災害から暮らしを守る!レジリエンス住宅とは?メリット・デメリットについて解説
日本は昔から自然災害に見舞われることが多く、世界的に見ても災害の多い国として知られています。ここ数年をみても、地震や台風など大規模な自然災害が発生し、深刻な被害をもたらしていることは記憶に新しいのではないでしょうか。そのような中で今注目を集めているのが「レジリエンス住宅」という考え方です。聞き慣れない方も多いかと思いますので、今回はレジリエンス住宅の概要、メリット・デメリットを解説します。
1.レジリエンス住宅とは
「レジリエンス」とは、英語で「回復力」「強靭性」「復元力」「弾力」などを意味する言葉で主に心理学用語として用いられています。住宅業界では10年ほど前からレジリエンスという言葉が使われるようになりました。
建築分野でさまざまな調査・研究を行っている一般社団法人日本サステナブル建築協会では、住宅におけるレジリエンスとは外部からの力や影響に対する「しぶとさ、強靭さ、回復力」のこととしています。そして、レジリエンス住宅の性能を確認するポイントとして「平常時の免疫力」「災害発生時の土壇場力」「災害後のサバイバル力」の3つの観点を挙げています。つまり、レジリエンス住宅とは、災害発生時はもちろん、その前後の日常生活を守る性能も備えている住宅といえます。
2.レジリエンス住宅に求められる3つのポイント
レジリエンス住宅の概要について理解したところで、レジリエンス住宅の性能を確認する3つのポイントについて具体的に見ていきましょう。
平常時の免疫力
「平常時の免疫力」とはすなわち、健康的かつ安全な毎日を過ごし、さまざまなことに備える力になります。そのために必要な性能のひとつが断熱性能です。家の断熱性能を上げれば、一年を通じて快適な温度に保ちやすくなります。家の中の温度変化が少なくなることで、室内での熱中症やヒートショックなどを防ぎ、身体の負担軽減にもつながります。換気システムを取り入れて室内の空気をきれいにすれば、より快適性は増すでしょう。
安全面を考えるうえで知っておきたいのは、住宅内での事故は交通事故よりもはるかに多いということです。特に小さな子どもや高齢者が多く、転倒や転落など命の危険が伴うケースも少なくありません。住宅内の段差をできるだけ解消しバリアフリーにする、必要な場所に手すりを設置する、階段に滑り止めを設置する、といった対策は住宅内での事故を防ぐ有効な方法でしょう。家族みんなが安全な生活を送れることは、レジリエンス住宅の基本的な要素です。
健康面を考えるなら、抗菌・抗ウイルス加工や有害物質が発生しない建材を用いるのも効果的です。花粉やウイルスを室内に持ち込まないように玄関に土間収納を設けるなど、間取りを工夫するのも良いですね。また、住宅の免疫力を高めるためには定期的な改修やメンテナンスも大切です。「建物の健康を守る」ことで快適な毎日が長く続くことにもつながるでしょう。
災害発生時の土壇場力
万が一災害が発生したら、家族の命を守ることが最も重要です。「土壇場力」とは、まさに災害に耐え家族を守る力であると考えられます。地震大国である日本では、これまでに住宅の耐震に対する基準や規定が何度も見直されてきました。耐震性能はレジリエンス住宅に求められる性能の中でもとても大きな役割を果たし、家族の安全を守るうえで必要不可欠です。建築基準法の新耐震基準相当もしくはそれを上回る耐震性があると心強いでしょう。
災害は地震だけではありません。台風や集中豪雨による浸水被害や土砂崩れ、記録的な積雪による住宅の倒壊など地域や立地によってさまざまです。地域の特性などを考慮し、起こりうる災害に対応できる策を講じることが大切です。自分が住んでいる地域の情報は各自治体が公開している“ハザードマップ”で確認しましょう。ハザードマップとは、河川の氾濫や液状化、土砂崩れなど想定される自然災害のリスクを示した地図です。避難経路や避難場所も記載されているので、いざというときのために集合場所などを家族で話し合っておくと良いですね。
住宅の性能が高くても、室内には危険なリスクがいくつもあります。大きな家具が倒れたりガラスが割れたりすると、怪我や避難の妨げになる可能性があります。家具の固定、ガラスの飛散防止といった工夫も必要でしょう。さらに、災害発生時に役立つ防災グッズを用意しておくことも忘れてはいけません。災害に耐え家族を守る住宅を備えながら、自分の身を守る方法もしっかりと準備しておくことが重要です。
災害後のサバイバル力
以前は「災害に対する備え」という点で住宅を考えることはあっても、「災害“後”に対する備え」という点はあまり重視されていなかったかもしれません。しかし、災害後の生活も考えておかなくては、たとえ住宅が無事であっても身体的および精神的な負担は大きくなってしまうでしょう。
レジリエンス住宅ではこの点にも注目し、「災害後のサバイバル力」に活かせる性能を住宅に求めています。そこで重要なのは、電気や水道といった生活に欠かせないライフラインをどう確保するかということです。
近年では太陽光発電や蓄電池を導入し、停電に備えている方も増えています。EV車があれば蓄電池の代わりになり、最小限の電気機器を動かす力となるでしょう。給湯器の中には、停電時でもお湯が利用できるものもあります。また、エコキュートのように給湯器のタンクに非常用の水栓がついているものは、タンク内の湯水を生活用水として使用することもできます。災害後に大切にしたいことは、ライフラインの復旧や支援が得られるまでの期間を、できる限り日常生活に近い状況で安全に過ごせることではないでしょうか。
3.レジリエンス住宅のメリット・デメリット
レジリエンス住宅は、日常生活を快適に安全に過ごすメリットがたくさんあり、災害の発生時に加え発生後の生活についても備える、心強い住宅といえます。
しかし、さまざまな性能の向上や設備の導入を追求するあまり、一般的な住宅よりも建築費コストがかかってしまう可能性があります。断熱性能を高めたり、太陽光発電などの導入により、光熱費の軽減が期待できますが、初期費用が高くなることは否定できないため、予算を考慮し各対策について優先順位を決めておくほうが良いでしょう。
国や各自治体が省エネ住宅などに対し補助や助成を行っていることもあるので、事前に確認してそれらを活用するのもおすすめです。
まとめ
レジリエンス住宅について、イメージできたでしょうか。災害はいつどこで起きるか分かりません。「災害に強い家」というと特別な住宅のように思えるかもしれませんが、レジリエンス住宅は家族が健康的で快適な毎日を送るために大切な性能を備えています。家づくりを考える際、一つの選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。
建築・インテリア系の専門学校卒業後、工務店にて建築業務に携わる。
福祉住環境コーディネーター2級。
二児の母。