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掲載:2022年11月11日 更新:2022年11月11日

正しい結露対策で人も住まいもより健康に

住まいの結露は健康に悪影響をおよぼすカビ・ダニなどの発生に繋がり、構造材や壁の内部などの腐食の原因にもなってしまいます。
この記事では、冬だけでなくエアコンを多用する夏場にも気をつけたい住まいの結露に関して、

● 結露はなぜ、どのように起きるか
● 結露を防ぐための温度と湿度のコントロール

というポイントについてご紹介します。


結露が起きるメカニズム、そして対策方法

住まいの結露は原則として、

● 屋内空間の温度を均一に保つ
● 屋内空間の湿度を安定させる

という方法で対策します。
なぜこのような方法が有効なのか、まずは結露が発生するメカニズムを確認しておきましょう。

結露はキャパシティオーバーになった空気中の水分


結露に大きく関係するのは湿度ですが、湿度は常に熱とセットで考えなければなりません。 空気が含む水分量の上限、いわばキャパシティは、気温によって異なります。暖かい空気はより多くの水分を含むことができるのに比べて、冷たい空気は少量の水分しか含むことができません。

わたしたちが通常使う「湿度」という言葉は正確には「相対湿度」のことで、言い換えると「空気のキャパシティに対して何%の水分を含んでいるか」を表す数値です。たとえば『20℃の空気の湿度50%』と『10℃の空気の湿度50%』は同じ『50%』でも空気中の水分量は大きく異なる、ということになります。
つまり『空気中の水分量が一定の場合、気温が下がっていくと相対湿度は上がっていく』ということです。それで、気温が下がり続ければどこかで湿度100%を超えることになり、そのようにしてキャパシティオーバーになった空気中の水分が「結露」となって表れる、これが結露発生のメカニズムです。

温度差があると「暖かい側」が結露する


隣り合う空間に温度差がある場合、その空間を隔てる壁や窓の「暖かい側」に結露が生じます。冷たい水が入ったコップの“外側”に結露が生じるのをイメージするとわかりやすいでしょう。
住まいに関してこの現象は、

● 冬場にヒーターを使用すると、壁・窓の『屋内側』が結露
● 夏場にクーラーを使用すると、壁・窓の『屋外側』が結露

という形で現れます。さらに厄介なことに、夏場・冬場のどちらでも、屋内・屋外に温度差がある場合には壁面内に『内部結露』が生じやすくなります。

結露対策①:断熱性を向上させる

結露対策として室内空間の温度を均一に保つ、つまり一つの空間内に温度差が生じないようにするには、住まいの断熱性能を向上させるのが効果的です。
戸建て住宅では、主に下記のような場所・比率で熱が逃げてしまいます。

● 窓・ドアなどの開口部…【約50%】
● 外壁…【約20%】
● 床…【約10%】
● 換気…【約20%】
● 屋根…【約5%】

熱が逃げた場所では温度が下がり、そして生じた温度差が結露につながるので、これらの場所の断熱性能の向上は有効な結露対策になります。

開口部の断熱


熱がもっとも逃げやすいのは窓・ドアなどの開口部です。窓の断熱性が低いなら全面的な交換が最も効果的ですが、内窓の追加やガラス戸部分をペアガラスのものに交換するだけでも断熱効果は上がり、結露を抑えられるでしょう。


外壁の断熱


断熱性が低ければ外壁の表面や内部に結露が発生します。外壁で一部分だけ塗装の劣化が進んでいたり、カビやコケが生えていたりするなら、外壁内部に断熱材が入っていないか、グラスウールなどの断熱材が外壁内でずれ落ちている可能性があります。
そのようなケースでは断熱性を回復・向上させるリフォーム工事は大規模になりますが、外壁の劣化だけでなく内部結露による構造材の腐食などのリスクもあるため、早く対応した方が得策かもしれません。

外壁の断熱リフォームでは外壁内部に断熱材を充填するか、外壁材の下地に外張り断熱材を張ります。内部結露の予防のためには防湿シートの施工も欠かせません。


床・屋根・天井の断熱


床は床下から、屋根は屋根裏から吹き付け式の断熱材を施工することができます。この方法では床や天井を撤去したり大きく剥がしたりすることなく断熱性を向上させられます。
天井裏に断熱材(グラスウール)を敷き込むのも効果的ですが天井だけ断熱する場合には天井裏空間の換気も計画する必要があります。

高気密住宅なのに結露が生じている場合


住宅の性能は年々高まっており、高気密性は今や住宅の標準の機能となっています。「高気密住宅」はどことなく結露しにくいようなイメージがあるかもしれませんが、高気密でも断熱性が低ければ結露を効果的に防ぐことはできません。
高気密住宅なのに結露がひどいという場合には、家の断熱性能をチェックしてみるのも一つのよい方法です。断熱性の診断は工務店などが無料で行っているケースもありますし、専門業者では専用の機材でしっかりデータを取りながら断熱性能を測定する10万円程度の有料診断プランを用意しているところもあります。

結露対策②:湿度を安定させる

現代では快適に過ごすためには相対湿度40〜60%が理想とされていますが、冬に気温が低い場合は相対湿度はもう少し高めでも良いかもしれません。相対湿度によって人体や住まいに下記のような悪影響が出る可能性が高まるため、湿度を適切に保つことはとても大切です。

● 相対湿度65%以上(夏場):カビが発生しやすくなる
● 相対湿度95%以上(夏場):細菌が増殖しやすくなる
● 相対湿度40%以下(冬場):ウイルスが飛散・残存しやすくなる

住まいの相対湿度を安定させるには下記のような方法があります。

湿気の発生源近くを換気・除湿する


湿気が発生するキッチン・バスルーム等にしっかり換気・除湿できるシステムを設置しておけば効果的な結露対策となります。
特にバスルームは日当たりが悪く冷えやすい北側に配置されることが多く、湿度が高いうえに温度差も大きくなりやすいことから、特に結露に注意すべきスペースです。バスルーム周りで内部結露が発生すると、木造では高確率でシロアリ被害にもつながってしまいます。
キッチンにはかならず換気扇が設置されていますが、バスルームには換気扇に加えて浴室乾燥機などのシステムも設置されていることが望ましいでしょう。

調湿機能のある内装材を選ぶ


内装に調湿性能の高い内装材を採用すれば、室内の湿度を一定に保ちやすくなります。調湿性能がある建材は、湿度が高くなれば湿気を吸収し、湿度が低くなると湿気を放出します。
日本で古くから建材として使用されてきた木や漆喰(しっくい)などには高い調湿機能が認められ、結露対策として有効です。木や漆喰そのものでなくても、それらの調湿する性質を応用した壁紙内装用パネル材などもあります。

部屋の中に観葉植物を増やす


内装材を調湿機能のあるものにリフォームするのが難しい場合は、室内に観葉植物を多めに設置するという結露対策もあります。
生きた植物は呼吸し湿気を吐き出しているので冬場に相対湿度が下がりすぎることを防いでくれますし、加湿器のように過剰に湿度が上がってしまうこともありません。 ただし室内に植物を増やすと夏場は相対湿度が高くなりがちなので、エアコンによる除湿が必要です。

まとめ

結露はしっかり対策していれば大幅に抑えることができます。結露が生じにくい住環境は快適で健康的なものになります。この記事でご紹介したような結露の生じやすい条件を覚えておけば、適切な結露対策をとりやすくなるでしょう。


著者(澤田 秀幸)プロフィール

CAD利用技術者1級、CADアドミニストレーター
住宅メーカの下請けとして木造大工作業を担当。
注文家具の製造と設置。製図補助を担当。
国内最大手インテリアメーカーの店舗で接客・販売を担当。







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