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掲載:2025年05月26日更新:2025年05月26日

清水建設の「Shimz One BIM+」で進む固定資産管理とは

建設業界における固定資産管理は、これまで紙や表計算ソフトを用いた属人的な管理が主流でした。しかし、近年ではBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を活用し、3Dモデルとデジタル台帳を連携させた新たな「資産管理の効率化」が進んでいます。
中でも清水建設は、BIMを軸とした固定資産の運用・保守のスマート化に注力し、業界内でも先進的な取り組み「Shimz One BIM+」を発表しました。

本記事では、清水建設のBIMを活用した資産管理の全体像や、3Dモデルによる可視化のメリット、導入課題、そして今後の展望について詳しく解説します。

1清水建設の固定資産管理「Shimz One BIM+」サービスの概要

清水建設の固定資産管理「Shimz One BIM+」サービスの概要
清水建設は、BIMを活用した独自の固定資産管理サービス「Shimz One BIM+」を展開し、施設の
ライフサイクル全体にわたる情報管理の高度化を実現しています。
従来の図面や紙台帳では把握しづらかった属性情報や維持管理データを、3Dモデル上で一元的に管理することで、より効率的かつ戦略的な資産運用が可能になりました。
本章では、その概要と技術的な特徴、導入による利点について見ていきます。

BIM技術による新たな資産管理手法

清水建設が推進する固定資産管理サービスの核となるのが、BIM(Building Information Modeling)技術を活用した情報の一元化です。
これにより、建物の設計・施工時に作成された3Dモデル上に、構造・材質・使用年数・保守履歴などの属性情報を付与することが可能になり資産の状態を視覚的かつ正確に把握できます。

従来、図面や紙台帳では管理が煩雑になりやすかった保守計画や維持管理の履歴も、BIM上での管理により検索性・更新性が向上します。点検のタイミングや修繕履歴もモデル上で確認できるため、保全業務の効率化と属人化の回避が期待されるでしょう。

さらに、清水建設ではオートデスク社の「Tandem」などのツールを活用し、設計段階から運用・解体に至るまでの資産ライフサイクル全体をデジタル上で可視化・管理が可能です。これにより、金融機関や関連企業への資産情報の迅速な共有や、保険・評価にかかわる対応もスムーズに行える体制を構築しています。

資産管理を従来の静的な台帳から動的な情報資産へと転換する手法として、BIM技術は今後さらに注目されるでしょう。

出典:ニュースリリース(清水建設株式会社)

2.3Dモデルを活用した固定資産管理のメリット

関連ページ:One Click LCA|住友林業株式会社

3次元モデルによる状態把握の効率化

3Dモデルを用いた固定資産管理では、建物や設備、什器の状態を視覚的に把握できる点が大きな特徴です。老朽化の進行や点検の必要性を、モデル上で「色分け表示」することで、一目で判断可能となり、保守対象の選別や優先順位の設定も容易になります。

また、属性情報の入力・更新もリアルタイムで行えるため、棚卸しや現場調査の手間を大幅に削減が可能です。特に大規模オフィスや多拠点施設においては、現場を回らずに状態を把握できる仕組みとして、業務効率の向上に直結しています。

仮想空間を活用したレイアウトとシミュレーション

3Dモデルをベースに構築された仮想空間では、オフィス家具や設備のレイアウト変更を、実際の空間を再現しながらシミュレーションできます。例えば、設備の入替えや移動の可否、動線の確保といったレイアウト設計が、施工前に正確に検証可能となるでしょう。

また、BIMをはじめとする3Dモデルは、広告・展示スペースのデザインにも応用されており、顧客提案の段階から具体的なイメージを共有する手段として活用されています。視覚情報の提供により、
社内外の意思決定がスムーズに進む点も大きな利点です。

業務全体の効率化とコスト最適化への効果

3Dモデルによる資産管理の導入は、業務の見える化を促進し、結果として企業全体の運用コスト削減にも寄与します。
設備管理にかかる工数や人的ミスの削減レイアウト調整によるスペース効率の最適化など、日常業務の中で複合的なメリットが生まれます。

さらに、資産状況の正確な把握は、保険・評価・再調達といった費用計算の精度向上にもつながり、長期的な資産戦略の策定にも役立ちます。管理業務における付加価値の創出が、3Dモデル活用の大きな成果です。

3.導入イメージと費用の目安

BIMによる固定資産管理は、従来の業務効率を大きく改善する一方で、導入にあたっては費用やデータ整備の負担が懸念される場面もあります。特に初期費用や保守コストは、プロジェクトの規模や管理対象の範囲に応じて変動します。導入価格の目安は以下の通りです。

「フロア面積2,500m²の新築オフィス」
条件:BIMデータありの管理対象什器・備品数 約1,500点
導入基本料:約120万円
年間保守費用:約60万円
※BIMデータを保有しない場合は有償にて対応可能

このように、規模や設備条件が明確であれば、費用の目安も算出しやすくなります。また、自動車メーカー系の生産施設や金融機関系の事務所ビルなどへの導入もすでに内定しており、実用化フェーズに入っている点も注目です。
出典:ニュースリリース(清水建設株式会社)

4.今後の建築業界におけるBIM活用の展望

Cinema Round Premium(株式会社ジェネレックジャパン)
関連ページ:Cinema Round Premium|株式会社ジェネレックジャパン
建築業界では、BIMの活用が設計支援から施工管理、そして固定資産の維持管理へと広がりを見せています。今後は、BIMを軸とした業務のデジタル連携が進み、より効率的で戦略的な資産運用が求められる時代に入っていくでしょう。本章では、BIMとIoT・AIなどの先進技術との連携、さらに清水建設が取り組むデジタルツインの構築に注目し、資産管理の進化の方向性を探ります。

IoT・AI連携で進化するBIM資産管理

清水建設では、AIによる画像解析を活用した管理自動化に取り組んでいます。例えば、山岳トンネル工事ではライブ映像から施工サイクルをAIが自動判定し、関係者へ即時共有するシステムです。これにより、現場職員の待機時間を約40%削減するなど、点検や補修の判断を効率化する仕組みとして成果を挙げています。

さらに、建物に設置したセンサーから取得する温度・湿度・稼働状況などのリアルタイム情報をBIMモデルと連携させ、異常検知や予兆保全といった事前対応型の資産管理も実現しています。これらの技術は、今後の人手不足や広域施設の管理といった課題への対応策として、BIMの新たな価値を示す重要な要素となるでしょう。

BIMは設計・施工だけでなく、運用フェーズを支える次世代の資産管理基盤へと進化しつつあります。
出典: ニュースリリース(清水建設株式会社)

清水建設が進めるデジタルツインの構築

清水建設は、BIMをさらに進化させた「デジタルツイン」構築にも注力しています。Autodeskの「Revit」や「Tandem」などのツールと基幹システムを連携させることで、建物の施工記録・点検履歴・設備情報をBIM上に集約し、資産の状態や履歴を3Dモデル上で一元管理する仕組みを整えています。

「Shimz One BIM+」は、新築時に作成されたBIMデータを運用段階まで継続活用できる点が特長で、実際に自動車メーカーや金融機関の事務所ビルへの導入も進行中です。こうした取り組みにより、BIMは設計支援を超え、建物全体のライフサイクルを通じた資産マネジメント基盤としての役割を担いつつあります。

出典: 建設DXをリードする清水建設、デジタルツイン活用事例を一挙ご紹介(株式会社キャパ)

まとめ|BIMで変わる資産管理の未来

ベネッセアートサイト直島のベネッセハウス「パーク」
関連ページ:Mirror type Reception Signage|株式会社クラウドポイント
清水建設が取り組むBIM資産管理は、設計支援にとどまらず、運用・保守までを一元的に管理できる次世代モデルとして注目されています。3Dモデルによる視覚化、導入しやすいサービス設計、そしてIoTやAIとの連携によるリアルタイム運用など、現場実装と将来展望の両面で先進的な取り組みが進んでいます。

今後、BIMは建築業界における資産管理の標準インフラとして定着していく可能性が高く、清水建設の事例はその象徴的存在となるでしょう。


著者(長谷川裕美)プロフィール

建築・インテリアの専門学校卒業後、設計事務所や住宅メーカーに勤務。
現在は建築関連のライターとして活動中。
常に変化する建築業界の話題を丁寧にお届けします。




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