- 掲載:2026年02月16日 更新:2026年02月20日
照明デザイナーが描く、 暮らしに寄り添う都市のあかり 株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツ 照明デザイナー 中村美寿々

景観照明から再開発、ホテルまで幅広いプロジェクトに携わる中村さんに、照明デザインを通じた都市との向き合い方と、人の記憶に残る照明のあり方について伺った。
Guest
中村 美寿々 | Nakamura Misuzu
LPAシニアアソシエート。一級建築士。東京大学大学院にて光環境を専攻し、パリ・ラヴィレット建築大学への留学を経て都市照明の研究に取り組む。東京の夜景をテーマに修士論文を執筆後、夜の景観づくりに携わる。主なプロジェクトに長崎市まちなか夜間景観整備、みんなの森 ぎふメディアコスモス、ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町、ハレクラニ沖縄、高輪ゲートウェイ駅など。
株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツ
東京都中央区佃1-11-8-1F
03-4500-6380
日常の風景に宿る光の魅力
―照明デザインに興味を持ったきっかけを教えてください。
中村
建築学科で学ぶなかで、自然光をどう設計に活かすかに関心がありました。パリに留学した際、何気ない夜景の美しさに感動したのがきっかけです。特別なライトアップではなく、日常に溶け込むような光景に惹かれ、都市照明の世界に進みました。
―都市照明において、どのようなことを意識していますか?
中村
都市照明は、暮らしを支えるインフラのひとつです。観光向けの演出ではなく、そこに暮らす人々の日常を心地よく照らすことが大切。そのため、地元の方々と実際に街を歩きながら「どんな光が心地よいか」を共有しています。そこで得た感覚をもとに、街全体を俯瞰する“光のマスタープラン”として設計に落とし込みます。
照明デザインは、実は非常に横断的な分野です。物理の知識や内装設計、光のシミュレーションまで、多様な視点とスキルが求められます。再開発やホテル、公共施設など、扱うプロジェクトごとに異なる光の役割に向き合うことが、毎回新たな挑戦につながっています。
快適さと環境を照らす光の選び方
―照明器具の選定で大切にしている視点はありますか?
中村
最も意識しているのは、眩しさ(グレア)を抑えること。光源を隠したり、必要な場所だけに光を届けることで、空間に余計なノイズを生まないようにしています。それは快適性の向上にも、省エネや環境配慮にもつながる、大切な視点だと感じています。
近年は、膜素材やフィルムなどの新技術も次々と登場していて、器具の型番も毎年のように変わるほど進化のスピードが速いんです。キャッチアップは大変ですが、だからこそ柔軟に技術を取り入れられるのが照明の面白さだと思っています。
10年後も愛される、記憶に残る光を
高輪ゲートウェイ駅
特徴的な大屋根が駅舎を一体的に覆うデザインの建築に対して、照明もそのランドマーク性を十分に高めることを目指した。建築意匠に沿った照明計画と、調光調色制御の活用によって、従来のように照度を確保するだけでなく、刻々と変化する自然光を感じられる、新しい駅舎の照明を実現させた。
―働き方や業界の課題などを感じたことはありますか?
中村
コロナ禍で現場に行けなくなったことで、照明の微妙なニュアンスをどう伝えるかが大きな課題になりました。光は現地で感じてこそわかるものですが、それをカメラ越しで共有するのは難しく、空間の空気感や光のグラデーションがうまく伝わらない。この経験を通して、感覚を言語化する力や、チーム内でのコミュニケーションの重要性を改めて実感しました。
―時代の変化とともに、照明の在り方も変わってきていると思います。今後大切にしていきたい視点を教えてください。
中村
最近は、かつて自分が手がけた場所を再訪する機会が増えてきました。器具は変わっても、空間に残る光の質がよければ、人はその場所を好きでい続けてくれる。そうした経年に耐える光を設計することが、今の自分のテーマです。
照明は目に見えないからこそ、空間の空気や時間の質を左右します。現代において、日が暮れた後の風景は照明がつくり出しているという意識を、設計を通して多くの人に届けていきたい。時代の変化を受け入れながらも、人の心に残り続ける照明を、これからも丁寧にデザインしていきたいですね。
取材
建材ナビ インタビュアー・ライター 藤井 由香里
照明の光具合をデモンストレーションしていただきました。
「日が暮れたあとの世界は、照明が見せている風景なんです」という中村さんの一言が、ずっと心に残っています。目に見えない光がその場の空気や時間の質を生み出し、人の記憶にそっと寄り添っていく——そんな照明の力を、改めて感じさせられる時間でした。
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株式会社ライティング プランナーズ アソシエーツ
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