松尾和也 / 建築家 設計士インタビュー(断熱・デザイン・自然素材のバランス)| 建材ナビ

シリーズ建材ナビ
 
(有)松尾設計室 松尾和也

http://www.matsuosekkei.com/


 自分にとって一番大切なものは何かと問われたとしたら、私たちの回答は個々の価値観により多種多様なものになることでしょう。しかし、究極の回答ということであれば、殆どの人々にとって最も大切なものとは「健康な心と体で過ごす」ということに尽きるのではないでしょうか。当たり前のことですが、健康であれば働いてお金も稼げる、余裕もできる。心に余裕があれば人間関係もスムーズに運び、笑顔で過ごせる日々も多くなるわけですから。近年特に、あらゆる分野でそうした消費者の「健康志向」のコンセプトに沿った商品の開発が進んでいます。
 住宅の分野も例外ではありません。消費者のニーズも、高度に発展、成長を遂げた「機能性・利便性重視」から、言わば「自然回帰」へ移行しつつあるのかもしれません。
 今回のSPACE DESIGNでは、消費者に「精神的、身体的に優しい、しかもコストパフォーマンスの高い住まいづくり」を提供するため、自らの経験と専門技術を駆使し、客観的に、より科学的な観点から住宅設計に取組むプロフェッショナル、松尾和也氏にお話を伺いました。

◆プロフィール

(有)松尾設計室 代表取締役 松尾 和也


1975年 兵庫県生まれ
1994年 加古川東高校卒業
1998年 九州大学建築学科卒業(熱環境工学専攻)
1998年 エスバイエル、瀬戸本淳建築研究室、プレスに勤務
2003年 松尾設計室に入社し、現在にいたる。
木造(メイン)、RC造の個人住宅、集合住宅
公的福祉施設等、兵庫県を中心に活動を行う。

 
デザイン・設計の相談をする
今回ご登場いただいた松尾先生への相談はこちらから
◆「断熱・デザイン・自然素材のバランスを考える」
■私が理想とするのは「精神的、身体的に住まい手に優しい住まいを経済的に・・・」ということです。これを実現するのに必須と考える手段が「断熱、デザイン、自然素材のバランスを考える」というコンセプトです。
 注文住宅を建てようと思ったときに、大きな選択肢として挙がるのは「住宅メーカー」「工務店」「設計事務所(建築家)」だと思います。私は今までに、その全てを体験してきたという他の方にはあまりない職務経験があります。それぞれで長短はあります。しかし、私の考える断熱、デザイン、自然素材の3項目をバランスよく満たす家を作れるところはこの業界にはほとんどないと思うようになりました。「ないのであれば自分でやればいい」ということで今のコンセプトを元に住宅の設計を行っています。
 

◆高断熱・高気密、そして自然エネルギーの有効利用
  ■「断熱」についてですが、これは高断熱高気密、そして自然エネルギーの有効利用も含めたものをひとことで表したものです。基本的にはQ値(熱損失係数)とC値(相当隙間面積)を小さくしながら、夏の暑さも考えて庇と通風をきちんと考えた設計を行います。これらはシミュレーションによる計算と実測から考えるもので科学的で客観的なものです。 決して「○○工法でなければならない」というような曖昧なものではなく、私は全てこのようなやりかたで設計を行います。
 構造計算に関しても同様で、現在大半を占める木造2階建て住宅においては、国土交通省は壁量計算と呼ばれる簡易な計算でOKとしています。ですが、この計算で自由度の高い、開放的な空間を設計するのは「安全性の確保」という観点で非常に不安なものとなります。ですので、私が設計する場合は3階建てでしか義務化されていない「許容応力度計算」に基づいて構造の設計を行っています。しかもこの計算においては性能評価での最高等級3を確保できるようにしています。
◆「自然素材」が育む、人と環境への配慮」
■「自然素材」に関してですがこれは、化学薬品を含まないという点で「人に優しい」という観点と、少ないエネルギーで生産し、廃棄等もしやすいという「地球に優しい」という両方の意味が込められています。基本的には構造は国産の木材を使用することが多く、内装材は自然素材を多用します。このことは自分の家がCO2の削減に大きく貢献することはもちろんですが、住まい手の健康に大きく貢献します。
 F☆☆☆☆の建材だけで建てた家はメーカーをはじめたくさんあります。しかし、その家は新築臭というものが明らかにします。又、過敏な方には「いるだけで苦しい空間」となってしまいます。家が住まい手を苦しめることがない・・。それだけは絶対に守りたいものです。
 

◆快適な環境を保ちながら開放的な空間を創造
■デザインですが上記の2つのことは絶対に守った上で土地の特性、施主様の要望を充分に汲み取った上で考えていきます。断熱性のレベルが高いことは想像とは逆で開放的な空間を大胆に設計することができます。その結果、面積の小さな家であっても決して狭く感じることのない空間を快適な温熱環境を保ちながら作ることが可能になります。ご参考に、何年経っても「居心地の良い家」づくりを実現するため、デザインの前にご自分の敷地を極限まで読みこなすコツの一部をあげてみました。
○ その土地から見える風景を考える。
○ 道路などからの見え方を考える。
○ 隣地の窓の位置等を考慮する。
○ 駐車スペースの上手なとり方
○ 物干しスペースの上手なとり方(よく乾き、人から見えない)
○ 太陽の当たり方をよく考慮する。
○ 風の通る方向を考える。
◆取材後記
昔、私の家の近所にハイパー・モダン?な形状のコンクリート造りの家が建ち、子供心にも「カッコいい家だな」と感心していました。ごく普通の住宅街の中で、とにかくその建物は目立つ存在でしたが、後でその家の奥さんが私の母に、「冬は寒くて夏は暑い」とこぼしていたと聞きました。デザインと居住性が伴わなかったということでしょうか・・・。松尾先生の「断熱・デザイン・自然素材のバランス」が何年経っても居心地の良い家づくりの基本であるとの理念を伺って、ふとその話を思い出しました。今では、松尾先生のような建築家、住宅メーカー、工務店などの方々のたゆまぬ努力で、私たちが住み心地のよい家を自由に選択できる時代になったなと思います。

取材・文 建材ナビディレクター 中島