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建築何でもQ&Aチャンネル

2022-11-14 01:10:03
築約20年の木造一軒家の屋根裏収納の耐荷重について
個人
 さん
築約20年の木造一軒家の屋根裏収納部屋に本棚を置きたいのですが重さで床が抜けてしまわないか心配で質問しました。

屋根裏部屋のサイズなどは添付図の通りです。

世帯主の父が20年前にこの家を買った時「屋根裏には本を置くな」と言われたらしいのですが
ネットで調べると屋根裏も普通の部屋と同じように1㎡辺り180kgくらいなら大丈夫と書かれているサイトもあったりしてわからないので
建築基準法の耐荷重が屋根裏部屋にも適用されるのか
またそれ以外の要因などで駄目なことがあるのか
その他何かあるようでしたらなんでも構わないので
教えて頂きたいです。

それと築20年経っているため経年劣化などで厳しくなっているなどということもあるのでしょうか、
その場合どのように考えたら良いのか、
どのくらいの重量までなら安全圏で置いておけるのかどうかも加えて教えて頂きたいです。

すみませんよろしくお願いします。
回答
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1
【回答1】
 さん
建築基準適合判定資格者(建築基準法の審査・検査をする資格者)で、「きゅう」と申します。

ネットの情報は「一般的なこと」として書かれていることがほとんどです。

180kg/㎡以内にしたとしても、こちらのお住まいでも問題ないかどうかは、
現地調査でもしない限り、誰にもわからないことです。

現地調査をしないならば、その情報を元に自己責任で判断するしかないと思います。

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●先に結論を書きますと、

・建物の安全性は、重さがとても影響する(重要)

・重いものを置くならば、できるだけ建物の下階に置くのがリスクが低い

・建物の調査をしないならば(一般的にしないでしょうが)、重いものを置く場所の下
に、柱や太い梁がありそうな場所を考える

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建築基準法では、規模により複雑に規制がありますが、一般的な規模(*1)の
木造2階建てであれば、構造計算の義務はありません。

(*1:延べ面積500㎡、軒の高さ9m、最高の高さ13mを超える場合には、
木造2階建てでも構造計算が必要となります。)

構造計算を行わない場合には、建築基準法施行令第3章に基づき設計をしますが、
そこには筋かいや耐力壁の量(長さ等)は定まっているものの、これらは地震や
台風等に対する横方向からの力に対する安全性の検討です。

通常の状態で建物にかかっている重さを支えられるだけの柱があるか、その本数
などの制限はありません。

http://www.house-support.net/hou/kouzou_wj.htm
(これは参考程度)

柱の寸法も、一部、建築基準法施行令第43条で、柱の長さに対する最低の寸法が
定まっているものの、支えている部分の重さに対して安全かどうかは制限がなく、
梁についても同様に、法令上の最低寸法や材料等の定めはありません。

どの程度安全に設計するのかは、設計者の判断によります。

そちらのお住まいに、上階の重さを支えられるだけの十分な柱が入っているか、
もし入っているとしても、どこに入れているのかわからないと、安全か不明です。


基本的な知識として、まず、
建築基準法では、建物は2種類の力に対して安全であることを検討しますが、
その検討の対象となる力は

・【長期】に生ずる力
・【短期】に生ずる力

となります。(建築基準法施行令第82条)

長期に生ずる力はその名の通り、長期にわたって建物に作用するので、建物そのもの
の重さと、そこに載っているものの重さすべてです。(人間、家具等、設備機器など)

雪国などは、雪が溶けずに屋根に載っている期間が長いので、雪の重さも考慮します。

短期に生ずる力は、地震、台風や竜巻、大雪によって建物が押される力です。一時的
なので、短期です。


まず、長期に生ずる力の検討において、設計の段階で初めから書棚やピアノなどの
重量物を置くことがわかっている場合には、それを置く位置を考慮して設計します。

想定外のものを後から置くことが決まった場合には、設計者はその重さを考えて
いませんので、どこまで柱が耐えられるかは、お住まいの方が、自己責任で決める
しかありません。


次に小屋裏収納庫についてですが、
下記URLは調布市の取り扱いですが、全国的に、それぞれの行政がこのような取扱い
を定めていて、行政ごとにバラバラです。

この基準に適合する小屋裏収納庫ならば、その部分は「階」にならず、床面積にも
含めなくてよいことになっています。

https://www.city.chofu.tokyo.jp/www/contents/1452579578327/files/koyaura.pdf


例えば、ここの、
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⑷ 小屋裏物置等の床面積は,当該小屋裏物置等が存在する階の床面積の2分の1
未満であること。

⑸ 小屋裏物置等の最高の内法高さは1.4m以下であること。

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は、全国共通です。

この基準を超えている場合には「階」になりますので、建物の見た目がいくら2階建てでも、
それは、3階建て扱いとなります。

木造3階建ては、構造計算が必須になります。

構造計算をする場合には、柱・壁・天井・梁・屋根等の固定荷重(建物そのものの重さ)
や積載荷重(人間・家具・設備機器など載っているものの重さ)、積雪、地震、台風等
などを全て考慮して設計します。

小屋裏収納庫の取り扱い基準を守っていた場合、小屋裏収納庫は「階」ではないため、
構造計算ではなく、いわゆる「壁量計算」というものを行います。

壁量計算は簡易なチェック方法ですが、古い規定でもあり、当時想定していた建物の
重さと現在の一般的な建物の重さがそぐわず、壁量計算で設計した建物は強度が低い
ことがあると言われていたりします。

建築基準法の審査(確認申請や検査)では、小規模な木造2階建ての建築物の場合などは、
壁量計算などの建築基準法施行令第3章の審査・検査をしない部分(省略する)になって
いますので、結果、設計者が自己チェックすることになります。(審査・検査の特例制度)

小屋裏収納庫の構造上の取扱いは、建築基準法施行令の中で(正確にはH12建告第1351号)、
小屋裏収納庫の天井高さに応じて、各階の床面積を大きめに割り増して、地震等の横からの
力に対しての安全性の考慮をします。

https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/pdf/201703/00006443.pdf


ただし、通常時の建物の重さ(長期)に対しては柱の本数を増やすなどの規定はありません。

結局は、設計者の判断によります。

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●参考として動画のリンクを張りますので、ご参考にしてください。
(YOUTUBE


1、地震力は建物の重さで決まる

https://onl.sc/5MEfWsj

2、地震荷重のこと(一級建築士試験講座より)

https://onl.sc/7R5rPRy

3、地震荷重を超速で復習!(音量大注意。一級建築士試験講座より)

https://onl.sc/tuszkAP

4、周期で異なる建物の揺れ(0:33頃からの十円玉が書棚です)

https://www.youtube.com/watch?v=n-HtPKt36mI&ab_channel=SchoolPressSeDoc

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動画の内容は、

地震に対して「建物の強さ(安全性)は、建物重さは重要な要素」

というものです。

Q=Ci✕Wi は、地震による力(Q)の算出ですが、Wiが重さの部分です。

Ciは複数の要素で成り立っていますが、細かいことはさておき、ざっくり言えば、Ci=0.2
前後の数値になり、Q=0.2✕「検討しようとしている階よりも上の建物の重さ」となり、
Q:地震による力(横から押してくる力)は、建物の重さの20%位がかかることになります。

したがって(書棚の分)重さが大きくなれば、地震時にかかる横からの力も大きくなります。



先に書いた、「長期に生ずる力」も同様で、建物の重さに基づいて柱のサイズや種類を決定して
いますので、柱にかかる重さが増えると、もたなくなる=折れるリスクは発生します。

柱以外にも、その柱から力が伝わる部分=基礎、地盤等も重要で、当該部分が壊れるまでの余力
がどれくらいあるか?によります。

建物自体が問題ないとしても、その下の地盤が耐えられなければ、沈下したりして、家が傾こと
もあり得ます。

柱書棚を置こうとしている部分の下にある柱、それが壊れるのを仮に100として、現時点で、
もし90まで重さがかかっている場合、書棚を置いたことで101になったとしたら、壊れます。

100-90で余力は10と仮定していますが、実際の数値は、構造計算をしないとわかりません。

もっと言えば、構造計算をしていても、構造計算で想定している状況のように、どの部屋にも
「まんべんなく」ものを置くとは限らず、
また、大雪で雪が降ったとして、屋根に雪が乗ったまま溶けない部分と、太陽光が当たってすぐ
に溶け落ちる部分とで、屋根の重さに偏りが出たりします。

構造計算では、そういったことは普通考慮されていないので、すべて計算通りとは限りません。
(建物への力のかかり具合の極端な偏りによって、ある柱等に集中的に力がかかること等)

とはいうものの、構造計算では、材料が壊れる限界に対して3倍の安全率をみていますし(例
えば力がかかった場合に90が壊れる強度の部材だとしても、90÷3=30が許容される限界と想定
して設計する)、部材が壊れる強度にしても、そこにも既に安全率が考慮されているので、
余力はかなりあると思います。

建築確認申請が通ったら安全、とかではなく(最低の基準)、構造の設計者がどう設計するか
によって、建物ごとにかなり変わる部分です。

安全にすればするほどお金がかかりますので、最後は、かけられるお金と安全とのバランスに
なりますね。

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お父様のお聞きになったご助言は的を得ていて、上記の内容をご存知だったのか、感覚的にそう
思われたのか、他に何か理由があるのかはわかりませんが、後悔しないように、考慮はした方が
良いと思います。

上記の内容があるとしても、世間的には一般にデッドスペースの有効利用で小屋裏に収納庫を
設置しますし、置くべきではないとまでは言っていません。

物を置くにしても、置くなら出来るだけ軽いもの(邪魔になる大きなものなど)を選択する方が、
建物の倒壊等の安全上は、オススメだということです。

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