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掲載:2025年08月29日更新:2025年08月29日

保育園・幼稚園向け建築デザインのポイント|事故を防ぐ建材を解説


保育園や認定こども園の空間づくりでは、見た目の可愛らしさやデザイン性だけでなく、園児の安全性や快適性、そして保育士の業務効率といった現場の課題をいかに解決するかが重要なテーマです。特に、日常の中で起こりうる事故やけがを防止するためには、建材選びが大きな役割を果たします。

この記事では、「園児の事故防止」や「衛生面の向上」「音環境の改善」といった観点から、保育園デザインに最適な建材を厳選してご紹介します。現場の声を反映した製品や、すでに導入事例のある建材も含め、課題解決にお役立てください。

1.保育園・幼稚園の空間設計に求められる建材とは?



保育園や幼稚園といった教育施設や保育所、認定こども園の設計では、子どもが安心して過ごせる空間づくりが不可欠です。見た目の可愛らしさだけでなく、五感にやさしく、身体を守る工夫が建築設計の中で重要な役割を果たします。施設内外の安全性だけでなく、時間帯や用途に応じて柔軟に対応できる空間づくりを検討しましょう。

建材に求められる主な要素は以下の通りです。

安全性
滑りにくさ、角の少ない設計、衝突時の衝撃吸収性など
快適性
断熱性・吸音性・抗菌性などで子どもが過ごしやすい室内環境を整える
メンテナンス性
日々の清掃・管理がしやすい仕様
デザイン性
色彩計画や素材感によって空間に親しみやすさをもたせる


また、保育士の動線や視認性にも建材が影響します。床の色分けによるゾーニングや、透明性を活かした間仕切り、部屋ごとの用途に応じた家具や内装素材の選定などは、日常保育のしやすさを高めるポイントになります。

建材選定の際には、F☆☆☆☆や防炎認定などの安全性マークの確認が重要です。加えて、保育施設での導入実績や、施工会社・メーカーによるサポート体制、設計段階での相談サービスの有無も選定基準としてチェックすると安心です。企業によっては、施設設計やリフォーム工事の段階から専門の設計事務所と連携し、最適な空間づくりを支援している例もあります。
また、最近では「環境への配慮」や「サステナブル素材」の採用も増えており、設計者や保育士からの評価も高まっています。

さらに、実際の導入事例を比較したり、資料請求を通じた情報集めも重要です。建材の特徴や施工方法、対応可能な空間の種類など、具体的な内容を確認することで、より精度の高い選定が可能になります。



2.課題別|保育園デザインにおすすめの建材


保育園・幼稚園の建築空間では、事故の防止や音環境の改善、メンテナンス性の高さなど、施設運営上の課題を解決する建材の選定が重要です。ここでは課題ごとに注目すべき建材とその特長をご紹介します。実際に導入されている事例もあるので、ぜひ選定の参考にしてください。

転倒・衝突を防ぐ床材と建具

子どもは思わぬ方向に走ったり、急に転んだりするものです。だからこそ、床材や建具には高い安全性が求められます。保育舎や室内での行動に配慮した素材選びが、けがの防止につながります。

クッション性のある床材


園児の転倒によるけがを軽減するには、適度なクッション性を持つ床材の導入が効果的です。近年では、木質フローリングの風合いを持ちながらも衝撃吸収性に優れた床材が登場しており、園児施設向けに開発されたものもあります。こうした床材は、転倒時の衝撃をやわらげ、けがのリスクを大幅に軽減する役割を果たします。

滑りにくい素材と加工

床材には滑りにくい表面仕上げが必要です。滑り止め性能に加え、水拭きやアルコール消毒にも対応していれば、衛生面にも貢献します。

指はさみ・角への配慮

ドアや引き戸で起こりやすい事故のひとつに、指を挟んでしまうトラブルがあります。特に園児は開閉のタイミングを予測しにくいため、指を守るための安全スクリーンやすき間をふさぐパーツを設置することで、事故を未然に防ぐことができます。

柱や壁の角への対策


園内には、園児がぶつかりやすい壁の出隅や柱も多く存在します。こうした部分には、柔らかい素材を用いたコーナーガードを設置することで、衝突時の衝撃をやわらげ、けがの防止に役立ちます。

視認性とゾーニングを高める内装材

活動エリアとお昼寝エリアを色分けした床材で区切ると、園児がどこで何をする場所なのかを直感的に理解しやすくなります。視認性が高まることで、誤って走り込むなどの行動を減らす効果も期待できます。 また、壁に柔らかなトーンの配色や自然素材調の意匠を取り入れることで、落ち着いた環境づくりにも寄与します。

音環境・温熱環境を整える建材

園児施設においては、音の反響が強すぎると不安やストレスにつながることがあります。保育室の広さや素材選定、窓の位置など、設計段階での配慮が重要です。

防音・吸音材の活用


歩行音を軽減する防音マットを床下に設置すると、フローリングの足音や遊びまわる音が階下に響きにくくなります。施工も比較的簡単なものが多く、工事期間の短縮も可能です。

断熱性・遮熱性の高い建材

屋根材や窓まわりに断熱性や遮熱性のある素材を使用すると、快適な室温を維持でき、子どもたちの健康管理にもつながります。断熱効果が高いため、空調設備の省エネにも貢献し、施設運営コストの削減にもつながります。

衛生面とメンテナンス性に優れた内装建材

感染症対策が重視される中、衛生的で清掃しやすい建材が求められています。

●抗菌・防カビ仕様の壁材や床材
表面に抗菌加工を施した塩ビタイルや壁材は、細菌やウイルスの繁殖を抑制します。特にトイレや水まわり、エントランスなどの出入りが多い場所では、安全で清潔な環境づくりに貢献します。

●メンテナンスが簡単な素材
表面がフラットで汚れがつきにくい加工や、薬剤に強い素材であれば、清掃や補修の手間も減らせます。保育の場では衛生的な環境を保つために、1日に何度も清掃のタイミングがあります。限られた時間内で清掃と保育を両立する保育者にとって大きなメリットとなるでしょう。


3.事例紹介|安全性とデザイン性を両立した保育園の取り組み


ユニバーサルデザインをさらに発展させた「インクルーシブデザイン」を取り入れる園も増えています。車椅子でも使える遊具や、多様な動きに対応できる設計は、すべての子どもにとって安心して遊べる空間づくりにつながります。




例えば、内装材に使う紙と木材を交互に積層したカラフルな合板が人気です。断面に現れる色の層が空間にアクセントを加えつつ、温かみや親しみやすさを演出し、保育施設らしいやわらかさを表現できます。保育舎の中でも、こだわりのある室内設計を実現したい施設では、空間コンセプトや設計者の意図を反映させる建材として支持されています。


まとめ|課題解決からはじまる保育園の空間づくり



保育園や幼稚園の設計・建築においては、子どもの安全性と快適性を第一に考える必要があります。事故を防ぎ、衛生管理や音環境にも配慮された空間は、子どもたちの成長を支える場として欠かせません。施工や改修工事の際には、設計事務所や建材会社、家具メーカーなど、複数の専門家と連携することも重要です。

今回ご紹介した建材や事例を参考に、安全で過ごしやすい保育施設づくりを検討してみてください。建材の技術や選択肢は日々進化しており、これからも保育施設に求められるニーズに応える新しい製品が次々と登場しています。常に最新の情報に目を向けることで、より柔軟で魅力的な空間設計が可能になるでしょう。





著者(長谷川裕美)プロフィール

建築・インテリアの専門学校卒業後、設計事務所や住宅メーカーに勤務。
現在は建築関連のライターとして活動中。
常に変化する建築業界の話題を丁寧にお届けします。




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