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  • 掲載:2025年12月23日 更新:2025年12月23日

建築が示唆する文化的環境への新たな視点。アーキテクチャーとして挑む、多様な感性に適応する社会づくり
ALTEMY / 代表 津川 恵理(建築家)

津川恵理
Photo Credit:GION
「なぜこの人の動きに惹かれるのだろう」――幼少期に抱いた問いが、やがて空間を通じて人と社会の関係を見つめ直す建築へとつながった。三宮駅前広場や渋谷公園通りの都市空間、保育園設計からモビリティデザインまで、多様な領域を横断しながら、前例のない挑戦を続ける建築家・津川恵理氏。社会の規範に問いを投げかけ、自らの建築観を更新し続ける津川氏が見据える、これからの建築とは?

Guest

津川 恵理 | Tsugawa Eri

建築家/ ALTEMY 代表。京都工芸繊維大学、早稲田大学大学院を修了後、文化庁新進芸術家海外研修員としてニューヨークのDiller Scofidio+Renfro に勤務。2019 年、神戸市主催「さんきたアモーレ広場デザインコンペ」で最優秀賞受賞を受賞し、帰国後にALTEMY を設立。

ALTEMY
東京都中央区東日本橋2丁目26-8
MKKビル8階

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建築との出会い、そして身体表現から建築へ

津川恵理
―まずはじめに、津川さんが建築と出会われたきっかけ、そして建築家を志すようになった原点についてお聞かせいただけますか?

津川  実は、もともと建築家を志していたわけではないんです。正直なところ、幼い頃から様々な習い事をしていましたが、心から興味を持てるものがなかなかありませんでした。そんな中で唯一、自分から『やりたい!』と強く思ったのが、身体表現パフォーマンス、つまりダンスでした。

ある日、テレビでダンスを見ているときに、同じ振り付けでも、なぜこの人にだけ惹きつけられるんだろう、なぜこの人の動きに目が行くんだろうと、強く興味を持ったんです。本当は身体表現者になりたかったんですよ。

ただ、両親の教育方針で『大学には行っといた方がいい』と言われ、大学受験をすることにしました。 美大という選択肢は当時なく、理系の中で一番クリエイティブで、表現につながりそうなものは何だろうと考えた時に、なぜか私の中では建築だったんです。身体表現の延長に建築があるような気がして。
『面白そう、自分が面白いと思うものにつながりそう』という直感で進み、その結果として建築家になっていました

手掛ける建築領域と公共空間への想い

津川恵理
―どのような領域や分野の建築を手掛けられることが多いですか?

津川  建築家として独立するきっかけになったのが、神戸三ノ宮駅の駅前広場のプロジェクトでした。ニューヨークの建築事務所に文化庁の派遣員として研修していた時に、個人で応募したコンペでたまたま最優秀賞をいただき、それが私の処女作となりました。
この経験がきっかけで、公共空間のデザインを手がけることが多くなりました。
例えば、駅前広場や、商店街のシンボルアーチ、都市の移動空間などですね。公共空間の中でのデザインが比較的に多いです。 直近では、昨年コンペで選ばれた渋谷区の渋谷公園通り、パルコ前の約450mの道路デザインを手がけています。道路を単なる道と捉えず、細長いパブリックスペースと捉え、新しい挑戦をしました。

一方で、現代美術の展示空間の会場デザインや、西陣織という織物の開発、まだ公表できていませんが、モビリティのデザインも手がけています。これも公共空間、具体的には川の上を走るモビリティのデザインで、今年ローンチされる予定です。
他にも、現在依頼を受けている住宅の設計や保育園の設計など、法的に建築とされているものも手がけつつ、幅広く活動しています。

身体表現、それこそパフォーマーの舞台美術なども手がけたことがあります。『身体に影響する環境』あるいは『身体の内部の感性に影響する環境』に興味があって、特定の誰かではなく多くの人の心に響くような環境を作ることが、私の活動の主軸にあるのかなと思っています。

社会と建築と人をつなぐデザイン

津川恵理
Photo Credit:生田将人

サンキタ広場: 「ここでは、多くの人がこう過ごす」という定型化された広場の日常を解体し、100人居たら100通りの居方が存在するようなデザインとなっている。

―手掛けられたプロジェクトの数々が、人々の感性や暮らしに根ざしたものであり、建築と人、社会のつながりを見つめ直しながら取り組んでいらっしゃるように感じます。社会と建築と人をつなぐことに意識を向けられた背景には、実務を積まれていく中で考えがより確固たるものに変わっていった、という感覚があるのでしょうか?

津川 私は学生の頃から公共空間に興味がありました。公共空間は街であり社会そのものです。普段の生活やニュースを見ていると、多くの人が集まる公共空間に『なんでこうなるんだろう』と疑問を抱くことがあります。そこで幸せを感じることもあれば、憤りや窮屈さを感じることもあります。

建築は非常に大きな規範になり得ます。例えばこの机。私たちはいま、この距離で座って話していますよね。これ以上近づくには、私側に座る場所を移すしかない、という意味を持ちます。これは家具の話ですが、建築というのは、人の行為や生活、振る舞い、あるいは他者との関係性をどう作るかという時に、非常に強く大きな規範となるものです。

もちろん、政治やマーケット、人の信条やモラルといったものも影響しますが、政治やマーケットは目に見えません。一方、建築は実際にモノとして作られ、そこにデザインする側も覚悟を持って臨まなければなりません。一度できてしまったら動かせないものですから。
普段から『こうなったらもっといいのに』と思う世の中に対する自分なりの興味や、ある種の憤り、疑問などを投げかけられる場所が、私にとっては建築なのだと思います。

神戸三ノ宮駅前の「サンキタ広場」についてお話しすると、実はあの広場は円弧を描いていて、かつ全体が斜めなので、座面に水平面や垂直面が一切ありません。広場に行っていただくとわかるのですが、内側からも外側からも座れますし、円弧を描いているので、全員が違う方向を向いて座ります。さらに、全員が違う高さのところに座るので、膝の曲げ具合や体の使い方も全員変わってきます。
多くの人があの広場に集まった時に、座る向きや高さがバラバラで、全員の振る舞いや所作が違うという状態になるんです。
津川恵理
Photo Credit:生田将人

サンキタ広場: オブジェクトの幅も広がったり、狭くなったりすることで滞在者が自ら居場所を見つけていくキッカケをつくっています。

私はこれを『マジョリティの解体』と捉えています。公共空間や社会において『こうだよね』という大きな規範があるとしたら、それが全てバラバラになり、全員がマイノリティになる状態です。全員が違う振る舞いをしていると、結果的にホームレスの人と女子高生が肩が触れるほど近くに座っていても、お互い気にならないという状況が生まれてたりもします。

障害者の方が自分がマイノリティだと感じなくて済む場所になるには、メタ的に『社会ってこうだよね』というマジョリティの部分を全て解体することによって、全員がマイノリティになり、全員が他者であり、全員が違うことを許容できる公共空間になる、と考えています。
そして、そのような社会は、健常者から見た障害者への配慮などではなく、全員がバラバラになり、それぞれの人のことを考えられる社会状況になる。私はその方が豊かだと思ったので、それを建築を通して人に伝えている、という感じです。

この考えは、海外での経験が大きく影響しているかもしれません。特にニューヨークは世界で最も多民族な都市で、国籍が最も多様な街です。日本にいれば、目の前の人が日本人であることが当たり前ですが、ニューヨークでは一つの車両に乗っていると、ほぼ全員人種が違う、という状況になります。究極の公共性を見た時に、『ああ、こういう状況は、ある種豊かだな』と思いました。全員が違うのが当たり前にあると、他人にまず『自分があなたにとって敵ではないですよ』と開示したり、他人に対して自然と寛容になれる街だったので、そこから来ているのかもしれません。

社会課題への挑戦と「ネガティブチェック」の壁

津川恵理

まちの保育園 南青山: 年齢や身長の異なる園児たちの活動に明確な境界を設けず、大らかな大地のような床や曲線で保育園全体を構成することで、各領域や活動が混ざりあい、重なっていくことを目指して制作。

―社会課題のようなものに目を向けられ、まさに色々な建築を通じてそれを体現されていると思うのですが、「憤りを感じたり」というお話がありました。今、どの業界にも共通して、人手不足やコストの上昇など、様々な課題が社会的に浮き彫りになってきていると感じています。建築や空間デザインを通じて、そうした課題や様々なものに対して、どんどん変化していかなければならない時代になってきていると思うのですが、津川さんご自身が、様々なプロジェクトを通じて、そうした課題感を大きく実感された経験や、もし経験されたことがあれば、それをどのように乗り越えられたのか、エピソードがあればお聞かせください。

津川 今の社会状況で言われる物価高騰や人材不足は、わかりやすく目に見える社会課題だと思います。ただ、その質問で私が一番答えたいのは、実はその部分ではなく、今の日本の社会が『ネガティブチェック』のようになってしまっているという点です。
例えばSNSでも誹謗中傷を言う人がたくさんいたり、物申したい人が一定数いると、企業やマスメディア、公共空間などが、その一部のクレームを言う方やネガティブな意見を言う人にどう説明できるか、どう配慮できるかという方にシフトしてしまっている。そして、ポジティブな意見を言う人は、表に出てこない状況になった、という点です。
ポジティブな人は、心の中で『うわー』と思うだけで、わざわざそれを人に伝えようとする人はそんなに多くありません。しかし、ネガティブなことを言う人の意見や言葉は非常に通りやすい世の中になっていて、そこに配慮しすぎるがゆえに、本来『こうあったらいいよね』という目指すべき姿が霞んできてしまっている状況が、いま日本の社会全体にあるのではないかと正直思っています。

これを建築で感じたのは、去年竣工した南青山の『まちの保育園』です。あの保育園は床が全体的に隆起していて、ある種、都心部のビル内保育園という環境の中で、子どもたちが身体をフルに使いながら、環境を通して学べる状況を作ったんです。つまり、保育というソフト面だけで教育を受けるのではなく、ハードである建築側からもその保育の一端を担い、床が隆起したり、傾いたり、少し見え隠れしたりすることで、自分の体をどう使うかによって、他人との距離感や、他人に配慮すること、他人との関係性を学べるような環境を作ったのです。
床が隆起している保育園は日本全国どこにもありません。しかも認可保育園なのでハードルが高い。安全面や運営管理、認可の取得もそうですし、港区や東京都の認可が下りなければ建てられない保育園にもかかわらず、クライアントがその案を選んでくださったことに、私は心から感謝と尊敬をしています。

まちの保育園 南青山: 多様な起伏がある床は、身体性を伴いながら、子供たちの発見を促す場になったり、時を経て自分の成長を実感する場となったり、異なる他者を認識し共に学び合える場となります。能動的に身体を動かし、他者との距離や関係性を築いていくことで感性を育んでいきます。

その後、設計を進め、港区や東京都に認可をいただくタイミングで、やはり『前例主義』にぶつかりました。『こういう新しいことをやるのであれば、東京都で同じような隆起した床の保育園を出してください』とまず言われたんです。しかし、クリエイティブとは、いまないものを作ることが創造性であり、建築家はそうやって歴史を作ってきたわけです。それを言われたら『何も新しいことできないじゃないですか』という葛藤が、一番最近強く感じた課題感で、その山を越えるまでが非常に長い道のりでした。 『なぜ床をわざわざ斜めにする必要があるんですか?』と問われ、何度も何度も港区さんに説明しました。

たとえば、児童のデジタル化が進む中で、小学生も当たり前にデジタル機器を持っている時代に、身体能力がいかに低下しているかということを国が資料として出しているので、それを持っていきました。さらには、建築計画資料集という専門的な数字を扱っている計画の本で『こういう勾配パーセンテージでは人がこういう行動ができる』というような様々なパーセンテージの要素を、ここにこれだけ敷き詰めて作っているから、ここではおそらくこういうことが起こるし、安全面に配慮したパーセンテージはここでちゃんと担保できています、という資料を作ったりもしました。

そういう地道な交渉を『絶対に負けないぞ』という気持ちで続けました。
その時に思ったのが、『前例を出してください』と言われたなら、『もしここで前例を作れれば、次にもっと新しいことをする誰かのために何か貢献できるかも』と思ったんです。それがモチベーションにつながり、『前例主義で突きつけられた時に、じゃあ絶対にその前例を作ろう、作ったらもっと新しい可能性が生まれるかもしれない』と強く思えて、より一層力を注げました。

認可が下りるまでに半年以上の期間を要しましたが、最終的には東京都さんも港区さんも非常に応援してくださいました。資材高騰で見積もりが上がってしまい、価格を落とさなければならない設計段階に入った時に、港区さんから電話で『あれだけ言ったんだから、コストを下げるために隆起の床をなくすのだけは止めてくださいね』と言われたんです。認可が下りた後の話なのですが、その時に『ああ、そういう風に思ってくださったんだ』と思って。

一見ネガティブに見える意見や慎重な確認も、プロジェクトをより良くするための大切な「ネガティブチェック」なんだと感じました。
もちろんリスクヘッジも大事ですが、それと同時に本質的なものを見失い、良いものを追求する気持ちを忘れてしまっては、どんどん保守的になってしまい、面白くない社会になってしまう。
建築家として独立したからには、挑戦する覚悟で何か新しい一手を打ちたいと強く思っています。

前の職場は大きな組織だったので、社会的に非常に意義のある仕事は十分にできました。お給料も安定するし、福利厚生もしっかりしている。もともと、建築家になるイメージをそこまで持っていませんでしたが、神戸の広場のコンペが取れて『建築家になる』となった時、『どうせなら前職ではできないくらい、挑戦的な一手を出せるものを作りたい』と思うようになりました。
それは全プロジェクトにおいて今でも掲げています。だから、常にどこかで必ず戦いがあることを提案しているんです。

次世代の建築家へ伝えたいこと

津川恵理
―今、様々な大学で非常勤講師も務められていたり、教える立場としての津川さんの一面もあるかと思います。そういった立場として、今後次世代を担う建築家、あるいはこれから建築家として活躍していこうとしている方に、教えたいこととして意識されていることや軸としてあることは何かありますか?

津川 私よりも若い世代の方に伝えたいことですね。大谷翔平選手の言葉を借りるわけじゃないですが、「尊敬することはやめましょう」。憧れはいいのですが。
日本には巨匠と呼ばれる建築家の方々がたくさんいます。ニューヨークの建築事務所にいた時、「日本は建築文化が豊かなのに、なんでわざわざアメリカに来たの?」とよく言われたんです。日本の建築業界は世界的に多くの建築家を輩出していますし、日本の建築家は海外から見たらすごく尊敬されています。海外に出てより一層「日本の先輩方はすごく頑張ってくださったんだな」と思いましたし、非常に尊敬の念を抱いています。

しかし、尊敬しすぎてしまうと、結局その枠組みの中でしか自分も建築ができなくなってしまうんです。無意識のうちに「あの建築家っぽいな」みたいなものが出てきてしまうんですよね。そういう時に「いや、これ誰々っぽいからやめよう」というのを意識するようにしています。
上の世代がやってきたことに対して、自分たちは新しい歴史の一手として「何を新しく加えられるのか」「何を担えるのか」ということをすごく意識しています。逆に言えば、上の世代がやっていることに対してある種の批評性をちゃんと持っておかなければならない、と強く思っています。

もう一点あります。これは建築家をやっていても非常にフラストレーションを感じることなのですが、日本は非常にゼネコンの力が強いんです。鹿島建設、竹中工務店、大林組といった総合建設会社が巨大な建築を作る力を持っていて、日本のGDPにおける建設業が担うパーセンテージも他国よりも多いんです。
しかし、今ヨーロッパなどでは、新築を建てるブームはあまりありません。環境配慮、つまりCO2をどう削減するか、既存の空き家などをどう使っていくかといった、地球に優しいこと、社会にとって優しいことを提案するのがヨーロッパの主流です。
しかしながら、日本はどんどん作っています。万博もありますし、オリンピックもありました。いまでも都心で再開発があります。でも、これってブームがいつか去る時が必ず来ると思っています。
建築家が「建築だけする」需要はいずれ減っていくだろうと考えています。人口も減っているのに、また建築する必要があるのか。戦後の60年代、70年代、80年代とは違います。そうなった時に、建築家が建築するだけだと、おそらく職業としてのマーケットがものすごく縮小していくでしょう。

そういった意味も込めて、私は西陣織やモビリティデザインなど、様々な分野で建築家として活動しようとしています。
建物を設計することだけでなく、建築を「アーキテクチャー」と捉えています。
アーキテクチャーというある種の学術として、建築術・建築学的なものとして、様々な分野に応用していけるのではないか、と考えています。それは、建物を設計するだけの時代ではきっとなくなるからです。社会に広く提示できる「アーキテクチャ」を、早い段階から模索していきたいなという思いがあります。

AIとの新しい共生とは。「消費」から「アーキテクチャー」としてのインターフェースへ

津川恵理
―先ほどモビリティのお話も出ましたが、現在取り組まれているプロジェクトや、今後挑戦したいテーマなど、ご自身の中にある社会課題などと関連付けて見られていることがあれば、教えていただけますか?

津川 そうですね。実はここ1週間、AIのインターフェースにすごく興味があるんです。人工知能の発展はデジタル技術の中で非常に飛躍的です。 しかし、私たちがそれを認知しようとすると、ChatGPTやMidjourneyといった誰かが作ったフォーマットを通してでしかAIの知能を感じることができません。一般の人でもChatGPTはAIと会話するような形でインターフェースができていますし、Midjourneyなどは言葉を入力すればそれっぽい画像が出てくる。
しかし、あのインターフェースの設計が、どうもAIを「消費している」感じがするのです。結果的に「人間対AI」のような変な構造を生んでいましたが、AIは本来そういうものではないと思っています。空調や洗濯機、冷蔵庫といった三種の神器が登場して生活が大きく変わったのと同じように、人間の生活にとってある種革新的な技術革新のはずです。
ですが、人間が認知するためのインターフェースのデザインが、「AIを使って何かをしようとする」という方にしか向かっていないので、個人的には気になっています。
そのインターフェースを設計すれば、AIとの新しい共生の仕方があるかもしれません。それも私にとっては「アーキテクチャー」の一つだと思っています。先日チーム内で話していた時に、「意外とそこをやってみたいかも」と最近思いました。

建築にAIを活かすと、どういうアウトプットになるのか。 今年開催されたイタリアのベネツィア・ビエンナーレ(世界最大規模の国際芸術祭)では、日本館のキュレーター代表を建築家の青木淳さんが務められました。
青木さんは、銀座のルイ・ヴィトンや青森県立美術館、京都市美術館など、日本を代表する数々の建築を手がけてこられた建築家で、東京藝術大学でも教授を務められていました。これまでの作品はどちらかといえば物質的で空間の質を丁寧に探るアプローチが多かった印象ですが、その青木さんが今回「AI」をテーマに掲げられたことは、大きな驚きとともに新しい時代の兆しを感じさせます。
日本では、AIを意識している企業はかなり多いと思います。AIはデジタルの中のシステムなので、それを認知するためのディスプレイにどうAIの知能を表示して人間とインタラクトさせるか、というところにアーキテクチャーがあるのではないかと考えています。どうAIを認知して、どうAIと関わるかというところを設計できると、意外と面白いのではないか。
もちろん、それを実現できる技術の難易度は非常に高いと思いますが、そのような構想は人との関係性を作ることなので、アーキテクチャとして考えた先が気になりますね。

建築が創る、豊かな人生のための「文化」

津川恵理
―最後になりますが、今まで手掛けてこられたことや、今後手掛けられる建築という領域・空間設計を通じて、社会に届けたいメッセージ、あるいは、どういう社会や文化をご自身の手で作っていきたいと思われているか、ぜひ最後に教えてください。

津川 そうですね。私は建築で社会の文化価値を上げていきたいです。 人間が生きていくためには、食べたり、寝たり、トイレに行ったりといった機能的な時間がありますよね。そのためには買い物したり食事したりと、それは生きる上で社会に必ず必要なことです。
しかし、文化というのは、例えば音楽を聴くとか、映画を見るとか、舞台を見に行くとか、一見、生きていく上でなくても死なないようなものですが、あると人が生きることがより豊かになるものだと思っています。人間が生きることを豊かに思えたり、ポジティブに思える理由って、文化があるからだなと思うんです。
例えば、何かを体験して感動したり、他人と会って一緒に悲しんだり、喜んだり。そういった文化を「どうやって生み出していくか」ということにすごく興味があります。人が本当に生きる上で豊かに生きるために、例えば他人にいかに配慮できるか、他人への創造性をどう働かせられるか、人とどういうふうに喜びを作っていくか、そういった「文化」というものを建築で作っていきたいです。


取材

建材ナビインタビュアー・ライター 藤井 由香里
身体表現から建築へと独自の道を歩んできた津川さん。既存の枠にとらわれず、空間を通して社会の在り方に問いを投げかける姿勢が印象的でした。 建築の枠を超えて広がるアーキテクチャーの可能性に、今後も注目していきたいと思います。

津川恵理



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建築家/ ALTEMY 代表。京都工芸繊維大学、早稲田大学大学院を修了後、文化庁新進芸術家海外研修員としてニューヨークのDiller Scofidio+Renfro に勤務。2019 年、神戸市主催「さんきたアモーレ広場デザインコンペ」で最優秀賞受賞を受賞し、帰国後にALTEMY を設立。

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