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掲載:2022年08月17日 更新:2022年08月17日

住宅ライターが解説!注文住宅でお金をかけるべき場所はどこ?

住宅ライターが解説!注文住宅でお金をかけるべき場所はどこ?

はじめての家づくり。「キッチンにこだわりたい」「省エネ住宅を建てたい」「収納がたくさんほしい」など、希望をたくさん詰めこみたいですね。

けれど建築費用を予算内に収めるためには、削らなければならない部分も出てくるかもしれません。そんなとき、どこにお金をかけて、どの部分の費用を削ればいいのでしょうか?

今回は住宅ライターである筆者が、注文住宅でお金をかける部分、かけなくていい部分について解説します。


注文住宅でお金をかけるべき部分

住宅ライターが解説!注文住宅でお金をかけるべき場所はどこ?

家を建てるときには主要構造部分にはお金をかける方が多いのですが、ほかにもお金をかけた方が良い部分はあるのでしょうか?

断熱性・気密性を高める工事


注文住宅でお金をかけたいのは、省エネ住宅にするために断熱性や気密性を高める工事です。高断熱・高気密の住宅は室内温度が外気温に影響されにくく、室内温度も外に逃げにくくなります。
建物内の温度をほぼ均一に保てるので「夏は涼しく、冬は暖かい」家で一年中快適に暮らせると同時に、光熱費も抑えられることがメリットです。

ただし、断熱性・気密性の高い省エネ住宅は、断熱材をたくさん取り入れたり、窓ガラスなどの建材に断熱性の高い建具を選んだりするので、初期費用は一般住宅と比べると高くなります。
初期費用にお金はかかりますが、省エネ性能の高い住宅は、国が用意しているさまざまな制度や優遇措置を受けられるので、長い目でみると住宅の「ランニングコスト」を抑えられます。
家を建てたあとのランニングコストについてまとめた記事がありますので、こちらも参考にしてください。

>家を建てた後にかかるお金はいくら?住宅のランニングコストを抑える方法を解説!

暮らしやすさはもちろん、制度を利用するためにも断熱性と気密性を高める工事には、予算が許す限りは費用をかけることをお勧めします。

許容応力度計算による耐震等級3の確保


日本は「地震大国」と呼ばれるほどに地震の多い国なので、大切な家族を守るためにも、耐震等級3の確保に資金を充てることをお勧めします。

住宅会社では耐震等級3を標準仕様としている会社が多くありますが、構造計算の方法によっては耐震性に差が出ることもあります。
地震への強さを表す耐震等級を決めるためには「壁量計算」と「許容応力度計算による構造計算」の2種類の計算方法がありますが、筆者がお勧めしたいのは許容応力度計算による構造計算です。
それぞれの計算方法の違いを見てみましょう

・壁量計算:壁の量で測る簡易的な計算方法
・許容応力度計算:建物への固定荷重・積載荷重や地震などの長期荷重・短期荷重を想定して構造部材の内部に生じる抵抗力を計算する方法

上記を見てわかるように、同じ耐震等級を測る計算でも、方法によって算出方法がまったく異なります。
もちろん計算方法によって費用にも差が出るため、壁量計算であれば10万円程度ですが、許容応力度計算の場合は20万円以上かかることがほとんどです。

しかし、壁量計算での耐震等級3は、構造計算での耐震等級2よりも耐震性が低いケースもあるという実験結果も出ているので、壁量計算での耐震等級3と許容応力度計算での耐震等級3はイコールではありません。
いつ起こるかわからない大地震に備えるためにも「許容応力度計算での耐震等級3の確保」に資金を充てることをお勧めします

外壁や屋根材


外壁や屋根は基礎や主要構造部分の次に、耐久性が求められる部分です。
外壁材や屋根材には安価なものから高価なものまでさまざまな素材がありますが、耐久性はある程度値段と比例します。
そのため、外壁と屋根の費用を削ってしまうと、初期費用は抑えられたとしても、結果としてリフォームや修理などの修繕費用が多くかかってしまう可能性があるのです。

外壁塗装の耐用年数は「塗料・外壁材・シーリング」の3つで決まりますが、メンテナンスは3つの中で一番耐用年数が短い素材に合わせて行います。
例えば塗料10年、外壁材30年、シーリング7年の耐用年数の素材を選んだ場合には、シーリングの耐用年数である7年でメンテナンスが必要です。
メンテナンス頻度を少なくするためには、塗料・外壁材・シーリングの3つともに耐用年数が長いものを選びましょう。

屋根材の場合も、化粧スレート屋根の耐用年数は15〜20年といわれていますが、メンテナンスは7年程度で行います。
初期費用は抑えられますが、定期的なメンテナンスが必要なうえに、耐用年数も長くありません。
一方で、初期費用が高い瓦屋根の耐用年数は50〜100年程度で、メンテナンスは25〜30年に1度程度。瓦1枚からの交換も可能なので、メンテナンス面も優れています。

外壁や屋根は劣化を放置しておくと、雨漏りや雨の侵入によって家の構造部分にまで深刻な被害を与える恐れもあるため注意が必要です。
そのため費用がかかったとしても、外壁や屋根材には耐久性に優れた素材を選ぶことをお勧めします。


注文住宅でお金をかけなくてもいい部分

住宅ライターが解説!注文住宅でお金をかけるべき場所はどこ?

注文住宅を建てるときにお金をかけなくてもいい部分の一つが、キッチン・浴室・洗面・トイレなどの水回り設備です。
水回り設備にはそれぞれ「グレード」があり、以下のような部分に使われる素材によってグレードが決まります。

キッチン:扉・天板の種類
浴室:壁パネルの種類
洗面:扉・ボウルの形状や鏡の種類
トイレ:便器のデザインや機能性

機能性やデザイン性に優れているものほどグレードが高く、オプション品をたくさん付けると、その分費用も跳ね上がります。
しかし、デザインや機能は見た目や使い勝手の問題なので、耐用年数はグレードによって変わることはほとんどありません。50万円のキッチンも200万円のキッチンも、耐用年数は10〜20年で同じです。
そのため、予算をオーバーしてしまいそうなときや資金の割り振りを決める際には、水回り設備の予算を調整することをお勧めします。

外観の形状


家を建てるときにお金をかけなくていい部分の二つ目が、外観の形状です。外観は凹凸が多いほど変化が出て個性が光りますが、外観の形状が複雑になると屋根の形状も複雑になります。
形状が複雑な家は建築費用が高くなりますが、それだけではありません。外観や屋根の形状が複雑になると、雨漏りのリスクもあるのです。

形状が複雑な屋根は建材の継ぎ目が多いので、シンプルな形状の住宅と比べると、劣化による雨漏りが起こりやすくなってしまいます。先ほどもお伝えしたように、雨漏りは家の構造にダメージを与える恐れもあるため、できれば避けたいトラブルです。

雨漏りを防ぐためにも、外観の形状は正方形や長方形などのシンプルな形状をお勧めします。屋根にもシンプルな切妻屋根または片流れ屋根を選び、庇(ひさし)の長さを少し深めにしておけば外壁の劣化を防ぐ効果も期待できます。


注文住宅で予算が足りないときの優先順位は?

住宅ライターが解説!注文住宅でお金をかけるべき場所はどこ?

家を建てるときには思った以上に費用がかかり、予算が足りなくなることもあるでしょう。予算を追加できれば一番いいのですが、費用を削らなければならないときには、優先順位を考えて費用の調整をしなければなりません。

けれど「何を削ればいいかわからない」「決められない」とき、どうすればいいのでしょうか。住宅ライターである筆者が考える、費用を充てるべき優先順位は以下の通りです。

1. 構造部分
2. 外壁材・屋根材
3. 断熱材
4. 内装(間取り・床材・壁紙など)
5. 外構(アプローチ・駐車場・庭など)
6. 水回り設備

優先順位が高いのは、後付けやリフォームが難しい部分です。とくに1〜3までの部分は、簡単には追加工事をできない部分。そのため、他の部分の費用を削ってでもこの部分に費用を充てることをお勧めします。


まとめ

住宅ライターが解説!注文住宅でお金をかけるべき場所はどこ?

今回は注文住宅で「お金をかけるべき部分・かけないでいい部分」というテーマで優先順位についてお伝えしましたが、「住み心地を優先したい」「おしゃれな家に住みたい」など、人によって家に求めるものは違うため、正解はありません。

注文住宅を建てるときには部分別にかけられる費用を考えながら、何を優先すべきか家族でしっかりと話し合い、予算を決めることが大切です。
家づくりをスタートする前に、家族で理想の暮らしについて会議を開いてみてください。


著者(井本ちひろ)プロフィール

工業大学建築系学部卒業。
FP2級技能士。

キッチンメーカーで、キッチン、風呂、洗面、トイレのプランニングなど行う。
家づくり、水回り設備、エクステリア、火災保険、相続など、住宅にまつわる幅広い記事を中心に活動中
子育て中の母でもあり、主婦目線での貯蓄、資産運用なども得意。

ブログ「フリーランス主婦のあれこれ日誌」 






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