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建築家インタビュー
  • 掲載:2010年06月06日 更新:2024年12月06日

「光と風」をテーマとして設計を行っています
坪内優建築設計事務所

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~取材にあたり~

近年、益々多様化が進んできた個々のライフスタイルに合致した住まいづくりとして、最近よく耳にするのが「コーポラティブ・ハウス」というスタイルです。一言でいうと、従来の分譲型住宅を購入するのではなく、住宅を建てたい人々が共同で土地を購入し、設計から工事の発注まで自分たちで行う共同住宅です。
実は日本でもすでに30年に渡る実績があり、都市部を中心に約7000戸が建設されているとのこと。分譲住宅に比べて自由度などのメリットもある反面、細かい点でのデメリットもあると聞きますが、いずれにしろ、近年の高齢化社会や単身世帯の増加などに伴う、新しい共同住宅のカタチとして今後も注目を集める可能性が高いといえるのではないでしょうか。

今回の「スペースデザイン」では、そうしたコーポラティブ・ハウスなどの設計にも多く携わり、自らを「空間創り職人」と位置付け、住まう人々が真に安らぎを感じることのできる居住空間づくりに情熱を燃やす建築家、坪内優氏にお話を伺いました



坪内先生が特に得意とする設計分野・デザイン分野などはございますか?

戸建住宅・店舗を中心として設計・監理を行っております。新築だけでなく、改築・リフォーム等にも幅広く対応します。以前勤務していた時には、コーポラティブハウス・マンション・オフィスビル等も数多く担当していました。
「光と風」をテーマとして設計を行っています。




一般ユーザーさんに対して、良い家を建てる為に設計士として何かアドバイスがあれば教えてください。

具体的なイメージをお持ちの場合は、出来るだけ詳しく話して欲しいと思います。こんなことを言っては恥ずかしいとか、無理だろうとか思わないで、考えておられることを素直に伝えてもらった方が良いです。後になってから実はこうしたかったとか言われても、出来ないこともあります。
せっかく家を作るのですから夢は実現させたいと思っています。

逆にイメージを持っておられない場合でも、話をして行くうちに見えてくるものです。私は、会話をすることを第一に考えていますので、気軽に何でも話せる関係を築くことが大切です。時には雑談をしてみたりすることも必要です。そんな何気ない会話の中から、設計のヒントが生まれてくることもしばしばあります。

それと、家が出来上がるまでの過程を楽しんで欲しいです。時間もかかり、いろいろと決断しなければいけないことも多く大変なこともありますが、一生の内に何度もあることではないですから、貴重な体験が出来ると考えて、時間を楽しんでください。過ぎてみればあっという間の出来事だったと感じるでしょう。




設計士として建築に携われて、仕事にやりがいや喜びを感じられるのは、どんな部分でしょうか?

家が完成した時に喜んで頂くのはもちろんですが、想像を超えた空間だったと言われるのが一番嬉しいです。ご希望に応えることは当然のことで、それ以上の提案をしようと日々心がけております。難しい問題も、創意工夫を重ねてクリアできた時も嬉しいです。
実際にあったことですが、こちらから提案したことを、家が出来上がる頃には自分達が最初から考えていたことだと思われるようになり、自慢されているのを見た時には、提案して良かったと思い、心の中で小さくガッツポーズをしました。
引き渡して暫くしてから訪問した際に、ユーザーさんの生活に馴染んでいるのを見ることも嬉しいですし、以前より明るく、楽しそうにしておられるのを見ると、この仕事をやっていて良かったと思います。




今はまだ出来ないけど、いつかこんな家づくりをやってみたいというものはございますか?

昔携わっていたコーポラティブハウスのノウハウを活かしたものをやってみたいと考えています。ただ、一般的なコーポラティブハウスはシステム上難しい問題を持っていますから、親子や兄弟等近しい関係の人達が一緒に暮らす現代的な共同住宅や長屋といった物が出来たら良いと思っています。核家族化が進む世の中で、もう一度親子関係を意識した家作りが必要と思います。
それとは反対に、ユーザーの趣味や考えを突き詰めた家とは言えないような究極の装置のような家や別荘もやってみたいと思います。使い勝手が悪かろうが不便だろうが構わないから、美しさだけを追求するとか、逆に見栄えは悪くても良いから使い方にこだわった家など面白いと思います。




これからの住宅・建物はこんな風になるだろうというお考えがありましたら教えてください。

景気が低迷している昨今でも、自然素材に対するご希望は多く見受けられます。家にも安全というものが要求され、構造だけではなく健康に対しても良い物を選ばれる時代です。こういう要望は今後も増えてくるだろうと予想されます。

一方、国の方はと言えば、長期優良住宅とか家を基準や数値で判断し、空間そのものを評価する方向には向かっていません。規格化された物や法・制度で画一的に判断しようとしています。本物を使って長い年月に耐える、時代の流れを感じる味といった物を切り捨てようとしているように思われます。
エコの考え方も、結局は機械や性能でばかり考え、辛抱したり工夫するといったことは時代錯誤だと言わんばかりです。本来人間の持っている順応する力を弱めて行く家が増えて来ていると思います。昔に戻れとは言いませんが、自然と共存し、自然を感じられる家を作っていかなければいけないと思っています。設計の中でトップライトを取り入れたものが多いのも、家の中から空を見上げることが出来るからです。夏に暑いと思われがちですが、工夫すれば意外とそうでもないのです。

本物を使って良い空間を作れば、家は長持ちするのです。時間が経てば使い捨てではなく、使い続けられる家を作って行くことが大切だと考えています。




~取材後記~

坪内先生の住まいづくりのテーマは「光と風」。なるほど、このふたつの要素の無い住まいを想像するだけで、ぞっとしてしまいます。季節ごとの日差しで明るい住まい、適度な心地よい風が抜け、湿気の少ない住まい・・・これだけでも十分快適な居住空間です。
そして、季節ごとの温度差への対策を施した上で、住む人ができる限り自然と共存しながら、自然を感じながら生活するというライフスタイルを実践すれば、生活の知恵や工夫が生まれ、愛着が湧き、自身も健康になる・・・何だか長生きできそうな住まいといえそうですね。


取材・文 建材ナビディレクター 中島




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