「閉めるだけ」で最大3mの浸水を防ぐ。東洋シヤッターの止水ドア「TSウォータータイト」が内閣官房「国土強靱化 民間の取組事例集」に選定
同製品はこのたび、内閣官房 国土強靱化推進室が発行する「国土強靱化 民間の取組事例集」(令和8年4月・vol.12)に、民間による先導的な国土強靱化の取組事例として掲載されました(事例番号014)。本記事では、選定のポイントと製品の特長、開発の背景をご紹介します。
国の事例集に選ばれた「日常に溶け込む」止水ドア
そもそも国土強靱化とは、地震や津波、台風などの自然災害に強い国づくり・地域づくりを進め、大災害が発生しても人命の保護や被害の最小化、経済社会の維持、迅速な復旧復興ができる社会を目指す国の取組です。「国土強靱化 民間の取組事例集」は、そのうち防災・減災や早期復旧に資する民間企業の先導的な取組を広く社会に発信することを目的に、内閣官房 国土強靱化推進室が発行しているものです。TSウォータータイトは、「日常に溶け込みながら災害時にも機能する」というフェーズフリーの考え方に基づく取組として掲載されました。
フェーズフリーとは、日常時と非常時という2つのフェーズの垣根を取り払い、普段使っているモノやサービスがそのまま災害時にも役立つようにしようという考え方です。TSウォータータイトは2021年にフェーズフリー認証を取得し、2023年には「第3回フェーズフリーアワード2023」事業部門でBRONZE(銅賞)を受賞するなど、かねてより社外からの評価を積み重ねてきました。今回の事例集掲載は、その取組が国のレベルでも「先導的」と認められたことを意味します。
TSウォータータイトとは──普段は一般ドア、災害時は止水ドア
ラインナップは、エントランスや避難経路など一般施設向けの「SLタイプ」と、機械室・電気室向けの「PGタイプ」の2種類。受変電設備などが集まる電気室・機械室は、ひとたび浸水すると建物全体の機能停止につながりかねない、止水対策の優先度が特に高い部位です。いずれのタイプも公的試験機関立会いのもと、実物を使った止水性能試験で性能を確認済みです。窓無しのフラッシュタイプは止水高さ3m以下に対応しており、ドアが水没するような想定外の浸水でも、屋内への被害を最小限に抑えます。
バリエーションも豊富です。SLタイプには、ドアを開けずに外の状況を確認できる窓付仕様(防火設備・止水高さ1.5m)を設定。また、止水高さ1m以下の仕様であれば、オートロックなどに対応する電気錠も使用できます。SL幅2.2m・PG幅2.1mの広い開口部に対応する両開きも用意され、PGタイプは両開きでも20L/h・㎡の高い止水性能を実現しています。
特許のヒレゴムが実現した「一般ドアと同じ納まり」
一般ドアと変わらない見た目と操作性を保ちながら止水性能を付加した点こそ、「日常に溶け込む」というフェーズフリーの発想を製品として体現した部分といえます。
開発の背景──止水板が抱えていた「2つの課題」
あわせて見えてきたのが、止水板が抱える2つの課題です。1つは建物管理者の不足。緊急時や休日にも対応できる管理者は年々減っており、災害時に止水板を設置する人手の確保が難しくなっています。もう1つは予算の確保。止水板は災害時にしか使わない設備のため、平常時から予算を割きにくいという実情がありました。
そこで同社は「日常的に使えること」「災害時に追加操作が不要なこと」「一般的なドアと同様の見た目であること」の3点を開発方針に設定。従来の「止水製品を改良する」という発想を逆転させ、「一般ドアに止水性能を持たせる」というアプローチでTSウォータータイトを生み出しました。
導入効果と現場の声──「避難できる止水ドア」への進化も
さらに開発後のヒアリングでは、「止水時にある程度水深が上がると、水圧で扉が開かず避難できなくなる」という指摘もありました。これを受けて同社は、ドア上部に開閉式の避難口を設けた「避難可能タイプ」を新たに開発。止水しながら避難もでき、外部から施錠できるため防犯性も確保した新バージョンとして、SLタイプに追加されています。ユーザーの声を受け止めて製品を進化させ続ける姿勢も、本事例の見どころです。
まとめ──設計段階から「フェーズフリーな浸水対策」を
普段から付き合いのある建築設計事務所などから追加機能に関する新たな要望も届いており、今後は新しい機能を付加したバリエーションの拡充を目指しているとのこと。フェーズフリーの発想を軸に、減災だけでなく早期復旧にも貢献できる製品開発を続けていく考えです。
70年以上にわたりシャッター・ドアの製造・販売を手がけてきた東洋シヤッター。建具と防災・防犯製品で培ったノウハウを注ぎ込んだTSウォータータイトは、国の事例集に掲載された「日常に溶け込む浸水対策」として、今後ますますの普及が期待されます。
著者:溝下 翔太
一級建築士・建築基準適合判定資格者
近畿大学建築学科卒業後、設計事務所で5年間の設計実務を経て自治体に入庁。建築確認審査・住宅政策・都市計画など建築行政に10年以上従事し、2026年に独立(United Archi.Lab代表)。
住宅・建築・不動産分野で執筆実績400本以上、建材メーカー公式サイトのコラム・SEO記事の執筆経験も豊富。設計と審査の両側を知る実務経験を活かし、製品の技術的な強みと法規上の位置づけを、建築のプロにも一般の読者にも伝わる言葉で解説します。
防災・耐震、建築基準法など制度分野の解説が得意です。
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