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掲載:2021年04月01日 更新:2022年04月27日

水害対策のために、建築ができること

日本において、自然災害の発生件数やレベルは徐々に深刻化している様子が観察できます。
人間に自然災害や天候をコントロールする能力はありませんが、万が一災害が発生した際にも、まずは人命、さらに財産を可能な限り守るためにはできることがあり、そのためには建築物が重要な役割を果たします。

・水害対策を真剣に考えるべき理由
・水害対策を計画する上で調査すべき情報
・実際にどのような水害対策を講じられるか

の2種類が挙げられますが、これらは相互に深く関わり合っている要素でもあります。
つまり、環境が温暖化のような良くない方向へ変化し続ければ、それだけ各住宅の住み心地も悪くなり、最悪のケースでは健康に悪影響が出始めることも考えられるでしょう。
についてご紹介します。


2019年、水害の被害総額は2兆円を超える


国土交通省のまとめによると、2019年の水害による被害総額は2兆1500億円と、1961年に統計を始めて以降、最大の被害額となりました。
鉄道や道路などの公共の交通機関や施設も大きく被害を受けましたが、被害総額の内訳の大部分を占めるのは個人の住宅や家財などで、これら一般資産の被害額は約1兆6000億円、被害総額の約4分の3にあたります。

ここ数年の推移を見ると、水害の発生件数や被害の規模は大きくなる傾向にあります。 地球温暖化による気候変動の影響により、時間雨量50mmを超える短時間強雨の発生件数は約30年前の平均と比較すると約1.3倍増加しており、過去10年間で日本全国の1742の市区町村のうち98%以上で水害や土砂災害が発生しています。

さらに、被害を受けた建物は約10万棟でしたが、そのうちの約半数にあたる5万棟ほどは床下浸水の被害でした。 つまり、比較的対策の取りやすい床下浸水を防ぐ策を講じるだけでも、かなりの効果を期待できます。


水害は地震や火災などの対策と異なる


水害への対策を考えるにあたり、まずは地震や火災などの災害と比較してみましょう。

水害を想定した単体規定は存在しない

建物を建てる上で避けて通れない建築基準法では、地震に対しては耐震強度、火災に対しては耐火性能という建築物単体に求められる一定の基準がありますが、建築基準法は水害に対しての強度などの規定を設けていません。
それで、施主や設計者は法律の条文によらず、周辺地域の状況や建物の用途などを考慮に入れた水害対策を自主的に検討することが大切です。

水害の発生は高い精度で予測が可能

火災の発生は予測できず、地震もまだまだ正確に予知できる段階には至っていませんが、水害に関してはある程度の正確さで発生を予測することが可能になっています。
また、天気予報や目に見える降水量などで、「災害が起きそうだ」と実感できる状況になってから実際に災害が発生するまで、ある程度の時間的な余裕がある、という点も地震・火災との違いとして挙げられるでしょう。


水害対策のためにまず調べるべきこと


水害対策をどの程度検討すべきかについては、少し時間をとって調査するだけでも多くのことがわかります。 建物の新築やリフォームを計画する段階で、計画している土地と水害の関連を調査してみましょう。
下記に挙げる情報はどれもインターネット上で簡単に調べることができるものです。

どのような地形に建てるか

建物がたっている、または建てようとしている土地がどのような特性を持つのかを知るためには、国土地理院が提供している「治水地形分類図」を参照にできます。
特定の土地が埋立地・扇状地・氾濫平野にあたるかなど、水害対策を考える上での重要な情報を簡単に確認することが可能です。

過去に浸水の被害があったか

各自治体が公表している「浸水実績図」を見れば、過去数年間にどこでどのような水害が発生したかを確認できます。

今後、どのような被害が予測されているか

各都道府県が公表している「浸水想定区域図」を確認すれば、土地ごとにどの程度の水害が予測されるかも確認することができます。 この浸水想定区域図では、記録的な豪雨に見舞われた際にどの土地がどの程度浸水するかを予想される浸水深ごとに色分けして表示されています。


水害対策のために建築ができること

人命のための避難経路を考えておく

家屋の浸水を止めることが難しい場合でも、少しの工夫や小規模なリフォームで、万が一、床上浸水に見舞われた際にも助かる確率をアップさせる方法はたくさんあります。
火災や地震など、多くの災害が発生した際の避難経路は水平方向になりますが、水害が発生した際の避難経路は多くの場合垂直方向、つまり一階から二階、二階から屋根の上といった、できるだけ高い位置への避難になります。

可能なら、二階にもトイレ・バスルーム・キッチンを備える

床上浸水が始まれば、二階に避難しなければならなくなります。 侵入してきた水が捌(は)けるまでには、何時間もかかるケースも多いため、水害対策としては、二階で長時間過ごすことを想定した設計にしておくことも大切です。 トイレ・バス・キッチンを二階に備えておけば、一回が水没した状態で救助を待たなければならない場合にも、不便をしのぎやすくなるでしょう。

二階にも大きめの開口部を

浸水深が1〜2m程度に達すると、一階にとどまることはできず、救助はおそらくボートで行われることになります。 そのための脱出経路はベランダか、窓からの脱出になりますが、二階部分にベランダやバルコニーがなくても、窓を大きめにしておけば、脱出は比較的安全で容易なものになるでしょう。

最悪の場合、屋根にも登れる避難経路を

浸水が二階のフロアラインに達するなら、屋根の上への非難を余儀なくされます。 ベランダやバルコニーがあるなら、屋根の上に上るためにハシゴを用意しておくか、屋根に天窓のような脱出口を設けることも検討できるでしょう。

物的被害を最小限にとどめる

水害から大切な財産を守るという使命を果たすためにも、建築物は計画的な対策を講じている必要があります。 一般的に、建物を新築する場合の水害対策としては、

・盛り土によってGL(グランドライン)を上げる
・1階部分をピロティとする

などの対策が取られますが、そのほかに下記のような水害対策も検討してみましょう。

防水扉・防水板の設置

日本でも江戸時代から治水の一環として、通行のための堤防の切れ目などに板をはめ込んで水を堰き止める陸閘(りっこう)が存在していましたが、同様の構造による水害対策は現在でも有効です。

代表的なものが建物の開口部やゲート付近などに設置する防水板で、日軽エンジニアリング株式会社の「手動跳ね上げ式防水板」のような地面に埋設する跳ね上げ式の防水板や、豊和工業株式会社の「ミズガード」のように堅牢な防水性能を持つドアを開口部などに設置することにより、敷地内・建物内への水の侵入を防ぎます。



また、有限会社トラッドの「止水バーン」のように、いざというときに女性一人でも簡単に設置できて簡易的に水の侵入を防ぐための道具もあります。
トラッド
関連ページ:止水バーン「水」止まるんです。ハイ!

床下ドレインの設置

一般的な木造住宅の基礎の構造は、基本的に浸水した際の排水については考えられていません。 そのため、水害の際に浸水深が床上に達すると基礎の中に水が溜まったままになってしまいます。 ただし、単に基礎に排水用の穴を開けておくだけでは、ほんの数センチの水深でその穴から水が侵入してしまうことにもなります。

それで、株式会社WASC基礎地盤研究所の「床下勝手に排水ドレイン」のように、外からの水圧には抵抗し、内側から水圧がかかった時だけ水が通る床下ドレインを基礎に設置しておけば、万が一床上浸水で基礎に水が侵入してきた時にも、水害の水がはけると同時に効率的に排水することが可能になります。

まとめ

水害は、発生する場所や時期などがある程度予測できるため、様々な災害の中でも比較的対策を講じやすい災害です。 建物を建てようとするエリアが水害の恐れがある場所であれば、躊躇せずしっかりとした対策を講じておきましょう。


著者(澤田 秀幸)プロフィール

CAD利用技術者1級、CADアドミニストレーター
住宅メーカの下請けとして木造大工作業を担当。
注文家具の製造と設置。製図補助を担当。
国内最大手インテリアメーカーの店舗で接客・販売を担当。







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