客様がアプリ会員になり、最終的に売上に繋がっていく。
デジタルサイネージやバーチャルフィッティングなども一時期トレンドになりましたが、結局、お客様は実際に服を試着したいし、商品の手触りや香り、質感を五感で確かめたい。リアルの体験価値を、デジタルがサポートするという関係性が理想です。リアルな場にわざわざ足を運ぶのは、そこでしか得られない楽しさや発見があるから。デジタル時代が加速するほど、リアルの価値はさらに高まっていくと感じています。
竹村
リアルがなくなることは絶対にないでしょう。ただ、その価値の質は変化してきています。最近よく見られるイマーシブ(没入型)スペースや、ショールーム型のストアなどは、まさにリアルのあり方が変質している象徴だと思います。
コロナ禍でオンライン展示会も試みましたが、やはり物が触れない限り、最終的なクロージングには至らないという難しさがありました。
大髙
確かに、ものづくりのストーリーを知りたいというニーズは高まっていますからね。ライブでの中継は面白いかもしれません。収録された動画を流すだけでは、お客様の心は動きませんから。
大髙 今の時代、人々はスマートフォンで短時間のうちに情報を収集しますから、判断も非常に速くなっています。だからこそ、直感的に理解させることが重要です。
キーワードを短くしたり、職人さんのビジュアルを大きく見せたりすることで、お客様は瞬時に価値を理解する。僕が手掛ける小売の売り場でも、お客様の人の流れに合わせて、360度どこからでも魅力的に見える陳列を考えたり、お客様が自然と集まる「人だまり」を意図的に作ることで、入店客数を増やすといった工夫をしています。
未来を切り拓く「仮設的素材」。プロが注目する建材とその可能性
―現在、お二人が注目されている、あるいは店舗や展示会で使ってみたい素材や建材はありますか?
竹村
僕が今一番注目しているのは「仮設的素材」です。建築の世界にいた頃は、常に最新のタイルや壁紙といった素材を探していました。しかし、展示会の世界に移って愕然としたのは、この業界には素材の新陳代謝がほとんどないということです。使われているのは何十年も前から変わらない壁紙やパンチカーペットばかりで、デザインのバリエーションも乏しい。なぜなら、たった3日間のために最新の高価な建材を使うのはコスト的に見合わず、また建築と同じ施工方法では設営のスピードに到底追いつかないからです。建築の職人さんが2日かける壁紙貼りを、展示会では30分で終わらせる世界ですから。
その結果、新しい商品を発表するはずの展示会ブースが、仕様としては古めかしいまま、というジレンマが生まれています。だからこそ僕が欲しいのは、簡単に取り付け・取り外しができて、使い回しが可能な「仮設的素材」です。デザイン性が高く、インテリアや建築のデザイナーの発想から生まれた、瞬間的に空間の質を変えられるような素材があれば、展示会の世界は間違いなく変わります。
大髙
まさにおっしゃる通りで、今、メーカーもポップアップストアを出す際には、単なるレンタル什器の「仮設っぽさ」ではなく、きちんと作り込まれたクオリティを求めています。
竹村
展示会の設営技術を応用すれば、面白いことができるはずです。例えば、地方の閉店寸前の百貨店を2週間だけ借りて、一度すべてを空っぽにし、そこに展示会のようにブースをバーっと建てて、地域の様々な作り手が出展するマーケットイベントを開催する。それができれば、キラーテナントに頼らない新しい商業施設のあり方が生まれるかもしれません。
大髙
素材選びで言うと、僕が地方の仕事などで意識しているのは、リサイクル素材やサスティナブルな素材ですね。企業の姿勢を語る上でも重要ですし、コンセプトにも繋げやすい。JCDのプロダクトアワードの審査などでも、やはりそういった社会貢献に繋がる視点を持った素材には注目しています。ナイキが不要になったシューズをリサイクルして什器を作っているように、企業の思想が感じられる素材の使い方は、お客様の共感を呼ぶ上でとても大切だと感じています。
―最後に、未来の店舗やブランド作りにおいて、デザイナーが担うべき役割についてお考えをお聞かせください。
大髙
僕らは未来をサポートする側なので、まずはクライアントである企業側に、自分たちの価値やビジョンが明確にあることが大前提です。その思いがあればこそ、僕らはそれを空間という形に落とし込むことができる。一緒に未来を作っていくというパートナーシップが不可欠です。お店を作って終わりではなく、その価値を維持し、育てていく。そのための人材育成も含めて、クライアントと共に走り続ける姿勢が重要だと思っています。
竹村
僕らが関われるのは、ほんの一瞬です。だからこそ、その一瞬で、その会社が未来に向かって成長する「きっかけ」を与えたいと常に考えています。僕らがプロフェッショナルとして提供する知見が、クライアントの中に残り、僕らの手を離れた後も進化し続けていく。実際に、僕がサポートした地方の企業が、展示会への出展をきっかけに大きく飛躍していく姿を何度も見てきました。そういう瞬間に立ち会えるのが、この仕事の最大の喜びですね。
取材
KENZAI-NAVI Media Planner 秋葉 早紀(二級建築士)
お話を伺いながら、商品購入時に自分が無意識に行っている視線や行為について、深く考えさせられました。リアル体験の価値や集客力を高めるための空間デザインの在り方を探る上で、大きなヒントになると感じました。
SSOJ(日本空間デザイナー支援機構)
JCD(日本商環境デザイン協会) インタビュー&レポート
「建材ナビジャーナル」特集記事
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SUPER PENGUIN 株式会社 代表取締役
展示会デザイナー/プロデューサー/一級建築士
竹村 尚久 | Takemura Naohisa
1970年生まれ。一級建築士。ゼネコンで設計業務を経て独立し、「ディーコンセプトデザインオフィス」を設立。その後、展示会ブース専門の空間デザイン会社「スーパーペンギン」として業務を特化。来場者心理を軸に、デザインから陳列・コピー・立ち方までを総合的に提案。自治体や企業への支援やセミナーも高評価を得ており、著書『集客できる展示会ブースづくり』(2023年)を刊行。
SUPER PENGUIN 株式会社
東京都品川区上大崎3-10-50
シード花房山405
03-6417-4497
フォーハーツ株式会社 代表取締役
VMD 専門家/空間デザイナー
大髙 啓二 | Ohtaka Keiji
1968年山梨県生まれ。VMDのパイオニアとして、売場づくりコンサル・空間ディスプレイ・空間デザイン・プロジェクションマッピングなど、幅広くデザインとディレクションを手掛け、 JAPAN SHOPや中国 海外など数々の特別講師を勤める。VMD事業+五感に訴える 光・音・香・動をデザインする五感クリエイターとして、お客様がたくさん集まる場所にふさわしい、楽しさや、感動、そして共感と「心価値空間づくり」をプロデュースし活躍。
フォーハーツ株式会社
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-13-20
第七宮廷マンション 801
03-6804-2710

