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掲載:2021年06月19日 更新:2022年06月17日

お施主様の情報源を知っておくべき理由

インターネットの普及によって世の中は急激に情報化社会になりました。

パソコンを利用した方法から、現代ではスマートフォンがWeb情報の獲得の主役になりました。
手軽にその場で素早く情報を検索できる機能は大変便利な反面、専門職と呼ばれる人たちの職業的立場を脅かすシーンも増えました。

急増した情報の中には、正しいものもあれば、逆に根拠のない怪しい情報も溢れています。
増えすぎた情報によって、お施主様も困惑し、その情報を元に打ち合わせを行う建築士の苦労も増えてきました。

お施主様が得ている情報源をしっかり抑えておかなければ、業務の中でムダな対応に追われることになりかねません。 お施主様が獲得している家づくり関連の情報源について紹介させて頂きます。

1.施主との打ち合わせで焦らないために

お施主様の情報源を知っておくべき理由

建築の知識や経験が豊富な建築士でも、現場の巡回やお施主様との打ち合わせに抵抗感を持つ人は少なくありません。

初めて顔合わせをしたときは互いに緊張感を持って接していますが、やがて正式な契約が済んで、何度も打ち合わせを行う頃にはお互いに色々な話を進めているでしょう。

慣れとは怖いもので、最初の頃は当たり障りのないものであった質疑が、やがて複雑なものへ変わります。 漠然としたイメージ、構造的に不可能な収まり、設備機器のスペックや性能など、次々に難しい質疑がくるようになります。

メールやオンラインツールであれば、調べてから折り返すことも可能ですが、最も困るのがリアルな打ち合わせの場面です。

「知らない」「わからない」は専門化として避けたい回答ですが、うっかり「知ったかぶり」をして回答すると収拾のつかないトラブルに発展する危険性もあります。
特に設備機器等の諸元データは具体的な数値が記載されているので、間違えて回答してしまうと致命的なミスになるかも知れません。

お施主様の勉強度合いに合わせて回答するよりも、予め顧客側が収集する建築関連の情報をしっかりと把握しておきましょう。 「備えあれば憂い無し」の先手の対策です。


2. 現代社会は情報に溢れている

お施主様の情報源を知っておくべき理由

初めて聞く工法がある場合、何で調べますか。
初めて見る設備機器がある場合、どのようにして詳細を調べますか。

おそらくどちらもインターネット経由の情報でしょう。
これは建築の専門家でなくても、一般人なら誰でも同じです。

スマートフォンの登場で、より身近になったインターネットを利用した情報検索は日常的な情報収集方法となりました。 「家を建てよう」「リフォームしよう」と思ったお施主様が真っ先に行うのが情報収集です。

インターネットだけでなく、現代社会は情報にあふれています。
どんな家が完成するのか、どんな風にリフォームできるのかといったイメージをするために、さまざまな媒体を利用してお施主様は情報収集します。
建築関連の代表的な情報源は以下のとおりです。

・折り込みチラシ
・ホームページ
・ブログ
・各種SNS
・住宅情報誌
・書籍
・建築系の勉強会
・住宅展示場・モデルハウスの見学
・構造見学会や完成見学会

建築の知識と経験が豊富な建築士なら、平面図を見ただけで全体のイメージを思い浮かべることが可能でしょう。
しかし初めて家づくりに挑戦する人のほとんどは建築の知識がありません。
家づくりやリフォームを開始する場合、まずイメージを膨らませるために各種媒体を利用して情報を集め始めます。


3. 建築の専門化として抑えておくべき情報源

お施主様の情報源を知っておくべき理由

インターネットや雑誌には、珍しい建築物の紹介もありますが、普通の人が家づくりをする場合に参考にするのは一般的な住宅の知識です。
建築のプロである建築士であれば、知っていて当然の知識が一般人には全て新鮮なものです。
しかし、建築の専門家としてお客様の心理や行動の順序を知る上でも、お施主様が獲得している情報源はしっかりと把握しておく必要があります。

どの程度まで、どんな情報を、どれくらい知っているのかを把握しておくと、打ち合わせや提案の段階で非常に便利です。
各種媒体がどのような機能を有しているのか、紹介しましょう。

【折り込みチラシ】
折り込みチラシは住宅会社を探すための貴重な情報源です。
スタイリッシュな完成予想図は、イメージしやすいのでお施主様が好みます。

【インターネット】
今や情報収集に欠かせない媒体です。
住宅業界では情報の鮮度が求められるため、更新が早いインターネット広告がメインになっている会社も多数存在します。

【ブログ・SNS】
最新の情報や、建築に関するウンチクなどが掲載されていて非常に勉強になる媒体です。
ブログやインスタグラムなどのSNSでは、施工例や施主のこだわりの内装などを公開している情報も増えています。

【住宅情報誌・書籍】
家づくりの基礎知識を集めるために、専門の住宅情報誌や書籍は非常に有益です。
とくに、実例や体験談などは参考になります。
建築士でもしっかりと確認しておくべき情報媒体です。

【勉強会・見学会】
住宅会社やメーカーが主催する勉強会は良い勉強になります。
特に間取りプラン、工法、資金計画、住宅ローンの知識など、さまざまなテーマの情報収集が可能です。

【住宅展示場・モデルハウス】
家づくりを考え始めたときに、お施主様が手軽に実物を見て、役立つ情報源が「住宅展示場」です。
建築士も勉強のために積極的に見学に行くべきでしょう。



4. 常にQ&Aを用意して備えておく

お施主様の情報源を知っておくべき理由

いくら豊富な知識経験を有し、さらに情報収集に励んでも、お施主様からの難しい質疑はゼロにはなりません。 常に「Q&A」を用意しておくことが大切です。
よくある事例や質問から、珍しい事象まで必ずまとめておきましょう。

いざというときに役に立つ上、まとめておいた資料があればお施主様に即提示することが可能です。
素早い対応は信頼を強くするため、最低限のQ&A集はオリジナルで作成しておくことをオススメします。

しかし、時には見たことも聞いたこともない不可解な事象が現れるのもの現場の特徴の一つであり、回答に困る場合があります。
そんなときに役立つ便利な建築系Q&Aのサイトを紹介します。

【一般社団法人建築行政情報センター「改正建築基準法Q&A検索システム」】
建築基準法関連のQ&Aが記載されているサイトです。

【建材ナビ「建築何でもQ&Aチャンネル」】
建築、建材についてのちょっとした質問にも答えてくれる便利な建築系Q&A。
簡単な質問から専門的なものまで利用可能です。

【一般社団法人日本建築士事務所連合会「建築Q&A」】
一般社団法人日本建築士事務所連合会のQ&Aページです。
一般の方向けにわかりやすくまとめられているので、参考にしましょう。

その他、ハウスメーカーやビルダー、リフォーム店のQ&Aページも参考にすると便利です。


5.質問に対する適切な回答法

お施主様の情報源を知っておくべき理由

Q&Aを利用しても適切な回答が得られない場合があります。
質疑自体が難しすぎるのか、稀である場合には回答に困るシーンもあります。

なかでも最も難しい質問が、「意見を求められる質問」です。

色やデザインを問われるこの形式の質問には正しい答えは存在しませんが、「建築士が良いといった」「工事店がオススメだといった」という責任の所在を追求される可能性があるため、個人的意見で断言するような回答は避けなければなりません。

この手の質問に対しては、質問のオウム返しが鉄則です。

「〇〇先生はどちらの色が良いと思われますか」の質問に対し、相手に同じ質問を投げ返します。
「逆に△△さまはどちらのほうがお好みですか」という感じです。

質問の力は強力で、使い方によっては非常に危険なコミュニケーションツールになります。
自分を正当化する目的のためや誘導尋問に利用できるのが質問力です。
お施主様から質問される前に、逆に積極的に良い質問を投げかけることによって、自分の意図するシナリオを展開することが可能です。

良い質問の例を紹介しましょう。

【一度の会話で、質問は1つに絞る】
一度に複数の質問を投げかけると人間は混乱します。
回答が出るまで必ず待ちましょう。

【相手の話を途中で遮らない】
相手の立場を尊重し、意見を聞く耳が大切です。
建築のプロであっても、お施主様の意見や話はしっかり聞くべきです。

【同じ目線、同じ立場を意識する】
家づくりは初めて経験される方が大半です。
初心者ならではといった容易な疑問も多く存在しますが、同じ目線で話を聞くことによって信頼関係が構築されます。

【できるだけ手短に話す】
長い話は誰でも面倒です。
単刀直入にわかりやすい表現を心がけましょう。


6.まとめ

いかがでしたか。
情報収集に熱心なお施主様が獲得している情報源や、難しい質問に対する答え方について紹介させて頂きました。

類似する建物でも、同じ家はこの世に2つと存在しません。
それぞれの家族が住み、それぞれの利用者が活用するのが建築物です。
快適で利便性に優れ、利用する人すべてが笑顔になる建物を作り、守っていくことが我々建築士の使命です。
満足していただける住まいを現実化させるためにも、素朴なお施主様の質問や疑問にしっかりと耳を傾け、丁寧にわかりやすい回答を出すように心掛けましょう。

知識と経験、そして良好なコミュニケーションが建築士の資質として問われる時代です。
顧客心理を知り、溢れ返る情報を正しく整理して、お施主様に負けない情報量を獲得しておきましょう。


著者(田場 信広)プロフィール

・一級建築士、宅地建物取引士

・建築設計、工事監理、施工(大工)、戸建て木造住宅の新築からリフォーム全般、分譲マンションの内装改修、マンションの大規模修繕工事の設計・設計管理、警察署の入札仕事や少年院の特殊な工事も経験

・某資格学校にて2級建築士設計製図コースの講師を6年務める







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