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建築家インタビュー
  • 掲載:2010年09月06日 更新:2024年12月06日

良い意味期待を裏切る予想以上の空間を提供できるかどうか
株式会社廣部剛司建築研究所

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~取材にあたり~

10年ほど前のハリウッド映画に「海辺の家」(原題・Life as a House) という作品があります。余命が無いことを知ったひとりの建築家が、最後の力を振り絞り、海辺の家を建て直すことで失われた家族の絆を取り戻すというストーリーでした。「海辺に建つ家」はいつの世も多くの人々の憧憬の的として、それぞれの心の奥底に秘められているような気がします。

今回のシーズンインタビューでは、そんな憧れの「海辺の家」を非常に難易度の高い建築構造といわれるシェル構造で見事に完成させてしまった熱血建築家、廣部剛司氏にお話を伺ってまいりました。



住宅 上野毛T

――施工画像


――デザイン・コンセプト

写真の実例は『上野毛T』での使用例です。中庭との間に建具が出てくるのですが、レールを見せない納まりにしていることもあって、内外の境界線が分からなくなっています。

――建材の感想

まるでもともとそこには建具がなかったかのように、内外を一体化させたい空間でよく採用しています。ある程度の気密性を保ちながら、その建築の納まりにあった方法を提案してくれるので、設計中から採用する場所についてのディテール打合をお願いしています。
それによって生まれる空間の不思議な開放感は、逆説的ですが建具がしまい込まれてその姿が「見えなくなってしまったとき」に真価を発揮します。




興味が持てた・非常に面白かった・やりがいがあったなどと思われた案件はありますか?

木造シェル構造に挑戦した『海辺の家』は非常にチャレンジングなプロジェクトでした。海岸線から10mも離れていない立地にポンと貝殻を置いたような週末住宅を設計したものです。

これは、文字通りシェル構造という貝殻と同じような力の流れになるよう構造解析をし、木材でつくれる形に抽象化しながら設計していったものです。設計の難易度と共に施工上も高度な技術が必要とされる建築でした。関係した方々すべての力が集積して出来た空間です。




設計士・デザイナーとして建築に携わられて、仕事にやりがいや喜びを感じられるのは、どんな時でしょうか?

やはり、設計を依頼して下さるクライアントはある程度の完成イメージを持っておられることが多いと思います。
それをそのまま、ではなくて、良い意味期待を裏切る、そして予想以上の空間を提供できるかどうか?ということを常に課しています。だから、基本デザインから設計が進み、完成に至るまできちんと階段を上るように積み上げられた仕事すべてに対して、建築家としての喜びを感じています。




将来的に、こんな仕事を手掛けてみたいというご希望はございますか?

個人的には楽器を演奏したり、コンサートに出掛けたりと音楽にずっと興味を持ち続けていますので、いつかコンサートホールやライブハウスなど音楽と共にある空間のデザインをしてみたいと思っています。東京芸術劇場などコンサートホールを手掛けられていた芦原義信先生の事務所で修行を積んだのも、それが一つのきっかけとなっていました。また、そんなこともあり普段から「建築」を「音楽」としてとらえるということを実践しています。
これは、音楽に時間軸があるように空間の繋がり(シークエンス)のなかで人が体験することを作曲のように組み上げていくこと。光や風の動きをその場所にいながらにして変化していくものとして捉えること。素材を和声の響きのように組み上げていくこと、です。これらを意識してつくっていく空間には、独特の響きが生まれているように感じます。

現在は住宅の依頼が多いですが、この手法で美術館や商業施設など誰もが訪れることの出来る空間をつくってみたいという気持ちは常にあります。




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