建材ナビ 設計士

設計士 建築デザイナーを中心とするプロフェッショナルの方々へのインタビューを掲載!
プロの設計士の考え、仕事のスタイル、アドバイス等のお話を伺いました。

建材ナビ 設計士

これからの住宅や商業施設における設計、デザインの動向を知り、そこで使用されるさまざまな建材アイテムの方向性を探るため、設計士 、建築デザイナーを中心とするプロフェッショナルの方々に取材してまいります。
THE SPACE DESIGN シーズンインタビュー>2012冬Ⅱ号 古市久美子建築設計事務所 古市久美子 氏
2012 Vol.1 古市久美子建築設計事務所 古市久美子 氏
古市久美子建築設計事務所
建築のプロフェッショナル達の「今」をお伝えする≪Space Design/インタビュー≫も、今年で4周年を迎えることになり、支えていただいた多くの方々へ感謝申し上げます。
そして、近年、ますます大きくなるエコロジー化の波は『エコハウス』『省エネ建築』など、建築界においても欠くことのできない要素となり、より多くの人々の注目が集まるようになりました。
そこで、2012年の幕開けとなる今回は、自然の力を利用し、快適な住まいを実現するための
『パッシブデザイン』をご自身の建築テーマとされている、古市久美子先生にお話を伺うことにいたしました。
取材・編集
建材ナビ制作ディレクター 森田英理子

森田 : 古市先生の今注目されている建築技術・工法についてお聞かせ下さい。
古市久美子建築設計事務所 古市久美子
昔ながらの住まい方です。深い庇、自然素材、自然通気などです。
しかしそれらを現代に活かす設計にはあるポイントがあります。それがパッシブデザインです。まず機能的で快適な空間性能を実現させます。

それと同時に空間は機能だけではないですね。
すまいごこちを決定させる、もうひとつの大事な点、居心地の良い空間性、も実現します。

わたしが気持よいと感じる空間は、 せまくても広々とみえること、広々とみえるけれども閑散とせず居心地がよいこと。
たとえばわたしは登山をよくします。木陰はとても気持がいいです。閉じているわけではないのに、瞑想したりするのによいある意味でせまくて閉じられた場所です。
でも一方で、昼のおにぎりを皆でひろげるような広く開かれた場所でもあるわけです。
このように空間は伸縮すると考えています。
自分のそのときの状態にフィットするような、広くなったりせまくなったりするといいんじゃないかと考えます。

森田 : パッシブデザインとは、具体的にどんな仕組みで成り立っているのでしょうか?
古市久美子建築設計事務所 古市久美子
パッシブデザインが実現できれば自然を感じる心地よい暮らしがうまれ、同時に消費エネルギーを減らすことができます。

パッシブデザインの簡単なモデルを紹介します。
あたたかな日差しのもとに石をおきます。しばらく放っておいてさわってみるとひんやりしていた石があたたかくなっています。
そして日差しが移動してからもしばらくその石はほかほかと暖かいです。
これを家のなかにおくと考えます。
家の中には夏と冬とでは日差しの奥行きが異なります。
これは太陽高度が季節により異なるためです。夏は太陽高度が高く日射の角度が75度ほど、冬は日射角度が30度ほどです。
そこで部屋の中に夏はあたらないけど冬日差しがあたる場所ができるわけです。その場所へ先ほどと同じように石をおきます。
この冬のおひさまでぽかぽかあたたまった石によって暖房を可能にします。
どうです?シンプルでしょう。
実際には空間のサイズによって石のサイズを選ばないといけないし、綿密な日差しの考察、また石だけでも暖が可能なように部屋の断熱をしっかりさせることが必要です。
古市久美子建築設計事務所 月輪ノ家
古市久美子建築設計事務所


森田 : なるほど。自然のちからを利用して部屋を暖めるのですね。では逆に、パッシブデザインで夏涼しい家とは・・・
古市久美子建築設計事務所 古市久美子
石のはなしは基本的には冬暖かい家の話です。
(ひんやりした石による夏の冷房効果はまだまだ研究中、発展途上です。)
では少し季節外れですが、夏涼しい家について。
兼好法師の話をだすまでもなく住まいは夏をむねとすべし、とは関東関西の夏の高温多湿ぶりから古今かわらずです。
夏涼しい家のポイントは2点です。風と日射遮蔽です。
まずなにはともかく夏の日射をさえぎること、これが基本の基本となります。
まず窓からの直射光を遮ります。おなじみのゴーヤ、キュウリ、ブドウなどの壁面緑化、西の落葉樹、それから伝統的な方法で深い庇、があります。私が設計する家には深い庇が多いです。太陽高度の関係で冬はたくさん日差しがはいり、夏は日差しがカットされるようなコントロールが庇の深さによって可能となります。

次に風です。
意外に風がむずかしく、いつも設計するときはドキドキしています。
風をつかまえるのはそう簡単なことではありません。
地域や敷地によってまた季節、時間によってかわります。だから当然のことのようですがまずはどの方向から風がふいてもよいように風の入口と出口を考えます。
又、夏の夜間の風をつかまえることを考えます。
夜間は昼間あたためられた空気を外に排気する絶好の機会です。
古市久美子建築設計事務所 月輪ノ家
古市久美子建築設計事務所


森田 : 今お聞かせ頂いたパッシブデザインも含め現在関心があつまっている「エコ住宅」ですが、導入の際に気になる       コスト面ではいかがでしょうか?
古市久美子建築設計事務所 古市久美子
確かに、パッシブデザインのほかに太陽光パネル、暖房設備などエコ設備をパーフェクトに追加するには30坪ほどの家で500万円ほどプラスになることがあります。パッシブデザインだけであればプラス100万円ほどで可能です。
ご予算に応じて選んでゆくかたちにはなります。
ただ、少なくともパッシブデザインは空間の快適性をおおきくのばします。コスト分以上の価値はあると考えています。・・エアコンに頼らない生活というのはたのしいですよ。
開け閉めをしたり日差しを遮るための工夫等、、家と話し合いをしているみたいです。

森田 : 最後に、これから家をたてる方へのアドバイスをお願いします。
古市久美子建築設計事務所 古市久美子
予算や現実の生活に応じて考えると同時に、そこから少し離れて空想してみるとよいんじゃないでしょうか。せっかく建築をたてるのだから、もし制限がなければこんな家に住みたい、とかこんな空間がほしいと想像し、それを描いてみるとよいと思います。最初からこれは無理に決まってると決めてかかってしまってはなんだかもったいないなあ、と思います。もちろん時間と予算があります。しかしそこはプロである私たち建築家が解く問題なので、どうぞみなさんは自由に空想の羽をひろげてください。ばらばらでまとまっていなくてもいっこうに構いません。一見、矛盾する要望でも解けることがあります、おまかせください。

森田 : 有難うございます。”パッシブデザイン”は、快適な住まい環境とエコロジー、双方と向き合い、その人ならでは、その場所ならではの住まい方ができるとても魅力的なものだと思いました。とても解りやすくお話していただき、有難うございました。

architect profile プロフィール
古市久美子
古市 久美子
furuichikumiko
古市久美子建築設計事務所ホームページ

古市久美子建築設計事務所
profile
1977年 横浜生まれ
2002年 日本大学大学院生産工学研究科建築工学専攻修士課程修了
2002-2005年 HAN環境・建築設計事務所勤務
冬暖かく夏涼しいパッシブデザインの建築を多数担当
2007年 独立 
戸建住宅をメインに
材料、土、風、熱、気候の特性をいかした建築を設計している。

2歳、1児の母。
古市久美子先生に連絡する
architect information
第10回未来をのぞく住宅展
ASJ武蔵野スタジオ主催
2月11日(土) ・ 12日(日)
武蔵野市民文化会館
東京都武蔵野市中町3丁目9番11号
バス停:市民文化会館前(三鷹駅または吉祥寺駅から。)
2/11(土) 11:00~18:00 入場無料
2/12(日) 11:00~18:00 入場無料
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