- 掲載:2026年09月09日 更新:2026年09月09日
「ひらき、つなぎ、ともにつくる」――JCD初の女性理事長・折原氏が語る、商環境デザインの未来と組織の進化 日本商環境デザイン協会(JCD)理事長 折原美紀
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折原 美紀 |Miki Orihara
独学でデザインを学んだのち、ODOの前身となる株式会社アートフォルムを設立。2011年にオリハラミキデザインオフィスを開設し、2023年に株式会社ODOへ社名変更。ホテル、飲食店、オフィス、商業施設など、多様な商業空間デザインを手がけ、更には業態開発、ブランディング、プロデュースなどまで手掛けている。
近年は、日本の技術や文化を次世代へ継承するため、「手仕事」に携わる人々とともに「地産地消のデザイン」の実践に注力している傍ら、ツアーリングスクールという体験型塾を主催し、その土地が培ってきた文化や技術を知り未来につなげる活動をしている。2026年からは日本の商業デザイナー500人余りを有する団体、日本商環境デザイン協会(略してJCD)の初の女性理事長となる。
株式会社 ODO (オド)
一般社団法人 日本商環境デザイン協会(JCD)正会員事務所
東京都渋谷区渋谷1-2-5
MFPR渋谷ビル9階
03-6451-4568
設立65年を迎えるJCD。未来のデザイナーを育む多彩な活動
プロダクトオブザイヤー2025 審査会風景
―本日はよろしくお願いします。改めまして、JCDの組織概要や活動内容、規模感について教えていただけますでしょうか。
折原
よろしくお願いします。JCDは1961年に発足し、今年で65年が経ちます。前身は「商環境設計家協会」という名称でしたが、商業に関わる環境デザインを担う団体として活動してきました。今日現在で正会員が500名以上、全国賛助会員が130社以上、支部賛助会員が140社以上と、年々規模は拡大しています。
JCDには事業部と支部統括部があります。その内、事業部の活動は現在8つの委員会が担っています。その中でも日本最大級の空間系デザインアワード「日本空間デザイン賞」をDSAさんと共同開催する「デザイン賞委員会」が大きな柱です。また、多彩なゲストによるトークイベントを開催する「シンポジウム委員会」では、第一線で活躍し影響力のあるJCD正会員の方々に「JCDアンバサダー」にご就任いただき、JCDアンバサダーの方々によるJCD会員向けイベント等も予定しています。他にも「広報委員会」や海外と連携する「国際委員会」、賛助会員の皆様の優れた製品を選出する「プロダクトオブザイヤー」を開催する「賛助委員会」、「年鑑日本の空間デザイン」の発刊や展示会JAPAN SHOP出展を担当する「空間委員会」などがあります。これに加えて、北海道から沖縄まで全国10支部がそれぞれ様々な活動を行っていますが、支部統括部の下、支部を超えた連携もしております。
―多彩な活動ですね。小学生向けの出前授業なども行っているとお聞きしましたが、どのような取り組みなのでしょうか。
折原 子供達にデザインの楽しさを伝える「Soda委員会」が中心となり、全国各地の支部活動と連携して出前授業を行っています。
また、毎年夏休みには東京ミッドタウンで親子で参加するイベントを行っており、いつも定員オーバーになるほど大変好評です。賛助会員の方と協業し、我々プロが使う素材をメーカーさんから分けていただき、実際にそれを使って「お店屋さん」をテーマに模型を作ってもらったりしています。私たち自身も、プロの人たちと触れ合ったちょっとした体験が「デザイナーになりたい」というきっかけになったと思うので、子どもたちにとってもその一つのきっかけになればいいなと思っています。
Soda委員会では子供たちに空間デザインを紹介しデザインの楽しさを伝える活動をしています。「Soda」とはSeeds of Design Awardの略でデザインの種を蒔く意味を込めています。 主に小学校の正規授業枠内で”お店のモケイ”を創る出前授業を実施しているほか、自治体や各種団体とタイアップして様々な空間デザインワークショップを行っています。これまで札幌から沖縄まで全国の小学校に伺ってきました。デザインの種が日本中で芽吹くことを夢見て…。
児童・生徒が共通のテーマのもとに自由にデザイン制作に取り組む、そして完成した作品を専門家が 講評・評価し、子供たちに新たな発見や発想の機会を見出させる。JCDではこうした活動を充実させることで、社会貢献の一助となることをめざしています。
「情報と成長」——JCDがもたらす特別な体験と交流の場
日本空間デザイン賞2025 贈賞式会場ステージ
―デザイナーや設計士の方がJCDに参加するメリットについて教えていただけますか。
折原
正会員を募る際、入るメリットをよく聞かれますが、私は「情報と成長」だとお答えしています。個人ではなかなか得られない情報や、会えない人に会える、行けない場所に行けるといった特別な体験が「情報」となり、それを咀嚼して自分自身の「成長」の糧にしていくことができる団体だと思っています。
私自身、東北支部からスタートしましたが、若い頃のイベントで飯島直樹さんや近藤康夫さんといった方々をお呼びし、ファシリテーションを務めるという大役を任されたことがありました。また、スーパーポテトの杉本貴志さんの「鍋塾」に参加し、憧れの世界のデザイナーたちと直接話ができるシチュエーションがあったんです。それは自分にとって非常に大きな経験であり、学びになりました。自分がモヤモヤしていた部分を晴らしてくれるような言葉をふとした時にいただき、その都度噛み締めるものがありましたね。JCDは、そういうきっかけを作ってくれる場所だと思います。

「インテリアデザイン」というジャンルの最前線に立ち続け、活躍を続けるインテリアデザイナー飯島直樹氏に次世代のデザイナーや建材メーカーへのアドバイスなどを伺いました。
折原 そうですね。縦の繋がりで先輩の話を聞くのも良いですが、JCDにはアーティストや職人さんなど様々な人がいるので、少し違う業種の方々と交わることで、自分の中の振り幅が広がっていくのだと思います。自分から飛び込まないとなかなか難しい面もありますが、そういう垣根を取り払いたいと強く思っています。
新理事長としての決意。「ひらき、つなぎ、ともにつくる」組織へ
―今回、折原さんが理事長に就任された経緯と、これからやりたいことについてお伺いできますか。
折原
就任のお声がけをいただいた時は「本当に自分でいいのかな」と踏ん切れなかったのですが、窪田さんからもお話をいただき、「私にできることがあるのなら」とお受けしました。「窪田さんや飯島さんたちのようにはできないです」とお伝えしたら、「同じじゃなくていいよ。自分なりでいいから」と言っていただいたんです。

デザインアワード、シンポジウム、子供達にデザインを教えるSODA活動、各種出版を始め、全国の各支部では様々なデザインイベントや交流会など開催しているJCD日本商環境デザイン協会理事長を務める窪田さんにお話しを伺いました。
―そのために、具体的にどのような活動を予定されているのでしょうか。
折原 一つは「地方支部の活性化」です。地方には隠された魅力があり、正会員以外にも良い仕事をされている方々がたくさんいます。その文化を成熟させて前に進めるためには、支部の方々の力が重要です。そこで「デザイン・エクスペディション」という、もう一度注目してほしい対象をみんなで体験しに行く企画を考えています。様々な場所から集まって見立てを話し合うことで、地方の人にとっては地元の良さを再確認でき、外からの新しい解釈に触れて発信力が高まるはずです。
直近では、岡山や広島を中心とした中国支部が非常に活発で、専門学校生や大学生を対象にしたクオリティの高い学生コンペを開催しています。特に模型のクオリティやプレゼンテーション能力が圧倒的に高く、私たち審査員もすごく刺激を受けています。この活動が長年続いており、今年から関東支部でも同様のコンペを始めることになりました。将来的には全国各支部の最優秀賞作品同士が競い合うチャンピオン大会のようなものも開催したいです。
―JCDに入会するための条件などはあるのでしょうか。
折原 商環境に関するデザインや建築に携わっている方達はもちろんのこと、音響やアートなどのクリエイター、カメラマンやメディアアーティスト、左官職人など、作家として活躍されている方もいらっしゃいますし、様々な情報が集まるので幅広くなった方が良いと思っています。年齢層も上は80代から、下は実務に就いたばかりの20代の方までいます。楽しみながら学べる場として考えていただければ嬉しいですね。
多様な声が響き合う組織へ。女性の活躍と次世代へのメッセージ
―JCD初の女性理事長に就任されましたが、女性の活躍や組織に与える付加価値についてどのようにお考えですか。
折原
やはり女性の会員数が少ない現状があるので、女性会員を倍増させたいという目標を持っています。意見を出し合う場では、性別や年代に関係なく多様な声があった方が良いですからね。現場の職人さんやアトリエ系のスタッフは女性が多くなっていますが、将来的に独立するところまでいくかどうかという課題もあります。女性はライフスタイルの変化などで活動が難しくなる時期もありますが、そうした悩みを共有できる場所や時間を作ることが非常に大切です。
コロナ禍には「世界の今を知る」というオンラインイベントを開催し、世界中で活躍する女性クリエイターと繋いで、現地の環境と仕事のバランスなどを共有する女子会のようなミーティングを行いました。「みんな乗り越えてやってきているよ」ということを共有できる活動を、また復活させたいなと思っています。
折原 これまでのJCDは「敷居が高い」と思われがちだったので、まずはその懸念を払拭し、組織内に留まっていた情報を外に出す「逆張り」のアプローチに変えたいです。「とりあえず参加してみて」と緩やかに入ってもらうきっかけを作り、外との境界をなくしていくような形をとっていければと考えています。
また、今回から若い方にも多く理事に入っていただきました。組織が進化していくためには、新しい考え方を取り入れていかなくてはなりません。私たち自身も彼らから学ぶべきことがあり、皆で話し合いながら進歩していけるような風通しの良い組織になるといいなと思っています。
若い方に伝えたいのは、この仕事は「人を幸せにし、社会を豊かにする仕事」だということです。世の中には大変なことも多く、デザインは後回しにされがちですが、「そうではないんだ」という信念を持ち続けたい。社会に良い影響を与えられるような空間やデザインを作れるよう、皆さんで一緒に頑張りましょうと伝えたいですね。
―素敵なお話をありがとうございました。
取材
KENZAI-NAVI Media Planner 秋葉 早紀(二級建築士)
日本商環境デザイン協会(JCD)の歴史において、初となる女性理事長にご就任された折原さん。
今回のインタビューでは、新理事長としての想いや、これからの組織づくりに向けた決意をたっぷりと語っていただきました。
ただ仕事を発注・受注する関係性にとどまらず、『クリエイターの感性を刺激し、新たなインスピレーションや共感が生まれる空間』それこそが、これからのJCDが目指す姿だと感じられました。
初めての女性理事長誕生という記念すべき節目を迎え、新たな一歩を踏み出したJCD。
折原新理事長のもと、これまでにない新しい風が吹き抜け、商環境デザインの世界がどのように進化していくのか。
これからのJCDの躍動と活動から、ますます目が離せません! ぜひご注目ください。
JCD(日本商環境デザイン協会) インタビュー&レポート
[SPECIAL FEATURE] 折原美紀 特集
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株式会社ODO 代表取締役 インテリアデザイナー/プロデューサー 折原美紀
モデレーター:建材ナビ/株式会社プログランス Media Planner/二級建築士 秋葉早紀【対談】「消費されるデザイン」から「時間のデザイン」へ。折原氏が語る、数秒で心を掴む“ドラッガブル・ポップアップ”の可能性 -
IDM×JCD「the NIGHT 2025」JAPAN SHOP 2025 IDMとJCD合同開催による交流会「the NIGHT 2025」参加レポート -
株式会社ODO 主宰 折原美紀(建築デザイナー)異業種から転身し、レジャーホテルや「餃子の王将」有楽町店など様々なジャンルでデザインを手掛ける折原美紀氏の重要視する「越境デザイン」とは
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近年は、日本の技術や文化を次世代へ継承するため、「手仕事」に携わる人々とともに「地産地消のデザイン」の実践に注力している傍ら、ツアーリングスクールという体験型塾を主催し、その土地が培ってきた文化や技術を知り未来につなげる活動をしている。2026年からは日本の商業デザイナー500人余りを有する団体、日本商環境デザイン協会(略してJCD)の初の女性理事長となる。
株式会社 ODO (オド)
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