ARCHITECT
建築家インタビュー
- 掲載:2025年09月01日 更新:2025年09月18日
時間を重ねて住み継ぐ家─RCと木が奏でる重奏の住まい
Corred Design Office主宰/OKAAA共同主宰 北村拓也

この住宅は、兵庫・甲子園の住宅街に建つ、設計者の両親のための住まいです。生まれ育ったまちへ戻るという選択を起点に、私たちは「異なる時間軸が重なりあう建築の在り方」を主題に据えました。家族の時間、地域の時間、素材が経る時間が互いに響き合い、暮らしをひらくことを目指しています。
変化に応じながらも、家族の記憶を刻み続ける器でありたいという想いから、RCと木が織りなす“重奏的な居場所”をかたちづくっています。RCフレームは都市スケールを受け止める「舞台」とし、その内側に木架構を挿入して、家族のふるまいや時間の蓄積がゆるやかに重なる関係をつくりました。
構造は、RCグリッドに木造の屋根や外壁をまとわせた階層的な構成です。スケルトン・インフィルの思想に基づき、将来の部分改修や更新にも柔軟に応えるフレームワークを形成しています。RCと木の取り合いからはやわらかな光が差し込み、構造そのものが暮らしを包み込む空間となりました。
土木的なスケール感を内包しつつ、家具や生活の気配が馴染むことで、静けさと雑多さが溶け合い、外から内へ、都市から親密な居場所へと、“重奏”のようにひろがっていきます。
変化に応じながらも、家族の記憶を刻み続ける器でありたいという想いから、RCと木が織りなす“重奏的な居場所”をかたちづくっています。RCフレームは都市スケールを受け止める「舞台」とし、その内側に木架構を挿入して、家族のふるまいや時間の蓄積がゆるやかに重なる関係をつくりました。
構造は、RCグリッドに木造の屋根や外壁をまとわせた階層的な構成です。スケルトン・インフィルの思想に基づき、将来の部分改修や更新にも柔軟に応えるフレームワークを形成しています。RCと木の取り合いからはやわらかな光が差し込み、構造そのものが暮らしを包み込む空間となりました。
土木的なスケール感を内包しつつ、家具や生活の気配が馴染むことで、静けさと雑多さが溶け合い、外から内へ、都市から親密な居場所へと、“重奏”のようにひろがっていきます。
設計士プロフィール
Corred Design Office
北村拓也 | きたむらたくや
主宰/建築家/一級建築士
〒541-0055
大阪府大阪市中央区船場中央1丁目3番2号101
大阪デザインセンター内
大阪府大阪市中央区船場中央1丁目3番2号101
大阪デザインセンター内
TEL:080-5303-2051
経歴
1990年 滋賀県出身
2013年 京都大学 卒業
2015年 京都大学大学院 岸和郎研究室 修了
2015-18年 株式会社竹中工務店 設計部
2018年- Corred Design Office 設立
受賞暦
2024年 STREET FURNITURE EXHIBITION 2024 投票賞第1位
2024年 世田谷区主催 三茶ストリートファニチャーデザインコンペ 商店街特別賞
2021年 東京都建築士事務所協会主催 建築ふれあいフェア アイデアコンクール 最優秀賞
2020年 くまもとアートポリス 公開設計競技2020 佳作
2017年 第1回 JIA東北支部 空き家・空き地コンペ 入選
2015年 「不良品から富良品へⅢ」佐山賞
2015年 京都市×スターバックス共催「YES, WE DO KYOTO!」京都市賞
2014年 日本空間デザイン協会 DSA「空間デザイン賞2014」 入賞
2014年 日本商環境デザイン協会 JCDデザインアワード2014 入選(BEST100)
2013年 建築・都市デザイン国際ワークショップ「京都大学バンコクスタジオ」最優秀賞
2013年 第5回ハーフェレデザインコンペティション 2013 入選(妹尾賞)
1990年 滋賀県出身
2013年 京都大学 卒業
2015年 京都大学大学院 岸和郎研究室 修了
2015-18年 株式会社竹中工務店 設計部
2018年- Corred Design Office 設立
受賞暦
2024年 STREET FURNITURE EXHIBITION 2024 投票賞第1位
2024年 世田谷区主催 三茶ストリートファニチャーデザインコンペ 商店街特別賞
2021年 東京都建築士事務所協会主催 建築ふれあいフェア アイデアコンクール 最優秀賞
2020年 くまもとアートポリス 公開設計競技2020 佳作
2017年 第1回 JIA東北支部 空き家・空き地コンペ 入選
2015年 「不良品から富良品へⅢ」佐山賞
2015年 京都市×スターバックス共催「YES, WE DO KYOTO!」京都市賞
2014年 日本空間デザイン協会 DSA「空間デザイン賞2014」 入賞
2014年 日本商環境デザイン協会 JCDデザインアワード2014 入選(BEST100)
2013年 建築・都市デザイン国際ワークショップ「京都大学バンコクスタジオ」最優秀賞
2013年 第5回ハーフェレデザインコンペティション 2013 入選(妹尾賞)
過去をうまく引き継ぎながら新たな場所をつくる
この住宅は、「時間」をテーマに設計しました。父母の住まいであるという個人的な前提が、このテーマを自然に導いてくれたように思います。
家が一過性のスクラップアンドビルドで終わるのではなく、引き継ぎながら長く使われていくこと──それを見据えた構成を目指しました。
私の事務所ではリノベーションの仕事も多く、過去をうまく引き継ぎながら新たな場所をつくり、また次の世代へとバトンを渡していく──そうした思考が、設計の根底にあるように感じています。
RCが都市的なスケールでの強度を担い、木が暮らしのスケールに寄り添うことで、構造と行為、素材と記憶が響き合う“重奏的な居場所”をかたちづくっています。
また、住まい手が年齢を重ねても安心して暮らし続けられるよう、動線の単純さやフロアの段差のなさ、どこにいても声が届く空間のつながりなど、身体的スケールにも細やかに配慮しました。
家が一過性のスクラップアンドビルドで終わるのではなく、引き継ぎながら長く使われていくこと──それを見据えた構成を目指しました。
私の事務所ではリノベーションの仕事も多く、過去をうまく引き継ぎながら新たな場所をつくり、また次の世代へとバトンを渡していく──そうした思考が、設計の根底にあるように感じています。
RCが都市的なスケールでの強度を担い、木が暮らしのスケールに寄り添うことで、構造と行為、素材と記憶が響き合う“重奏的な居場所”をかたちづくっています。
また、住まい手が年齢を重ねても安心して暮らし続けられるよう、動線の単純さやフロアの段差のなさ、どこにいても声が届く空間のつながりなど、身体的スケールにも細やかに配慮しました。
構造と空間が一体となるような構成
RCと木造のハイブリッド構成であるため、それぞれの構造体をどのように取り扱い、どのように接合していくかが大きな課題でした。構造設計はIN-STRUCTさんに依頼し、「住み継ぎ」「素材の重なり」といったキーワードを共有しながら、構造と空間が一体となるような構成を丁寧に相談していきました。
最終的には、RCの躯体を正方形断面のグリッドによる準ラーメンフレームとし、壁のない開かれた構成としました。屋根が木造であることにより全体の荷重を軽減できたため、柱梁の鉄筋量を最小限に抑えることができ、土木的なスケール感と端正な意匠性をあわせ持つ、均質なフレームが成立しています。
木造部分については、RCフレームに対して最低限の剛性を持たせるとともに、自重を確実に構造体へ伝達できるよう、コンクリート打設前に仕込んだボルトで緊結しています。
最終的には、RCの躯体を正方形断面のグリッドによる準ラーメンフレームとし、壁のない開かれた構成としました。屋根が木造であることにより全体の荷重を軽減できたため、柱梁の鉄筋量を最小限に抑えることができ、土木的なスケール感と端正な意匠性をあわせ持つ、均質なフレームが成立しています。
木造部分については、RCフレームに対して最低限の剛性を持たせるとともに、自重を確実に構造体へ伝達できるよう、コンクリート打設前に仕込んだボルトで緊結しています。
「時間とともに味わいを増す素材」を重視
構造体としてRCと木のハイブリッドを採用するとともに、仕上げ材についても「時間とともに味わいを増す素材」であることを重視して選定しました。
外壁には焼杉を使用しています。現在は都市的な住宅街として知られる甲子園エリアですが、もとは鳴尾村と呼ばれる集落であり、今も当時の木造家屋が点在しています。焼杉は、そうした歴史的文脈に根ざした素材であると同時に、現代的な表情も併せ持っている点に惹かれました。経年によって深まる風合いを活かしながら、まちの時間に静かに溶け込むことを意図しています。
内部では、コンクリート現しの構造体に木造作を織り込むことで、素材同士の質感の対比と奥行きを立ち上げています。天井や壁にはラワン材を用い、細幅で貼る部分と大きな面で見せる部分を場所ごとに使い分けることで、空間の性格やスケール感に応じたリズムを与えています。
外壁には焼杉を使用しています。現在は都市的な住宅街として知られる甲子園エリアですが、もとは鳴尾村と呼ばれる集落であり、今も当時の木造家屋が点在しています。焼杉は、そうした歴史的文脈に根ざした素材であると同時に、現代的な表情も併せ持っている点に惹かれました。経年によって深まる風合いを活かしながら、まちの時間に静かに溶け込むことを意図しています。
内部では、コンクリート現しの構造体に木造作を織り込むことで、素材同士の質感の対比と奥行きを立ち上げています。天井や壁にはラワン材を用い、細幅で貼る部分と大きな面で見せる部分を場所ごとに使い分けることで、空間の性格やスケール感に応じたリズムを与えています。
作品で使用した建材
【外壁】
| 使用建材 | :壁材 |
|---|---|
| 建材名 | :焼杉(モダンブラック) |
| 建材メーカー | :共栄木材 |
| 採用理由 和の風合いとモダンな印象が共存している点に魅力を感じて採用しました。「モダンブラック」は焼杉特有の煤が手や服に付着しない加工が施されており、日常的な使いやすさと耐候性の両面で安心感があります。 |
|
【内部床】
| 使用建材 | :オークフローリング |
|---|---|
| 建材名 | :オークプライウッド150 |
| 建材メーカー | :株式会社アナログ |
| 採用理由 耐久性の高いオーク材を選びました。表面が傷つきにくく、日常使いにも安心感があります。アナログ社のウレタン塗装はマットな質感で落ち着きがあり、万が一コーヒーなどをこぼしても拭き取りやすいため、実用性も兼ね備えています。木目の表情が美しく引き立つ点も、採用の決め手となりました。 |
|
【アルミサッシ】
| 使用建材 | :アルミサッシ |
|---|---|
| 建材名 | :サーモスL |
| 建材メーカー | :リクシル |
| 採用理由 アルミと樹脂のハイブリッド構造により断熱性能が高く、フレームが細いため意匠性にも優れています。内部色のシルバーはマットなグレーで、コンクリートや木材との相性も良く、空間に馴染む質感を持っています。 |
|
【鎖樋】
| 使用建材 | :鎖樋 |
|---|---|
| 建材名 | :波紋 |
| 建材メーカー | :SEO RAIN CHAIN |
| 採用理由 リングを組み合わせたミニマルな形状で、普遍的なデザインが特徴です。主張しすぎず、さまざまな素材や意匠とも調和しやすいため採用しました。 |
|
【キッチン】
| 使用建材 | :キッチン |
|---|---|
| 建材名 | :スイージー |
| 建材メーカー | :ウッドワン |
| 採用理由 無垢の木材を使用した木質系のシステムキッチンです。扉などの仕上げに木の質感がしっかりと感じられ、既製品でありながら造作家具のように空間に馴染みます。キッチンまわりの造作収納とも相性が良く、素材と機能性の両立ができる点を評価して採用しました。 |
|
【床タイル】
| 使用建材 | :タイル |
|---|---|
| 建材名 | :土間タイル、ダークグレー |
| 建材メーカー | :TOOL BOX |
| 採用理由 シンプルながらわずかに表情のあるタイルで、コンクリートとの相性も良く、空間全体に落ち着きをもたらします。外床用のノンスリップ仕様と内床用が同色で揃えられる点も魅力で、内外のつながりを自然に演出できるため採用しました。 |
|
SSOJ(日本空間デザイナー支援機構)
JCD(日本商環境デザイン協会) インタビュー&レポート
RELATED ARTICLE
設計士プロフィール
Corred Design Office
北村拓也(きたむらたくや)
主宰
建築家
一級建築士
建築家
一級建築士
〒541-0055
大阪府大阪市中央区船場中央1丁目3番2号101大阪デザインセンター内
大阪府大阪市中央区船場中央1丁目3番2号101大阪デザインセンター内
【経歴】
- 1990年
-
滋賀県出身
- 2013年
-
京都大学 卒業
- 2015年
-
京都大学大学院 岸和郎研究室 修了
- 2015-2018年
-
株式会社竹中工務店 設計部
- 2018年
-
Corred Design Office 設立
【受賞歴】
- 2013年
-
建築・都市デザイン国際ワークショップ「京都大学バンコクスタジオ」最優秀賞
- 2013年
-
第5回ハーフェレデザインコンペティション 2013 入選(妹尾賞)
- 2013年
-
JIA近畿支部大会大阪「ツナギ」実現へ向かうコンペティションL けやき賞
- 2014年
-
日本空間デザイン協会 DSA 「空間デザイン賞2014」 入賞
- 2014年
-
日本商環境デザイン協会 JCDデザインアワード2014 入選(BEST100)
- 2015年
-
「不良品から富良品へⅢ」佐山賞
- 2015年
-
京都市×スターバックス共催 「YES, WE DO KYOTO!」京都市賞
- 2017年
-
第1回 JIA東北支部 空き家・空き地コンペ 入選
- 2020年
-
くまもとアートポリス 公開設計競技2020 佳作
- 2021年
-
東京都建築士事務所協会主催 建築ふれあいフェア アイデアコンクール 最優秀賞
- 2024年
-
STREET FURNITURE EXHIBITION 2024 投票賞第1位
- 2024年
-
世田谷区主催 三茶ストリートファニチャーデザインコンペ 商店街特別賞
ARCHITECT GROUP TAGS
アクセスランキング(ARCHITECT)
SumaiRing最新記事
最近見た記事
ARCHITECT
建築家インタビュー
2007年秋にスタートした、取材させて頂いている建築家へのインタビュー記事です。住宅、集合住宅、商業施設、公共施設など建築家の体験談をお楽しみください。
