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掲載:2020年02月27日 更新:2020年11月13日

「不燃材料」を理解すれば、様々なメリットが見えてくる

不燃材料はとても有用な建材ですが、その性能やポテンシャルを十分に引き出すためには、不燃材料自体や関連する法律などもある程度理解しておく必要があります。
この記事では、

・不燃材料の定義
・不燃材料に関係する法律
・不燃材料を活用することによるメリット

についてご紹介します。

知っておきたい不燃材料の基礎知識

「不燃材料」の定義

不燃材料について、建築基準法施工令の第108条12号では、通常の火災の際に、

・燃焼しないものであること
・防火上有害な変形・融解・亀裂その他の損傷を生じないこと
・避難上有害な煙またはガスを発生しないものであること

と定義されています。 同法はこの性能を発揮する時間的な限界も定めており、

・「不燃材料」は20分間
・「準不燃材料」は10分間
・「難燃材料」は5分間

という定められた時間、上に挙げた性能を発揮することが認められなければなりません。
(※準不燃材料、難燃材料については建築基準法施工令第1条の5〜6号を参照)

「不燃材料」の認定方法

不燃材料に関する建築基準法の別の部分(建築基準法 第2条の9号)を読むと、不燃材料は、

・「国土交通大臣が定めたもの」…つまり、すでに規定されている
・「国土交通大臣の認定を受けたもの」…規定に含まれていなくても試験して認定できる

ものである、とも説明されています。 上記の「定めたもの」が意味するものは「建設省告示第1400号」で定められたもので、この告示では、

・コンクリート ・瓦 ・陶磁器製タイル ・グラスウール板

などの17種類の素材が建築物に使用される不燃材料として定められています。

この告示に含まれていない、メーカーが独自に開発した新素材・新製品など(例えば、不燃木材やサイディングなど)は、個別に試験して十分な不燃性能が確認できれば、国土交通大臣が「不燃材料」として認定してくれる、というわけです。 不燃材料の性能試験は「コーンカロリーメーター」という機械で行われ、試験体がどの程度燃焼しにくいか、有害ガスや煙は発生しないか、などが綿密にテストされます。



不燃材料に関係する様々な法律

不燃材料に関しては調べれば調べるほど複雑で、非常にわかりづらいと感じる人も多いかもしれません。 不燃材料に関連する情報がわかりにくく感じられる要因の一つは、「不燃材料」や「防火」など、火災に関連する法律や規定が複数、しかも様々な法律に分けて定められている点でしょう。 それら不燃材料にまつわる法律をわかりやすくするため、関係する3つの主要な法律、

・建築基準法
・都市計画法
・住宅品質確保促進法

の中で、不燃材料や防火に関連するどのような規定があるかを下記にまとめます。

①建築基準法の「内装制限」

私たちの身近なところでとりわけ不燃材料が関係するのは、建築基準法施工令第128上などで指定される「内装制限」でしょう。 この法律に基づく内装制限では

・特殊建築物(病院・ホテル・百貨店・映画館等)の通路や階段室など
・窓その他の開口部のない無窓室
・キッチンその他の火気を使用する部屋

などの壁・天井は、多くの場合不燃・準不燃材料によるものとしなければなりません。
キッチンとリビング・ダイニングとの間に間仕切りや垂れ壁がなく、同一の空間であれば、リビング・ダイニングも火気を使用する部屋とみなされ、壁・天井は不燃・準不燃材料とする必要があります。
(※これらの規定は広さや建物の構造によって細かく設定されていますので、実際に当てはまるかどうかは個別に調べる必要があります。)

②都市計画法による「防火地域の指定」

地域一帯を火災から守るため、都市計画法第9条20項に基づいて防火・準防火地域に指定されているエリアでは、一定以上の延べ床面積・階数を超える建物は耐火建築もしくは防火建築とすることが求められます。 都市計画法自体はその名の通り「都市」の発展や安全性のための法律であり、建物の構造や施工方法について細かく規定するためのものではありませんので、建築分野のルールを細かく定めた建築基準法と合わせて理解する必要があります。 簡単に説明すると、

・「耐火建築」…火災になっても燃えにくく倒壊しにくい建物
・「防火建築」…近隣の火災が燃え移りにくい建物

と定義できますが、これらの建築物で重要なのは建物の構造で、建物を耐火・防火構造とするには建築基準法施工令第107〜115条などで指定された構造とする必要があります。

この点で、不燃材料は素材自体の燃えにくさの指標になりますが、不燃材料をたくさん使えば耐火建築が出来上がるというわけではありません。
しかし、不燃材料を効果的に利用する綿密な設計と高度な技術があれば、木造建築を耐火・防火構造とすることが可能になります。

③住宅品質確保促進法の「日本住宅性能表示基準」

「住宅品質確保促進法(通称「品確法」)」が定める「日本住宅性能表示基準」では、家を建てる人・家に住む人が、建てる・買う建物の品質を客観的に見定められるよう様々な基準が明示されています。
その基準のうちの一つが「耐火等級」で、住宅の各部がどの程度火災に強いのかを4段階で表しており、住宅(共同住宅含む)の開口部以外の界壁・界床部分では、

・耐火等級4…火熱を遮る時間が60分相当以上
・耐火等級3…火熱を遮る時間が45分相当以上
・耐火等級2…火熱を遮る時間が20分相当以上
・耐火等級1…その他

となっています。

この基準は主に、家を建てる人・家を買う人のためのもので、「耐火等級」という単語は建築基準法には出てきませんが、建材メーカーの中には「耐火等級」を防火構造・耐火構造のための1つの指標として提示しているメーカーもあります。

不燃材料が生み出すメリット

不燃材料を活用することにより、建築や住まいに関連する下記のようなメリットが期待できます。

建ぺい率の緩和を受けられる

2019年の建築基準法改正により、

・防火地域における、耐火建築物と延焼防止建築物
・準防火地域における、準耐火建築物と準延焼防止建築物

に関しては10%建ぺい率の緩和を受けられるようになりました。

建ぺい率は建築面積に対する制限ですので、延べ床面積は改正前と比べると10%×階数分に拡張可能になり、この緩和を活用すれば容積率の範囲内で土地を大幅に有効活用できるようになります。


火災保険料の減額を期待できる

防火性能がある建物であれば、火災保険をかける際にも保険料を減額できる可能性があります。
保険会社は建物の構造等級というものを定めており、一般的に通常の木造住宅は最も火災保険料の高い等級に該当しますが、「省令準耐火構造」と認定された木造住宅は「T構造」という等級に該当し、保険料は通常の木造建築よりも安く、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の住宅と同程度の保険料になります。

T構造に該当するかどうかは「住宅金融支援機構」が定める基準に基づいて判断されます。
耐火・防火構造のために重要な部分である屋根・外壁材を取り扱う建材メーカーの中には、T構造の基準に適合する不燃材料をラインナップしているメーカーもあります。

まとめ

不燃材は建物自体を火災から守るだけでなく、地域全体の火災への強さを向上させるポテンシャルを持っています。 不燃材料に関連するルールや規定は決してわかりやすいものとは言えませんが、大まかにでも理解したうえで活用すれば、様々なメリットを期待できるでしょう。


著者(澤田 秀幸)プロフィール

CAD利用技術者1級、CADアドミニストレーター
住宅メーカの下請けとして木造大工作業を担当。
注文家具の製造と設置。製図補助を担当。
国内最大手インテリアメーカーの店舗で接客・販売を担当。







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