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掲載:2022年02月07日 更新:2022年02月07日

特殊環境である「病院設計」においては、早期に「もの決め工程表」を作らないと大変なことに

設計者の方で施工前に、ちゃんともの決め工程表を作っている人はどれくらいいるのでしょう。
間取りはこのときまでに、色はこのときまでに、といったざっくりとしたスケジュール感はきっとお持ちだと思います。
然しながら、もの決め工程表を初期段階から早急に作っておかないと、プロジェクトが失敗する可能性を秘めているのが病院設計における現実です。

というわけで、この記事の結論は、以下の通りです。

病院設計では早めに「もの決め工程表」を作ろう


病院設計では早めにもの決め工程表を作らないととても困る

特殊環境である「病院設計」においては、早期に「もの決め工程表」を作らないと大変なことに
さっそく結論ですが、病院の設計において早めから「もの決め工程表」を作っておかないと大変なことになるというのは下記に挙げる3つの理由からです。

1.マイルストーン(達成ポイント・中間目標)までに医療機器が納品できない
2.構造設計が変わる
3.工事の内容が変わる

順番に解説しましょう。


理由1:マイルストーンまでに医療機器が納品できない

もの決め工程表がないと、ものを決める順番が整理されていないため、重要そうなものから順番に決めざるを得ないことになります。 しかし、一見重要に見えるものの順番と、実際に医療現場における機器の設置など、必要になるものの順番が違ってくることがあります。

たとえば、内装の壁仕上げができあがってから、リニアックをここに配置したいと言われても困ります。 なぜなら、リニアックを配置するにはリニアックから出る放射線を遮断するために、コンクリートの厚さを調整したり鉄板を埋め込んだりする必要があるからです。
あまり深く考えていない関係者だと、部屋ができてからでも医療機器の配置を変えるだけで部屋の移設ができると思っている人がいます。これは設計者もある程度、医療機器に関する知見がないと判断が難しいところでしょう。

コンクリートができてからリニアックの増設を決定してしまうとコンクリートの躯体を壊して作り直すことが必要になります。 そうなると、もともと予定した期間では仕上げ工事が終わらないためプロジェクトが頓挫してしまいかねません。

マイルストーン(達成ポイント・中間目標)を守ることの重要性


建設のプロジェクトにおいてマイルストーンを守ることはとても重要なことです。
マイルストーンを守るということは、その建設プロジェクトの成功を左右する鍵である、といっても過言ではありません。

たとえば、夏休みの宿題は夏休みが終わるまでに完了させると決まっています。ところが、多くの人は夏休みの終わる最後の日に泣きながら宿題をする羽目になりがちです。結局宿題が期日までに終わらないという結末が待っています。
宿題をちゃんと夏休み終了までに滞りなく終わらせるには、途中の中間目標を達成できるかがポイントです。マイルストーンを決めて達成していれば、多少進捗がずれたとしてもそこまで無茶なスケジュールにはなりません。最後の追い込みでちゃんと終わります。
中間目標を決めなかったり無視したりすると、待っているのは宿題が終わらないという結末です。宿題が終わらなければ学校が始まっても夏休みの宿題をする羽目になります。

これは建設のプロジェクトでも同じことが言えます。
設計をして工事をして建物を完成させるというプロジェクトは、

・概要を決めて、
・詳細を決めて、
・決めたとおりに作って、
・キレイに仕上げて完成

です。 この流れは変わりません。ものが決まらないことには工事ができないのです。
工事ができなければ、当然建物は期日までに完成しません。
工事の前に「ものを決める」ことはそれほどまでに重要なことなのです。

<ケーススタディ>
工事のボーダーラインと医療機器・ダヴィンチの発注から納品までの流れ


工事をするためにはこの日までに決めないと終わらないというボーダーラインが存在します。
ボーダーラインが存在するのは

・工事に時間がかかる
・納品や設定に時間がかかる機器がある

という理由からです。

たとえば、建物の完成と同時にダヴィンチを稼働させたい場合を考えてみます。
ダヴィンチのような手術用機器の場合、発注から納品までで2ヶ月、納品してから手術までの設定で2ヶ月かかるのが平均的です。
建物の完成と同時にダヴィンチを稼働させたいなら、精密機器を動かして設定するわけですから、該当する部屋や空調は完成していないと設定ができません。
内装工事の期間が2ヶ月かかるとすると、ダヴィンチを発注する段階で壁の位置はもちろん、壁の仕上げやコンセントの位置や照明のスイッチの位置などすべてが決まっている必要があります。

この場合は、ダヴィンチ納品の2ヶ月前がすべての決め事が終わるボーダーラインということになります。

内装詳細決定(ボーダーライン)
   ↓   ←ダヴィンチ発注
内装工事開始
   ↓
   ↓(2ヶ月)
   ↓
部屋、空調完成
   ↓   ←ダヴィンチ納品

ここまでにもの決めが終わらなければ、ダヴィンチを発注しても納品できる状態にはなりません。


理由2:構造設計が変わる

工事の前に「もの決め工程表」を作ららなければならない2つ目の理由は、機器によって構造設計が変わるということです。
なぜなら、医療用機器は一般の建物の場合よりはるかに重量のあるものが多いからです。

想像を超える医療機器の耐荷重

医療機器は重たいもので500kgくらいあるものもあります。
CTは700kgありますし、遠心力が加わるので50Gもの重力がかかります。
そんな条件を加味すると、CTは装置の総重量は2トンほどを見込んでおかないといけません。

重い医療機器は構造設計に関わる

普通のコンクリートスラブの耐荷重は180kg/㎡ほどです。
事務室だと本をたくさん置いたりするので290kg/㎡ほどになります。
そんな床に2トンもの荷重がかかったら、さすがに壊れてしまうでしょう。
重たい医療機器が設置される床は、構造設計の段階で考慮に入れないといけません。

軽めの医療機器でも躯体にアンカーを仕込む必要が

また、床に設置しないタイプの医療機器でもそれなりに重量があります。
よく使われている無影灯でも20kgほどありますし、医療用のペンダントは350kgほどあるのが普通です。

そんな重いものを天井から吊り下げるのは非常に危険ですから、コンクリートにアンカーを仕込む必要があります。 コンクリートにアンカーを打ち込むので、コンクリートを打設するときには医療用ペンダントの配置まで決まっていることが必要です。配置が決まっていないとアンカーをコンクリートに埋め込むことができないからです。

簡単に考えていると、コンクリートの打設を終わってからアンカーが必要だと気付くことになります。その時ではもう遅いのです。


理由3:工事の内容が変わる

3つ目の理由は、医療現場という特殊事情により、工事の内容が変わる可能性があるのです。
たとえば、放射線を防護する、外部からの不要な電波を遮断する、超大型機器の搬入などの諸問題に対応した工事が必要となってくるからです。


放射線治療にはシールド工事が必要

レントゲンやCTなどで放射線治療を使うなら、放射線を防護するシールド工事を施します。
放射線が関係ない部屋に照射されないように間仕切り壁や建具を放射線防護用のものを使います。そうなると、間仕切り壁は鉛付のボードを使うため壁の厚さが変わりますし、建具は鉛入りの建具になるので製作できる会社も限られるでしょう。

この部屋は放射線治療をすると最初から決まっていれば、業者の選定もスムーズに進むので工事もスムーズに進みます。
しかし、途中で変更になれば業者の選定からやり直しです。


聴覚でも音波シールドが必要

聴覚を検査する部屋でも放射線シールドと同様に音波のシールド工事が必要になります。 検査の特徴により外部からの不要な電波を遮断しないと診療できないのです。 音波シールドができる工事業者も決まっていますから、放射線シールドと同様に早めに決まっていないと困ります。


大型医療機器は躯体工事前に納品しないと入らない

特に注意しないといけないのが大型の医療機器です。
あまりにも大型の医療機器だとコンクリートを打設したら搬入できないので、打設する前に搬入する必要があります。
そうなると、コンクリートの打設前に納品できるように決めないといけません。納期を考えると工事の契約をする前に発注していないと間に合わないケースもあります。
このように、物を決めるということは、構造設計にも医療機器の発注にも工事の内容にも大きく関わります。
病院設計では早めに「もの決め工程表」を作っておきましょう。


5.まとめ

この記事では 病院設計では早めに「もの決め工程表」を作ることで、より正しいプロジェクト管理を行えることを具体例を挙げて説明しました。
簡単にまとめると以下の通りです。

理由1:もの決め工程表がないとマイルストーンまでに医療機器が納品できない
理由2:構造設計が変わる
理由3:工事の内容が変わる

以上、病院設計におけるプロジェクト管理のポイントをお伝えしました。


著者(きくりん)プロフィール

ゼネコンで一級建築士&一級建築施工管理技士業務

「一級建築士への道」記事執筆 






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