- 掲載:2026年07月16日 更新:2026年07月16日
次世代スポーツ体験を実現する「TOYOTA ARENA TOKYO」、勝利のカギは「運用」からの逆算 トヨタアルバルク東京株式会社 輿雄治 × 株式会社丹青社 町田怜子

これまでのスポーツ施設の概念を超え、なぜこのアリーナは人々の心を動かす観戦体験を生み出しているのか。
ホスピタリティエリアのプロジェクトの中心を担ったトヨタアルバルク東京の輿 雄治氏と、「ホスピタリティエリア」という概念による内装デザインを担当した丹青社の町田 怜子氏に、構想から完成までの軌跡と空間に込めた思いを語っていただきました。
Guest
トヨタアルバルク東京株式会社
アリーナ事業部 事業企画室 マネージャー
輿 雄治 | Koshi Yuji
トヨタアルバルク東京(株)入社後、アリーナプランニング部(現アリーナ事業部)に参画。主にホスピタリティエリアや屋外エリアの内装・FFE等の推進業務に従事。開業後は、アリーナのアセットを活用した新たな企画の立案や施設のバリューアップの業務を担当。「可能性にかけていこう」をコンセプトに、バスケットボールに限らない様々な企画を計画中。
トヨタアルバルク東京株式会社
東京都江東区青海一丁目3番1号
株式会社丹青社
デザインセンター クリエイティブ&ディベロップメントユニット 部長
町田 怜子 | Machida Satoko
商業空間、オフィス空間、デジタル演出を取り入れた企業ミュージアムなど、多岐にわたる分野でクリエイション経験を積む。様々なデザイン領域を横断しながら、付加価値の高い空間体験の創造を目指すクリエイティブチーム「クリエイティブ&ディベロップメントユニット」を立ち上げ、異分野のクリエイターとのコラボレーションを積極的に推進中。共感を生み、メッセージが伝わる“ホスピタリティあふれる空間デザイン”を目指している。
株式会社丹青社
東京都港区港南一丁目2番70号
品川シーズンテラス 19F
「負け」から始まった再挑戦。
空間づくりのプロが挑む、 「観戦体験型」アリーナ像
―まずは、丹青社が「トヨタアリーナ東京」プロジェクトに参画された経緯についてお聞かせください。
輿
もともとこのプロジェクトは、トヨタ自動車、トヨタ不動産、そして我々アルバルク東京の3社が中心となり、建築工事をリードしてくださった鹿島建設さんをはじめ、多方面の協力のもと進めてきました。その中で、内装の全体設計やデザインの領域で丹青社さんに加わっていただいたのが始まりです。
私がまだこの会社に入社する前、実は屋外パークのコンペがあり、その際も丹青社さんに参加いただいておりました。その後、改めて実施した内装コンペに参加してくださったのが、実質的な最初の出会いだったと思います。
町田
その「パークでの負け」があったので、チーム全員が「次は絶対に勝ちたい」という強い思いを抱いていました。当時からアルバルク東京さんの活動やファンの皆さんの熱意は存じ上げていましたので、それを自分たちの手で形にしたい一心でコンペに臨みました。ですから、当選の連絡を受けた時はメンバー全員が涙を浮かべるほどの喜びようでした(笑)。
というのも、今回はかなりチャレンジングなチーム編成をしていたからです。通常、スポーツ施設は専門のデザイナーが担当するのがセオリーですが、あえてホスピタリティ系のラウンジや飲食、商業施設を得意とするメンバーでタッグを組ませ、多領域のスペシャリストのノウハウを最大限活用しました。
アルバルク東京さんからのオリエンテーションを通じて、求められているのは今までにない「スポーツ観戦体験」であり、特にホスピタリティエリアの質が鍵になると感じました。部署を横断した大きなチャレンジだったので、お電話をいただいた時は本当に感極まっていました。
輿
そこまで喜んでいただけて、こちらも本当に嬉しいです(笑)。
デザインの先にある「運用」を見据える。丹青社を選んだ決定打
―アルバルク東京として、最終的に丹青社を選ばれた決め手は何だったのでしょうか。
輿
丹青社さんからは「このプロジェクトをどうしても勝ち取りたい」という熱意が、言葉の端々や行動からひしひしと伝わってきました。コンペに参加いただいた各社様どこの提案も非常に素晴らしく、選定には難航しました。
弊社の社長からも、「デザインやアイデアの・・・使い勝手まで深く考えてくれていると丹青社さんからの提案から感じられる」というコメントもあり、自分の中で確信が持てました。
最終的には「我々は運用を第一に考えられるプロとやりたい」と筋を通し、プロジェクト各社と協議のうえ、丹青社さんに決定しました。
モビリティとサステナビリティの融合
―MEGA WEBの記憶を継承するデザイン
TOYOTA ARENA TOKYO 外観
スポーツやエンターテインメントを通じて、新たな観戦体験を提案する次世代型アリーナとして、お台場のランドマークとなっている。
―かつてMEGA WEBがあったこの場所に、どのような想いやコンセプトを込めて「トヨタアリーナ東京」を構想されたのでしょうか。
輿
プロジェクト全体のコンセプトとして、「次世代スポーツエクスペリエンス」「未来モビリティサービス」「持続型ライフスタイル」の3本柱がありました。ここはかつてトヨタのシンボルでもあった場所ですから、新しいスポーツとモビリティ、そしてサステナビリティを発信していく拠点にすることが大きなミッションでした。
トヨタ自動車は世界中で多くのアスリートを支援している会社ですから、特に「スポーツの見やすさ」には並々ならぬこだわりを持って設計しています。
町田
設計側としては、その高い視座をいかに目に見える形に「因数分解」していくかが最大の課題でした。施設全体のテーマを、各エリアの機能やデザインに落とし込んでいく作業です。
特に、これまでにない観戦体験を提供するラウンジや個室、ファンや関係者が語れるアートがあるホスピタリティエリアに関しては、「東京に作る」という文脈を大切にしました。また、かつてこの地にあった「MEGA WEB」が持っていたフィロソフィーをどう継承するかも議論しました。
実は、TOYOTA PREEMIUM LOUNGEのアート壁面には、ひっそりと観覧車も描かれています。アルバルク東京のゆかりの地をデザイン化したグラフィックの中に、歴史を継承する意味で忍ばせました。
輿
ファンの皆さんが「こここそが自分たちの家だ」と思える場所にしたい。その熱い想いと、上質なスポーツ体験、ホスピタリティをどう調和させるか。共通言語を見つけるための対話に、最も多くの時間を使いましたね。
町田
対面での定例会議を何度も重ね、「このエリアは観戦の熱量と上質感の割合を何%ずつにするか」といった議論を、部屋ごとに丁寧に行いました。おかげでプロジェクトの軸がブレずに進められたのだと感じています。
常識を打ち破る「6つの個室」。
移動中にも続いたガチンコの擦り合わせ会議
―「JAPAN AIRLINESテラススイート」の設計において、特にこだわった点や、議論を重ねられたポイントについてお聞かせください。
輿
私は、この「テラススイート」の設計が最大の難所だったと記憶しています。これまでの日本のアリーナでは、VIP席といえば目立たない場所に作るのが主流でした。しかし現代のトレンドは、「VIPの方々が、周囲から憧れられるような最高の席で観戦ができる場所をつくる」という考え方にシフトしています。
町田
最初は、デザインを統一した方が圧倒的に楽ですから、それはやめておきましょうと(笑)。しかし、アルバルク東京やプロジェクト各社の「こだわりを絶対に譲らない」という強い覚悟を感じ、我々もそれに応えようと腹を括りました。
結果として、公園や湾岸、ポップカルチャーなど、東京の多様なシーンを表現した6つの部屋が完成しました。ただ、意見の集約は本当に大変で…。輿さんとは移動中やランチ中も、ずっとiPadを広げて打ち合わせをしていましたね。
輿
まとまった打ち合わせ時間が取れないほどお互い多忙だったので、移動中も、重要な打合せ時間でした。
町田
私は今回、プロデューサー的な立ち位置で計30人近いデザイナーを束ねて動きました。デザイナーが入れ替わり立ち替わり出てくるのは、正直ご迷惑ではありませんでしたか?
輿
いいえ、全くそんなことはありませんでした。町田さんが全体をコントロールしてくださっているのが見えていましたし、我々も後悔したくないので、プロの皆さんに遠慮せず率直な意見をぶつけさせていただきました。あの「ガチンコ」のやり取りがあったからこそ、このクオリティに到達できたのだと思っています。
JAPAN AIRLINES TERRACE SUITE
コートを望む開放的なテラス席に加え、ネオン演出を取り入れた近未来的な個室や、江戸文化をモチーフとした和の空間など、6 つの世界観を楽しめるプレミアム空間。
仕切りのない空間が生む圧倒的一体感。
「見やすさ」を極めたオーバル形状
熱狂を生み出す、次世代アリーナ空間
センターコートを囲むオーバル形状の客席計画により、どの席からでも高い視認性と一体感を実現。観戦体験を高める空間設計が随所に施されている。
―アリーナ空間として、特にこだわられた点についてお聞かせください。
輿
最大の武器は、国内アリーナ最大級のビジョンによる圧倒的な演出力と、何より「スポーツの見やすさ」です。オーバル形状を採用したことで、どの席からもコートが近く感じられます。 例えば、4階席の最後列であっても、以前アルバルク東京がホームアリーナとしていた国立代々木第一体育館の2階席の前方と同じくらいの距離感で観戦をお楽しみいただけます。また、全席にレザーシート※ を採用し、長時間の観戦でも快適に過ごせるよう配慮しました。
もう一つのこだわりは「仕切りのない空間」です。SMBCSKY LOUNGEは、アルバルクの試合時には誰でも入ることができる開放的なエリアで、自席での試合観戦に飽きてもスタンディングで試合観戦を楽しめます。
またコンコースに扉がなく、MAIN GATEを抜けるとそのままアリーナの中が見え、中に入った瞬間から没入できる設計になっています。
設計当時、ホスピタリティエリアをこれほど本格的に作り込んだアリーナは国内に数えるほどしかありませんでした。海外の事例やアリーナ施設以外のホスピタリティエリアも研究し、「ここまでやって本当に日本のお客さんに受け入れられるのか」という不安を抱えながらの挑戦でした。
町田
日本にはまだ「社交場としてのスポーツ観戦」という文化が十分に根付いていませんでした。そこをデザインの力でどうアプローチし、観戦スタイルの変革を促すか。それが我々の大きなミッションでもありました。
※PVC(ポリ・ヴィニール・クロライド)レザーシート
動き出した「夢の舞台」。デザインが変えるスポーツ観戦の未来
―オープン後、来場者の反応から、どのような手応えを感じていますか。
輿
「まるでNBAのアリーナにいるようだ」と言っていただけたときは、本当に胸が熱くなりました。不安もあった「テラススイート」や個室が、今ではほとんど予約が埋まり、何より部屋にいる方がとても楽しそうに応援している姿を見て、私たちの判断が間違っていなかったという自信に繋がっています。
バスケットボールの盛り上がりが最高潮に達するまでの時間を、仲間との会話を楽しむ社交場として過ごしていただく。そんな、私たちが理想としていた「アリーナでの過ごし方」が、今まさにここで実現し始めています。
町田
アリーナという空間自体が、新しいファンを生み出す装置になっていると感じます。お子さんを遊ばせながら親は試合に集中できる日本ハウズイングファミリールームの成功など、スポーツの楽しみ方の幅を、デザインの力で広げることができました。
輿
丹青社さんと組めたことで、単なる「ハコモノ」ではない、魂の宿ったアリーナを造ることができました。でも、これで終わりだとは思っていません。運用を続けながら、さらにアップデートしていきたいと考えています。
町田
ありがとうございます。私自身、キャリア20年の中でも間違いなく集大成と言えるプロジェクトになりました。
これからもパートナーとして、この場所をさらに魅力的にしていくお手伝いができればと思っています。
―最後に、お二人が今後の空間づくりにおいて注目している建材やマテリアルについてお聞かせください。
町田
今後使ってみたい素材といえば、ただ色合いが良いとかメンテナンス性が高いだけでなく、何かコンセプトやバックグラウンドなどのストーリー性があるものがいいですね。そういうマテリアルなら周囲と共有しやすく、デザインのクオリティーも上がるのではと思います。
輿
施設は色々な方が使いますので、マテリアルには耐久性や安全性が高い上に見栄えの良いものを意識して選びますが、そこにストーリー性が加われば、ファンの方々にもさらに喜んでいただけるでしょうね。
取材
KENZAI-NAVI Media Planner 秋葉 早紀(二級建築士)
取材の舞台は、テラススイートの中でも"アルバルク東京"を感じるお部屋「ALVARK」。お二人からは、プロジェクトで培われた確かな信頼関係がひしひしと伝わってきました。こだわりが随所に散りばめられた唯一無二の空間と、目の前に広がる迫力満点の次世代アリーナを、ぜひ現地でご体感ください。
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トヨタアルバルク東京株式会社
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輿 雄治 | Koshi Yuji
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トヨタアルバルク東京株式会社
東京都江東区青海一丁目3番1号
株式会社丹青社
デザインセンター クリエイティブ&ディベロップメントユニット 部長
町田 怜子 | Machida Satoko
商業空間、オフィス空間、デジタル演出を取り入れた企業ミュージアムなど、多岐にわたる分野でクリエイション経験を積む。様々なデザイン領域を横断しながら、付加価値の高い空間体験の創造を目指すクリエイティブチーム「クリエイティブ&ディベロップメントユニット」を立ち上げ、異分野のクリエイターとのコラボレーションを積極的に推進中。共感を生み、メッセージが伝わる“ホスピタリティあふれる空間デザイン”を目指している。
株式会社丹青社
東京都港区港南一丁目2番70号
品川シーズンテラス 19F

