建材ナビ 設計士

設計士 建築デザイナーを中心とするプロフェッショナルの方々へのインタビューを掲載!
プロの設計士の考え、仕事のスタイル、アドバイス等のお話を伺いました。

建材ナビ 設計士

これからの住宅や商業施設における設計、デザインの動向を知り、そこで使用されるさまざまな建材アイテムの方向性を探るため、設計士 、建築デザイナーを中心とするプロフェッショナルの方々に取材してまいります。
THE SPACE DESIGN シーズンインタビュー>2012冬Ⅰ号 アトリエmomo 櫻井 百子 氏
2012 Winter Vol.1 アトリエmomo 櫻井 百子 氏
櫻井 百子/アトリエmomo
 家を建てるとき、住んでからの省エネ・節電を意識した設計や材料・設備選びには既に多くの皆様が関心を寄せていることと感じておりますが、たとえば「建設中」に環境に与える影響などを考えることはほとんどないのではないでしょうか。材料を一つ選ぶにも、遠くから運搬してくる必要のある材料なら、それだけコストとエネルギーを多く消費します。
本日は、住まう地域の自然素材を最大限活かし、また自然に負荷の少ない建築を心がけていらっしゃるという、北海道のアトリエmomo 櫻井百子様にお話をお伺いしました。
「1軒の住まいが、地域の活性化のエンジンとなる」。循環型森林経営と環境共生の考え方に基づいた、まさに最先端と言える事例についてお聞きすることができました。
取材・編集
建材ナビ制作ディレクター 森田英理子

森田 : 本日はどうぞ宜しくお願い致します。櫻井先生は、北海道という自然豊かな土地で、「こころや環境に負荷の少ない設計」を、ご自身のお仕事の中で常に心がけていらっしゃるとお伺いいたしました。これまで手掛けられた設計やデザインの中で、特に印象に残っている案件というのはどのようなものでしょうか?
櫻井 百子/アトリエmomo
道北の下川町というところでお仕事させて頂いています。町の総面積の約90%が森林であることから、森林・林業を基幹産業として発展させてきたまちで、環境的な取り組みを先進的にずっと行ってきたところです。  これまでの取り組みのなかで最もやりがいを感じたのは、これまで進めてきた循環型森林経営の一端を担う環境共生型のモデルハウス建設です。2009年に環境省が公募した「21世紀環境共生型住宅のモデル整備による建設促進事業」の対象自治体として全国20箇所のうちの1ヶ所として選定され建設を行うこととなりました。

事例紹介:「下川町環境共生型モデル住宅(エコハウス美桑(みくわ))」
櫻井 百子/アトリエmomo
モデルハウス建設にあたり、設計者選定の公募型プロポーザルが行われ、応募にあたり参加した、下川町での勉強会はとても感動的なもので、「伐採した樹木を大切に利用し尽くす。」そんな循環型森林経営の姿勢が熱く伝わってくるものでした。  高性能な建築を目指すのはもちろんのこと、その姿勢を受け継いで、すばらしい下川町の素材をまるごと活かしたい!という想いが伝わり、モデルハウス建設に携わらさせて頂くことにつながりました。

※画像をクリックすると拡大します。
下川町環境共生型モデル住宅(エコハウス美桑)
外観
下川町環境共生型モデル住宅(エコハウス美桑)
浴室
下川町環境共生型モデル住宅(エコハウス美桑)
暖炉のある居間

【設計のポイント】
 設計期間も工事期間も非常にタイトで、冬期間の工事でしたが、「良いものにしよう。」という想いがあふれた現場で、木材の流通や仕組み、物事へ取り組む積極的な姿勢、そして、目標に向かって決してあきらめないことを学びました。
 また、今までの下川町の取り組みの一端を担うことができた喜びと、厳しい条件下でみんな一丸となってプロジェクトを成し遂げることを通じて、あらためて設計は1人ではできないことを実感し、チームワークの素晴らしさと、設計という仕事が如何にやりがいのあることなのかを思い知りました。
森田 : 「循環型森林経営」とは、自らの住まう地域の良い素材を活かし、また素材のリサイクルによる資源の循環や地域経済の循環などを活性化するという意味でもとても重要な視点と感じました。やはり、普段の設計・デザインに取り入れる素材にはこだわりを持っていらっしゃいますか?
櫻井 百子/アトリエmomo
そうですね、日頃設計していく中で、「できるだけ身近な自然材料を使う。」ということを大切にしています。身近なものを使うことで、遠くから輸送してくる製品よりもずっとCO2の排出を少なくすることができます。
また、近隣地域の物を使うことは、そのままそれを作っている人たちを支援することに繋がります。資源もお金も身近なところで循環が産まれて、大袈裟かもしれませんが、あなたの1軒の住まいが地域を活性化するエンジンになるわけです。
住まいを創ることは小さなビッグプロジェクトですから、目には見えませんがとても大切なことだと思っています。

それと、環境に優しいということはそのまま身体にも優しいと考えます。たった、50年くらい昔の住まいはそのほとんどが身近な自然素材でできていました。家を壊す時はすべて土に帰る材料でできていたと言っても良いと思います。そのような住まいづくりができていた頃は化学物質による健康被害なんかなかったのです。今は技術も発達して、自然素材を使いながら暖かく快適な住まいが作れるようになってきました。

森田 : なるほど。具体的には、どのような素材・建材に現在注目していらっしゃいますか?
櫻井 百子/アトリエmomo
たとえば道産材で主に流通しているカラマツは、以前はあばれて建材にはとても使えないと言われていましたが、現在は構造体にも使うことができます。
また、木の繊維を使った非常に性能の優れた断熱材(製造時の使用エネルギーも環境に配慮されている)や、道北地方でとれる良質の珪藻土、道東地方で採れるホタテの殻を原料にした漆喰(廃棄される殻を再利用)、炭を焼くときに出る木酢液で煮沸処理をした木材など、素晴らしい製品があり、これからも積極的に取り入れていきたいと思っています。

これからの暮らし方―『集まって住む』エココミュニティの提案
櫻井 百子/アトリエmomo
以前からずっと、「集まって住む」ということをテーマに勉強会やセミナーを企画したり、建物だけではなく、「暮らし方」も大切と考えて様々な活動をライフワークとして続けてきました。住まい自体がどんなに環境に優しくても、住まう私たちの意識で変わってしまうからです。
「集まって住む」というテーマは核家族が個別に住まうのに比べて、共有することで環境負荷を減らしたり、無駄なスペースを減らしたり、その分建設費の負担も少なくて、つかず離れずの人間関係で心豊かに暮らせるのではないかと思っています。そんなことを通じて少子化や高齢化などの社会問題も解決する糸口になれば良いですね。近年、急激にシェアハウスのような住まい方が見直されているのもそこに繋がっていると思います。自由な間取りで、豊かな空間を共有しながら、賃貸で住まえたら……そうすることで、みんなが自分らしい空間に住まうことができる選択肢やチャンスが増えます。そんな暮らし方や、設計を通じてそんな住まい方のお手伝いがしたいと切に思っています。

◆エココミュニティーの作り方セミナー 主催:環境NGO ezorock
※画像をクリックすると拡大します。
エココミュニティの作り方セミナー
街のなかにポツッと残る築40年あまりの1軒屋
エココミュニティの作り方セミナー
改修前は凍りついた寒い部屋
エココミュニティの作り方セミナー
コミュニティスペースの使いかたをみんなでシュミレーション
air一軒屋のこころみ

エココミュニティの作り方セミナー
開けてみるといろんな木材屋さんのハンコがついている梁が出てきて、新築当時の背景を想う
エココミュニティの作り方セミナー
コミュニティスペースOPEN
薪もペレットもたけるクラフトマンストーブが大活躍。みんなのよりどころとなるスペースに。

【セミナーの流れ】
①街のなかにポツッと残る築40年あまりの1軒屋
②改修前は凍りついた寒い部屋
③コミュニティスペースの使いかたをみんなでシュミレーション
 air一軒屋のこころみ
④開けてみるといろんな木材屋さんのハンコがついている梁が出てきて、新築当時の背景を想う
⑤薪もペレットもたけるクラフトマンストーブが大活躍。みんなのよりどころとなるスペースに。

【環境NGO ezorockとは】
「次世代」をテーマに活動を展開する環境団体。
北海道最大級の野外ロックフェスティバル「RISING SUN ROCK FESTIVAL in EZO」における
環境対策活動をきっかけに2001年に設立。
現在では、北海道各地のイベントにおける環境対策活動をはじめ、農業、交通、まちづくりなど様々な課題に対して、青年層の持つ「創造力」と「行動力」を届け、次の世代につながる新しい仕組みづくりを行なっている。
森田 : エコハウスや集まって住む暮らし方など、本日は様々なお話をお伺いすることが出来ました。最後に、櫻井先生が建築に携わられて、お仕事にやりがいや喜びを感じられるのは、どんな部分でしょうか?
櫻井 百子/アトリエmomo
私が関わらせて頂いたことで、満足していただけたり、快適だと言って頂けることですね。なにより、お引き渡しの時は感慨深くて、家族の本当にしあわせな瞬間に立ち会えることが私もしあわせで、嬉しい瞬間です。
もしかして、娘を嫁に出す父はこんな気持ちなのではないかといつも思います。家族のみなさんに大切にされて、暮らしを楽しむきっかけになりますように~。活かされてきますように~と、心から願います。

森田 : これから家を建てようとお考えのユーザーさんに対してメッセージがあればお願いします。
櫻井 百子/アトリエmomo
どんな製品を使いたいか。も大切なことなのですが、まずどんな暮らしがしたいのか、具体的なイメージを持つことではないでしょうか?はじめは漠然としていて難しいかもしれませんが、例えば朝起きてからの1日をその家でどんな風に過ごすのかストーリーを考えてみたり、今までお住いになってきたお家の好きな所、使いづらかったところなどを書き出してみるのも良いきっかけになると思います。

私たちの仕事は、そのイメージをうかがって、どんなにもやもやしたものでも形にしていくことから始まります。
より、具体的なイメージをお持ちの方は、それが形になっていくところも楽しみながら、満足のいく住まいづくりができるのではと思っています。

森田 : 今回の北海道・下川町のような、環境共生・循環型森林経営など、先進的な取り組みについて、これからも多くの方々に知っていただき、建築が「地域活性化のエンジン」になれる!という視点がもっと広がることを願います。本日は貴重なお話を本当にありがとうございました。

architect profile プロフィール
櫻井 百子/アトリエmomo
櫻井 百子
sakurai momoko
アトリエmomo

アトリエmomo
profile
1973年北海道旭川市生まれ。
北海道東海大学芸術工学部卒業後、都市計画事務所、アトリエ設計事務所を経て
2008年アトリエmomo設立。

子育てしながら、こころや環境にできるだけ負荷の少ない設計を心がけている。

平成22年度 北海道赤レンガ建築奨励賞、
2011年度 JIA環境建築賞 優秀賞 (住宅部門) 受賞。
櫻井 百子先生に連絡する
GALLERY
Link
エコハウス美桑(みくわ)
http://gomionsen.jp/mikuwa/

環境NGO ezorock
http://www.ezorock.org/
(サイトマップから、コミュニティスペースの改装のプロセスが見れます。)