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掲載:2021年11月24日 更新:2022年04月15日

NETIS技術を積極的に建築工事に活用するメリット

NETIS技術を積極的に建築工事に活用するメリット
公共工事等で活用する新技術をまとめた新技術情報提供システム「NETIS(ネティス)」と呼ばれるデータベースをご存知ですか? 国土交通省が新技術情報を一般に公開し、新技術の活用を推進する目的で運用しているシステムです。
国や県発注の公共工事の入札で、対象となる技術や商品を使うと加点対象になります。

「わが社は民間工事専門だから関係がない」と思われる企業様も存在するようですが、公共工事に関係しない施工者や設計士にも非常に役立つ情報源の一つです。
NETISが単純な商品紹介サイトではない理由と、今後の建築工事に及ぼす大きなメリットについてまとめさせて頂きました。

NETISが担う役割とは何か、なぜNETISを積極的に活用すると良いのかについて紹介させて頂きます。

1.建設業界が抱える今後の大きな問題

NETIS技術を積極的に建築工事に活用するメリット

「NETIS」について説明する前に、「i-Construction(アイ・コンストラクション)」という言葉をご存知でしょうか。
i-Constructionとは、国土交通省が掲げる生産性革命プロジェクトのうちの一つで、測量から設計、施工、検査、維持管理に至る全ての事業プロセスでICTを導入することにより建設生産システム全体の生産性向上を目指す取組みです。

各種メディアでも報じられているように、建設業界は深刻化な人手不足に陥っています。 少子高齢化と労働人口の減少も加わり、今後ますます人材確保が難しくなるといわれています。 供給側の人口減少に反して建設需要は高まりつつある中、2014年度には153万人もいた50歳以上の技能労働者のうち7割以上に該当する110万人が2025年までに離職すると予想されています。
逆に29歳以下の若年労働者は全体の10%以下となっています。
この深刻化する人手不足解消のために「i-Construction」がスタートしました。

特に
「ICTの全面的な活用(ICT土木)」
「規格の標準化(コンクリート工)」
「 施工時期の標準化」
の3つが「トップランナー施策」として定められています。

建設業の中でも、特に土木系のICT化の遅れを促進させるための政策ではありますが、建築系も決して他人事ではありません。
人材確保が難しくなる昨今の状況の中、作業の効率化や情報共有とICT化は重要なキーワードになっています。 「NETIS」もICT化の重要な役割を持ちながら、優れた技術や商品を共有化して市場に広める目的があります。


2.さまざまな分野で進むICT化の波

NETIS技術を積極的に建築工事に活用するメリット

インターネットの普及と通信端末の急激な進化によって、さまざまな業務や作業が飛躍的に効率化されました。 現在では、必要な情報を単に閲覧できるという機能だけでなく、ITにコミュニケーションの要素を含めたICT(情報通信技術)が幅広い分野で業務改善に貢献しています。
ICTとはInformation and Communication Technologyの略で、通信技術を活用したコミュニケーションを指し、インターネットのような通信技術を利用した産業やサービスなどの総称です。 ネットワーク通信を利用した情報や知識の共有を重要視し、さまざまなものがネットワークにつながって手軽に情報の伝達や共有が行える仕組みです。 このICTは単純に端末や機器の導入だけを指す言葉ではありません。 実際に活用されているICTの事例をいくつか紹介しましょう。

教育

パソコンやタブレット端末を操作して授業を楽しくするだけでなく、生徒情報の管理や資料作成の簡易化にも利用されています

農業

農業の分野では、農機ロボットの自動操縦技術や収穫作業などの自動化が行われています。 カメラやセンサーを利用しての画像分析、自動飛行ドローンによる農薬散布、作物の自動収穫を行なうロボットなどがあります。 収穫された作物の選果や箱詰めから荷物の運搬など、さまざまな目的と用途に合わせてロボットが使われています。
さらにAIと組み合わせることで、最適な収穫時期の選定までロボットに任せる取り組みも進められています

林業

ICT林業は国産材の安定供給体制の構築の切り札として注目されています。
木材生産を効率的に行なうため、航空レーザー測量や地上レーザー測量による森林資源調査、ドローン活用なども研究が進んでいます。 出材情報や出荷情報なども市町村レベルのシステムと林業事業体がシステム連動を始めています。

漁業

スマートブイやドローンを利用して海のデータを収集して魚群を発見しています。
航路標識として海に浮かべられている「ブイ」にさまざまなセンサーを取り付けたものが「スマートブイ」です。 スマートブイは各種データを常時収集し、上空の人工衛星に送信しています。
さらにドローンによる空撮情報を加えて、海の色や波の高さなどのざまざまな情報が入手できます。 魚群探知だけでなく、赤潮による被害を防ぐ効果にも期待が寄せられています。


3.NETIS技術は建設業界を救えるのか

NETIS技術を積極的に建築工事に活用するメリット

さまざまな分野で進むICT化の波ですが、建設業も悠長に構えている場合ではありません。 とはいえ、建設作業のすべてをロボットによる自動化可能なレベルには至っていないのも事実です。 職人による現場での手作業といった従来の作業スタイルに委ねる仕事も多く、職人技と呼ばれる粘着性の強い専門技術を自動化させるのはもう少し時間がかかりそうです。

技術面で高いハードルが存在する建設業ですが、有効な情報を共有化して市場に広げていくことは可能です。 その一つが「NETIS」の存在です。
NETISは公共工事の評価対象として扱われていますが、優れた技術や製品を市場に普及しやすくさせているシステムです。

NETISの運営は国土交通省が行っていて、各企業が自社の優れた製品や技術を申請します。
申請が受理されてNETISに登録された技術は、原則として5年間閲覧可能な状態となります。 さらに、高性能な技術であると評価された場合は最大10年まで掲載期間を延長される場合があります。

NETISの評価情報は、その技術が「直轄工事」などで活用されて、発注者と施行者が「活用効果調査表」を5件以上提出しなければならない決まりです。
有効的に使われるほど評価が高くなり、さらに活用される可能性が高まる仕組みです。
有益な技術や製品を利用することによって、工期短縮やコストダウンの可能性が広がります。


4.施工業者から見たNETISのメリット

NETIS技術を積極的に建築工事に活用するメリット

建築工事業者から見たNETISのメリットについて見てみましょう。
公共工事に携わる企業であれば、NETIS登録技術を利用することによって工事成績評定や入札契約の総合評価方式で加点されることがもっとも大きなメリットといえるでしょう。 NETIS新技術を使用することにより工事成績表定点に加点されるため、次回の入札で有利になる可能性があります。

また、公共工事に関与しない施工者でもNETISを利用するメリットは多く存在します。
特に隠れた逸品の検索や情報共有には最適です。

良い技術や商品は、工事の品質や安全性の向上、業務の効率化、コスト削減などに大いに期待できます。 評価が高いものほど実績が正当に評価されているため、新技術の採用時のハードルを下げることが可能です。
コストダウンや工期短縮は建築工事で常に課題として取り上げられますが、特に工期はコストに直結するため、いかに効率的に作業を進められるかが重要な要素となります。
評判の良い技術や商品を利用することによってコストダウンや工期短縮が実現できれば、施工業者にとっては大きな恩恵となるでしょう。


5.現場で使えるオススメNETIS商品の一例

NETIS技術を積極的に建築工事に活用するメリット
NETISには数多くの新技術情報が掲載されていますが、その中で建築関係に使える実際の技術を2つ紹介します。

ウォータークリーン工法(集塵装置付超高圧水洗工法)

アスベスト含有した外壁塗材や素地調整材の除去をどう対処されていますか?
従来のグラインダー等を利用した削り取る工法や薬品を使用して溶かし取る工法では「健康被害」「環境汚染」「作業負担」「工期遅延」などが大きな問題でした。 これらの問題を解決するために誕生したのが「ウォータークリーン工法」です。

100〜245MPAの超高圧水をウォータージェットポンプで発生させ、湿潤、噴射、剥離、吸引を同時に行いながらアスベスト含有材を飛散させずに剥離する新技術です。 吸引したアスベスト剥離物は外気に触れずに自動分別処を行います。 水のみを使用する工法のため環境汚染が発生しません。

アスベスト処理に頭を悩ませる施工者も多いようですが、精度の高さや環境汚染防止も含めて導入されてはいかがでしょうか。 狭小部や入隅などの難しい部分にも施工可能です。

コンクリート劣化防止工法「ファインクリスタルS&TOP」

「ファインクリスタルS&TOP」は表面に液体ガラス系材料を含浸させることにより、コンクリートの劣化抑制や表層部緻密化等の改質効果を与える液体ガラスを用いた新しい表面含浸工法です。
コンクリート構造物の維持管理に期待できる技術です。


6.まとめ

いかがでしたか。 公共工事を扱う施工者であればNETISの利用は必須ともいえますが、民間工事や小規模工事を専門とする施工者でもNETISに登録された優れた技術を通常業務に有効的に活かすことが可能です。

良い技術や商品はコストダウンや工期短縮をはじめ、安全性や作業の効率化に大きな影響を与えます。 無料で新技術を検索できるうえ、NETISは法人個人を問わず利用することが可能です。

現在3000点あまりが登録されていて、今後はさらに増加と新技術の向上に期待が寄せられています。 自社の施工スタイルに合わせて新技術を有効的に取り入れてはいかがでしょうか。
一社一社のNETIS利用が大きな輪になり、新技術によって建設業界全体が向上する日が楽しみです。


著者(田場 信広)プロフィール

・一級建築士、宅地建物取引士

・建築設計、工事監理、施工(大工)、戸建て木造住宅の新築からリフォーム全般、分譲マンションの内装改修、マンションの大規模修繕工事の設計・設計管理、警察署の入札仕事や少年院の特殊な工事も経験

・某資格学校にて2級建築士設計製図コースの講師を6年務める







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