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コラム
掲載:2025年08月04日更新:2025年11月05日

会場を支える「意匠・性能・サステナビリティ」の共演。大阪・関西万博で輝く、選ばれた建材たち


2025年に開催される「大阪・関西万博」。その理念には、「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマのもと、サステナビリティ、共創、先進技術が掲げられています。
建築やインテリア、設備といった場づくりのすべてにおいて、そのコンセプトが体現されているのが、今回紹介する“採用建材”の数々です。

万博の華である各国パビリオンや共用施設、屋外設備に至るまで、多彩な製品が使われており、それぞれが機能性・美しさ・環境配慮を高次元で融合させています。
本記事では、実際に採用された製品を深掘りしながら、その魅力と採用理由に迫ります。

建築文化とサステナビリティの融合。パビリオンを彩る建材たち

世界各国がそれぞれの文化や価値観を表現するパビリオン。その建築において重要な役割を果たしているのが、空間の印象を決定づける「建材」の選定です。大阪・関西万博では、環境配慮と意匠性を兼ね備えた建材が数多く採用され、各国のストーリーやコンセプトを力強く支えています。本章では、実際に採用された建材の特徴や採用理由に触れながら、パビリオン建築における建材の可能性を探ります。

カナダパビリオン

廃棄ゼロの工場から生まれる、100%リサイクル可能な木質タイル
ティンバータイルス サブウェイタイプ TLSR4MC(みはしプロ)

ティンバータイルスは、『再生(Regeneration)』をテーマにしたカナダパビリオンにぴったりな高い耐久性とサステナビリティを兼ね備えた建材です。

ティンバータイルス社のウッドタイルは、製造段階から徹底的に環境配慮がなされています。廃棄物を一切出さないゼロエミッション工場で生産されており、使用後は100%リサイクルが可能です。
これは、単なる素材選びではなく、持続可能なライフスタイルそのものを支える選択でもあります。
もちろん、日本の住宅事情にも適した設計となっており、戸建てから集合住宅、商業空間まで幅広い用途で活躍しています。

このウッドタイルの魅力は、見た目の美しさにもあります。
ティンバータイルス社は、カナダ原産のツガ材を使用し、その自然な木目と温もりある色調を最大限に活かすために、5年以上の歳月をかけて独自の製造技術を確立しました。
天然木ならではの個性を活かしつつ、均一で美しい仕上がりを実現しています。

施工性の高さも、この製品の大きな魅力のひとつです。特殊な工具や複雑な手順は必要ありません。「下から上へ、左から右へ」と順に組み合わせていくだけのシンプルな方法で設置が完了します。
さらに、独自の「ハーフ・ラップ・ジョイント構造」により、万が一タイルの一部が破損しても、その部分だけを簡単に交換可能。大規模な張り替えの必要がなく、コストと時間の削減にもつながります。
耐久性にも優れており、日常的なメンテナンスは不要。お手入れは濡れた布で軽く拭くだけで、長期間美しい状態を保てます。

スペインパビリオン

ステンレスの質感と高い安全性を両立したノンスリップ材
すべらんなーⅡ TM72 SUS304 HLベース(高砂鐵工株式会社)

「すべらんなーⅡ TM72」は、その名のとおり“すべらない”性能を追求したステップ用ノンスリップ材ですが、単なる安全対策にとどまらず、意匠性の高さも大きな特長です。
特に、SUS304材にヘアライン(HL)仕上げを施したHLベースは、シンプルながらも高級感を感じさせる表面処理で、現代建築のデザインと美しく調和します。

素材には高耐食性を持つSUS304ステンレスを採用し、環境や経年変化にも強い耐久性を実現。さらに、建物の意匠を損なうことなく、長期にわたって美しさと安全性を保ち続けることができます。

特注対応もスムーズで、納まりも美しく、リノベーション現場にも新築現場にも柔軟にフィットします。 単なる滑り止め材ではなく、建築の価値を高めるエレメントとして、その存在感を放っています。

国内パビリオン 日本館

木の魅力を引き出す、三層クロス構造のパネル
Jパネル 36mm厚CLT(株式会社鳥取CLT)

「Jパネル」は、ラミナ(挽き板)と呼ばれる無垢材を、木の繊維方向が互いに直交するように3層に組み合わせた、いわば“クロスラミナ”構造。 これにより、木材本来の質感や温もりはそのままに、従来の無垢材では実現が難しかった寸法安定性や高い構造強度を実現しています。
AQ認証をはじめ、グッドデザイン賞(2001年)中小企業庁長官特別賞やウッドデザイン賞(2016年)など、複数の賞を受賞していることからも、その性能とデザイン性が広く認められていることがうかがえます。

「Jパネル」の魅力は、ただ強いだけではありません。構造材と仕上げ材の両方の役割を兼ねられるため、壁・床・屋根の水平構面はもちろん、家具や什器などの造作材としても優れた性能を発揮します。 特に木造軸組工法との相性が良く、耐力壁や床梁への取付けにも対応。
所定のビス・釘で固定すれば、最大で床倍率4.5倍の水平剛性を確保できるなど、構造設計の自由度を広げる素材として高く評価されています。
また、杉や桧といった国産材の選択肢が用意されており、桧特有の光沢や芳香を活かした仕上げも可能。意匠性と機能性を兼ね備えた素材として、建築設計者やインテリアデザイナーからも注目を集めています。

パネルは厚さ36mmながら、接着剤の使用を最小限に抑えた設計により、構造用合板(28mm厚)よりも軽量。非ホルムアルデヒド系の水性接着剤を採用することで、安全性・健康性にも配慮されています。 人の手で容易に持ち運べる軽さと、プレカット現場での扱いやすさにより、施工効率の向上にも貢献。現場での柔軟な対応が求められる木造建築の現場では、こうした利便性が高く評価されています。

インドパビリオン

軽量で低コストなフレームをクロスさせて構成する天井ルーバー
エスパシオン(難波金属株式会社)

「エスパシオン」は、軽量性と高剛性を両立したアルミ製のパネルシステム。 厚みの異なるアルミ板を高精度で組み合わせ、用途に応じた剛性・強度を確保しながらも、施工時の取り扱い負担を軽減。
その軽さから、施工性にも優れ、構造物への荷重負担を抑えることが可能。また、パネル形状の自由度が高く、建物の個性に合わせたデザイン対応にも柔軟に応じられます。

表面処理やパネルの加工に独自技術を用いることで、マット、鏡面、木目調、さらには立体的な装飾パターンまで、多彩な仕上げが可能。
外壁、天井、ルーバー、什器など、さまざまな建築シーンにおいて、“金属素材でありながら温かみのある表現”を実現しています。 加えて、色の再現性・質感のコントロール性が高く、経年劣化にも強いため、長期間美しい外観を保てる点も魅力のひとつです。

「エスパシオン」が建築の現場で選ばれ続けている理由の一つに、製品精度の高さがあります。
難波金属は、金属加工の専門メーカーとして長年培ってきたノウハウを活かし、ミリ単位の高精度な加工を実現。 目地の美しさ、パネル接合部の整合性、繊細な納まりなど、デザイン意図をそのまま形にできるものづくりが評価されています。
その信頼性は、高級商業施設や公共建築、文化施設、駅舎、ホテルなど、数々の著名なプロジェクトでの採用実績にも表れています。

フランスパビリオン

大空間の建物を機能的に演出するグラスウール天井板
イアルマグフォーン(マグ・イゾベール株式会社)

「イアルマグフォーン」は、グラスウールを芯材とした軽量・高性能な吸音天井パネルです。
建築空間で音が反響しやすい大きな室内において、残響を抑え、快適な音環境をつくることが可能。
以下の2タイプで構成されており、用途やデザイン意図に合わせて選択できます。

F-GP(化粧ガラス不織布仕上げ)
主に学校・事務所・スタジオ・店舗・体育館など、不燃性・吸音性を求める施設に適しています。意匠性の高い仕上がりと、コストパフォーマンスの良さも魅力です。

F-PV(不透明塩化ビニール仕上げ)
オフィス・工場・商業施設・大型体育館などに最適。より高い経済性と施工性を持ち、柔軟な設計対応が求められる大空間に向いています。

両タイプともに、大判サイズにも対応しており、視覚的にすっきりとした天井面を構成することが可能です。

また、「イアルマグフォーン」は、非常に軽くて柔軟性のある素材を採用しており、万が一落下した場合でも人体への衝撃を最小限に抑える構造になっています。特に、子どもや高齢者が集まる施設や、不特定多数の利用がある公共施設では、このような“落ちても危険が少ない”設計が大きな安心につながります。

「イアルマグフォーン」は、音の響きを整えることで空間の居心地を高め、安全性を担保することで安心を提供する、建築空間を“音と安心の面”から支える製品です。

ハンガリーパビリオン

約70種類以上の多彩なパネルデザインをもつ内外装アルミルーバー
スカイフィット・アイフィット(理研軽金属工業株式会社)

「スカイフィット・アイフィット」シリーズは、約70種以上におよぶ多彩なデザイン展開を誇り、外装・内装を問わず幅広い建築用途に対応。スタイルと性能、そして環境配慮を融合させた、次世代型のルーバーシステムとして注目を集めています。

ボルト固定式 スタンダードタイプ
建物外周に設けることで外からの視線を遮りながら、内側の開放感を損なわないのが、このスタンダードなルーバータイプ。ファサードを引き締め、建築全体の統一感やモダンな印象を与えます。

ボルト固定式 懸垂タイプ
“吊るす”というユニークな発想から生まれた懸垂タイプのルーバーは、軒下や開口部の外側に設置することで、強い日差しをやわらげつつ、室内の明るさを保つという工夫が施されています。 夏は直射日光を遮って冷房効率を高め、冬は低い日差しを室内に取り入れることで自然な温熱環境を実現。

上下固定式 パーティションタイプ
オープンな空間を完全に遮断せずに、用途ごとに柔らかく分ける。そんな意図を具現化するのがパーティションタイプのルーバーです。 上下で固定されたパネルの隙間から光と風がやさしく抜け、向こう側の気配を残しつつ、空間の目的を明確にゾーニングできます。

嵌合式 直付けタイプ
下地材を見せずに取り付け可能な設計で、すっきりとした納まりを実現。洗練された印象を与えながらも、奥行きとリズム感のある空間演出が可能。「スカイフィット・アイフィット」シリーズの中でも、内装デザインの自由度を最も高めるタイプです。

「スカイフィット・アイフィット」は、建物の印象を変え、光を操り、視線を誘導し、風を通す、建築と環境、建築と人をつなぐインターフェースとしての役割を果たしています。


マレーシアパビリオン

現代建築にもなじむ品格と精緻な仕上がりの竹材
銘竹(有限会社横山竹材店)

「銘竹」とは、特に美しさや品質が際立った竹材に与えられる呼称です。
横山竹材店が扱う銘竹は、京都をはじめとした伝統的な竹の産地で育てられた真竹・孟宗竹・黒竹・虎竹・淡竹など多様な種類を厳選。さらに、色艶・節の間隔・歪みの少なさ・太さの均一さといった美的・実用的観点から一本一本を見極めています。

銘竹は、和風建築の天井・壁・床材、下地組材、化粧柱、庭園資材などに幅広く使われています。
近年では、旅館や茶室、店舗、住宅などのインテリア空間においても、「銘竹ならではの風合い」を生かした造作が増えています。
とりわけ人気が高いのが、節の美しさを活かした“丸竹”の意匠材。
光があたったときの微妙な艶や、経年変化による味わいは、工業製品では得られない、唯一無二の素材感をもたらします。
量産に向かない素材だからこそ、一本一本の竹に向き合う誠実な姿勢が、空間に説得力を与えます。



万博の“裏方”を支える、高機能な建材群

世界中から注目を集める大阪・関西万博。その華やかなパビリオンや先進的な展示の舞台裏には、過酷な環境下でも性能を発揮し、安全性や快適性を支える数々の高機能建材が存在します。
来場者の目には直接触れにくい“裏方”の建材たちが、どのようにしてこの国際的イベントの円滑な運営を支えているのか。今回は、そんな縁の下の力持ちとも言える建材群にスポットを当て、その役割と技術の背景に迫ります。

共用施設トイレ

耐久性と意匠性を兼ね備えたメラミン不燃化粧板
メラミン不燃化粧板 セラール(アイカ工業株式会社)

セラールは、メラミン樹脂を用いた不燃化粧板で、国土交通省が定める不燃材料としての認定を取得しており、火気を扱う場所でも安心して使える建材です。その大きな特徴のひとつは、豊富なデザインバリエーション。木目調、石目調、抽象柄、ソリッドカラーなど、800点以上にのぼる柄と色がラインナップされており、空間のコンセプトに合わせた柔軟な設計が可能です。
また、表面は高硬度かつ耐薬品性に優れており、キズや汚れに強いのもポイント。医療機関や学校、飲食店、商業施設など、衛生管理が求められる場所にも安心して導入できます。

セラールは単に意匠性が高いだけでなく、施工のしやすさや日常メンテナンスの容易さにも優れています。 既存の壁面や下地材の上から貼ることも可能で、改修・リニューアル案件にも最適。
また、耐久性が高いため、長期使用による劣化を抑え、コストパフォーマンスにも優れています。



使う人に寄り添い、空間と調和する洗面混合栓
YORI SUTTO ヨリスット(SANEI株式会社)

「よりそう」+「すっとなじむ」という名の通り、《YORI SUTTO》は人の暮らしと空間の中に、静かに溶け込むような設計思想から生まれました。使いやすさと佇まいの美しさ、その両立を目指した水栓シリーズです。
プロダクトデザインには、建築家ユニット「トラフ建築設計事務所」が参加。住宅設計を熟知した視点から、“空間の一部としての水栓”がどのようにあるべきかを再構築しました。

その結果、誕生したのは、壁や洗面台と一体化するような細身のフォルム、極力ミニマルに設計されたハンドル、主張しすぎないけれど確かな存在感をもつデザイン。 素材やディテールへのこだわりが、まさに“建築に寄り添う水栓”という新しいスタンダードを打ち出しています。



会場全体を魅力的に包み込む「屋外建材」

大阪・関西万博の会場を歩いていると、目に飛び込んでくるのは各国の個性あふれるパビリオンだけではありません。道ゆく人々の足元、視線の先、そして空の下まで──そのすべてに、空間全体を心地よく、魅力的に演出する屋外建材の存在があります。
デザイン性、耐候性、そして機能性を兼ね備えたこれらの建材は、会場全体の世界観づくりに欠かせない重要な要素。今回は、そんな万博の「屋外」を形づくる建材たちに注目し、その役割と魅力をひも解きます。

ポップアップステージ西

ガラスの美しさと金属の堅牢性を融合したホーロー外装材
ホーロー外装材 エマウォール エクステリアタイプ(タカラスタンダード株式会社)

「エマウォール」は、金属の下地にガラス質の釉薬を高温で焼き付けた高品位ホーロー素材をベースにした外装材です。 この構造によって、表面は美しい光沢を持ちながらも、衝撃や熱、紫外線に対して非常に強く、長期間にわたりその意匠性と機能性を保ちます。

「エマウォール」が他の外装材と一線を画すポイントは、自由な形状・カラーバリエーションに対応できるオーダーメイド性です。 たとえば、柔らかく湾曲した壁面や、建物に動きを加えるような“折り”を入れたデザインも、エマウォールなら実現可能。 また、カーテンウォールの一部にホーローパネルを組み込む設計にも適しており、ガラスとの相性も良く、洗練された現代建築のファサードを形づくります。さらに、同色で統一された外壁であっても、エマウォール特有の曲面構成によって豊かな陰影と立体感が生まれ、シンプルながら印象的な表情を与えることができます。

独自の技術「アートホーロー」によって、パネル1枚ごとに複数色のグラデーションを焼き付けたり、木目や石目調といった自然素材風の表現を再現したりすることが可能です。 色あせしにくいのもホーローの特長であり、美しさが長続きする外観を維持したいプロジェクトにおいて、極めて有効な選択肢となります。

都市のランドマーク、店舗のファサード、公共施設のエントランスなど、建物の第一印象を決定づける場所にふさわしい存在感をもたらします。


光の広場

環境への配慮をカタチにした屋外用遊具
グリーンライン(株式会社ボーネルンド)

「グリーンライン」は、再生プラスチックやリサイクル素材を活用した遊具ラインアップで構成されています。 素材は、堅牢性や安全性を確保しながらも、CO₂排出量や資源消費を抑えることを目的に厳選。たとえば、ポストコンシューマー素材(使用済みプラスチック)や、製造過程で排出される端材などが再活用されており、循環型社会の実現を遊具づくりの現場から後押ししています。

もちろん、公共空間で使われる遊具として、高い安全性と耐久性を持つことは必須。グリーンラインは、厳格な安全基準に則った設計と、メンテナンス性の高い部材構成を両立しており、管理運営者にとっても導入しやすい製品群です。
また、万が一破損した際には、部分交換や修理対応が可能な構造となっており、製品寿命の延長=資源消費の抑制にもつながっています。

「グリーンライン」については、こちらの記事でも詳しく解説しております。


夢洲浮桟橋

開け閉めが軽くてスムーズな開閉式テント部材
OSマルキーゼ(岡田装飾金物株式会社)

OSマルキーゼの大きな特長は、独自形状の「XGレール」と専用の「マルキーゼバー」による軽快な開閉機構。 このレールは岡田装飾金物が特許を取得している独自設計で、走行の安定性と静音性を両立。ランナーの横ブレやレールとの摩擦を抑えることで、誰でも軽い力でスムーズに開閉できる構造を実現しています。

屋外での使用が前提となる「OSマルキーゼ」は、本体部材にアルミニウムおよびステンレスを採用。雨風や紫外線の影響を受けやすい環境下でも、長期にわたり安定した性能を発揮します。
また、設置環境に応じた多彩な取り付けブラケットが用意されており、既存のパーゴラや建物躯体にも柔軟に対応可能。建築デザインに合わせた自由な設計が可能です。




迎賓の空間にふさわしい「織物壁紙」

世界各国から賓客を迎える大阪・関西万博の迎賓空間では、その格式と品格をさりげなく演出する建材の選定が欠かせません。
中でも注目されるのが、「織物壁紙」による空間演出。繊細な織りの表情と深みのある質感が、訪れる人々に落ち着きと上質さをもたらし、万博という国際舞台にふさわしい“おもてなしの場”を形づくります。今回は、迎賓空間を静かに、しかし確かに格上げする織物壁紙の魅力に迫ります。

迎賓館

天然素材の美しさを纏う織物壁紙
KYOTO IZUMI Aoi 葵(小嶋織物株式会社)

「Aoi」は、綿とレーヨンを先染めし、糊付け加工した糸を使用した平織りの壁紙です。経糸・緯糸ともに同じ素材・同じ色で織り上げることで、均一で端正な表情を保ちながらも、どこか手仕事のぬくもりを感じさせる仕上がりとなっています。
表面はシルクのようにほんのりとした光沢感があり、光を受ける角度によって表情が変化。無地でありながらも、“静かな動き”のある素材感が特徴です。

「Aoi」の最大の魅力は、素材感が引き立つナチュラルなカラーバリエーションです。主張しすぎない色味は住宅やホテル、オフィス、店舗など、用途を問わず幅広い空間に自然に溶け込みます。ベースはプレーンですが、手で触れたくなるような「ふわっ」としたやわらかな質感が、空間全体に落ち着きと品格を与えてくれます。

加えて、サイズ・色・デザインのカスタムオーダーにも対応。設計者やデザイナーの細かな要望にも柔軟に応えてくれる点も、プロの現場で支持されている理由の一つです。



飲食とくつろぎの場を彩る素材

大阪・関西万博の会場を訪れる人々にとって、飲食スペースや休憩エリアは、ひとときの安らぎと交流の場。そんな“くつろぎの時間”を心地よく、そして印象深く演出しているのが、選び抜かれた建築素材の数々です。
ここでは、万博の飲食・休憩エリアに用いられた建築素材に迫ります。

ORA外食パビリオン『宴~UTAGE~』

サイザル麻を使った天然素材のカーペット
サイザルカーペット(アイオーシー株式会社)

サイザル麻は、アフリカや中南米などの温暖な地域で栽培される多年草から採れる天然繊維。繊維の強度が高く、耐久性にも優れているため、昔からロープやマット、ラグなどに活用されてきました。 この素材を100%使用した「サイザルカーペット」は、表面に程よいコシと弾力性があり、裸足で歩いてもべたつかず、さわやかな踏み心地が魅力です。
しかも、天然素材特有の調湿作用があるため、湿度が高くなる夏場でもさらりとした質感をキープしてくれます。

用途や設置場所に応じて、ロールタイプとタイルタイプの2種から選択可能です。

ロールタイプ
2m幅×5m長のロールで提供されるタイプ。カットや敷き込みの自由度が高く、広い空間でもつなぎ目が目立ちにくいのが特徴です。裏面には天然ゴムを使用しており、柔らかさと安定感のある仕上がりに。カラーバリエーションは以下の4色で展開され、自然を感じさせるトーンが揃っています。

タイルタイプ
より施工性とメンテナンス性を重視する空間には、500mm角のタイル型カーペットが最適。裏面にはPVC(塩ビ)を使用し、耐久性と安定感を両立しています。置敷きや貼り替えも容易で、部分的な張り替えも可能。住宅からオフィス、店舗まで、さまざまな空間にフレキシブルに対応します。

サイザルカーペットは、見た目や肌触りの良さだけでなく、安全性に関しても高い基準をクリアしています。




まとめ

2025年の大阪・関西万博は、単なる展示の場ではなく、「いのち輝く未来社会のデザイン」という理念のもと、建築や空間のすみずみに至るまで、持続可能性と美しさ、機能性が融合する未来のモデルケースを提示する場でもあります。

本コラムでご紹介した建材の数々は、それぞれが「素材」としての枠を超え、空間体験やメッセージの一部として機能しています。再生可能な素材によるパビリオン、来場者の安全と快適性を両立させる裏方の建材、迎賓空間に品格を与える壁紙、そして日常的なくつろぎの場を豊かにする床材や設備まで──その一つひとつが、万博の理念と丁寧に呼応しながら選ばれ、設計されています。

見た目の美しさだけでなく、サステナビリティ、施工性、耐久性といった「建築の未来を支える実力」が求められた今回の建材選定は、今後の建築・空間づくりにおいて新たな指標を示すものともいえるでしょう。

万博が掲げる「共創」や「循環型社会」というテーマは、建築素材の選択においても強く意識されており、それを実現するための技術と思想の結晶が、今回紹介した建材たちです。この経験が、今後の日本全国、さらには世界中の建築プロジェクトにおいても生かされることを期待してやみません。




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