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建築家インタビュー
  • 掲載:2025年06月02日 更新:2025年07月04日

人と空間、双方向のデザイン
株式会社TSUMUJI 佐野温史

株式会社TSUMUJI
株式会社TSUMUJI 佐野温史
株式会社TSUMUJI
佐野温史(さのあつし)
インテリアデザイナー
一級建築士

〒152-0035
東京都目黒区自由が丘2-9-15 宮崎ビル3F-B
TEL:03-3724-2620
【経歴】

1983年
埼玉県生まれ
2006年
工学院大学 建築都市デザイン学科 卒
2006-2019年
商空間制作会社 企画設計部
2019年
株式会社TSUMUJI 設立

商空間のデザインは「社会とのコミュニケーション」

ミクロかマクロか——視点によって、空間の見え方は大きく変わります。そもそも空間デザイン、特に商空間におけるデザインは、「社会とのコミュニケーション」だと私たちは捉えています。マクロな視点では、相手となるのは周辺環境や社会全体、そして新たな営みを始めようとするブランドの当事者たちです。

空間の目的や、社会との関係性に対して最適解を導くこと。そこにデザインの本質があると考えているからこそ、最も避けたいのは、アウトプットを重ねるあまり、アプローチが固定化してしまうことです。建築空間の事例をインプットするのはもちろん、一見無関係に見える分野でも、「おもしろそう!やってみたい!」と感じたら、まずは飛び込んでみるようにしています。

この数年、日本ワインへの興味が高まり、今年から仲間とともにヴィンヤード(ぶどう畑)を始めました。農業はまったくの異分野に思えましたが、実際に関わってみると、空間づくりと通じる部分に多く気づかされます。

ワインには、土地や風土が味に表れるとされる「テロワール(terroir)」という考え方があります。私たちの空間デザインも、場所に宿る空気感や、人の営みによって滲み出る個性に向き合い、それを丁寧にかたちにしていくプロセスを大切にしています。この姿勢が、まさにテロワールの概念と重なっていると気づいたとき、農業であれデザインであれ、自分たちの根幹は一貫していて、普遍的なものなのだと深く腑に落ちました。

設計のフェーズに入ると、視点は一気にミクロへと切り替わります。

空間は、人の存在によって初めて機能します。つまり、そこには人の記憶や時代背景といった、無意識のレイヤーが確実に作用しているのです。だからこそ、設計とは建築にとどまらず、さまざまな事例や実体験から要素を抽出し、文脈に応じて丁寧に再構成していく「編集行為」だと捉えています。たとえば、こだわりの商品や料理、それを提供する人の所作や言葉のニュアンス。 人と空間が響き合う関係性を、ひとつひとつ丁寧にかたちにしていくことが、私たちに求められていることだと感じています。

こうした感覚は、日々の暮らしの中で重ねていく無数の実体験を通して、少しずつ磨かれていくのだと思います。

KAGURA Jiyugaoka

Social Good Roasters

先進的な技術が加速するほどにアナログの価値も高まる

注目している技術の筆頭は2つ。いずれも技術によってコスト(資材費、人件費、工期)を削減するアプローチから、全く新しいものづくりの土壌を築き始めているところが素晴らしいです。

1つは3Dプリントによる建築。型枠を不要とし、工程の多くを自動化、短縮することで、資材ロスを抑え、環境負荷にも配慮した次世代建築の象徴でしょう。
2つ目はCNCルーターによる木材のプレカット技術。VUILDさんの取り組みに代表されるように、誰もが建築に参加できる仕組みづくりが進み、地域分散型のものづくりや建築の民主化を後押ししていることが興味深いです。

そして、先進的な技術が加速するほどに、アナログで丁寧なものづくりの価値もまた高まっていくはずです。技術を使う人間の個性が問われる時代の到来をますます面白く感じています。


KINOKUNIYA entrée

CAFE K

創造性と効率性を切り分け、異なる視点からのアプローチが重要

建材市場は、サステナブルであることはもちろんのこと、生産の背景にある文脈や物語性をより重視する時代に入っていると感じます。
突き詰めていくと、オリジナルで建材を開発したいという欲求に行き着くのが常ではありますが、メーカー企業が主体的にそれを描くことによって、我々アトリエにはないスケール感とともに、視覚表現にとどまらない新たなデザイン性の創出(価値化)が始まるのではないかと思います。

一方で、営繕工事など経済性を優先する環境では、「施工が簡単で早い」といった要素も引き続き重視されるでしょう。だからこそ、創造性を重視する領域と、効率性を求める領域を明確に切り分け、それぞれ異なる視点からアプローチしていくことが重要だと考えています。同時にオリジナルへの挑戦についても、ご協力いただける企業が増えることを願っています。

PARK COFFEE

Kobayashi Kensetsu

ライフスタイルに合わせた多様な選択肢が求められる

建築コストの高騰が叫ばれて久しく、実際、平均的な所得層が都心部で住宅を購入するのが難しい時代に突入しています。為替やニーズの変動で状況は変わる可能性もありますが、今後、コストだけが大きく下がる未来はなかなか想像しづらいのが現実です。

「高い」「買えない」というのは事実ですが、それはあくまで、今の枠組みの中での話。だからこそ、その枠組み自体を見直していくことこそが、デザインの力だと思うのです。

たとえば、購入が難しい地域では、長く住むことを前提に、自分たちの手で内装を“オリジナルに”つくれる賃貸住宅がもっとあっていい。また、スタジオや民泊といった収益性を兼ねた住まいの形も広がるはずです。郊外では、あえて移住するというポジティブな選択をする人も増えており、古い建物を活かす取り組みも多様化しながら、さらに加速していくでしょう。

これからの建築には、「長く寄り添えること」、あるいは「編集可能な柔軟さ」など、ライフスタイルに合わせた多様な選択肢がもっと求められていく。そんな時代に入ってきているのだと感じています。


SEIYU head office

AJITO






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