建材情報まとめサイトすまいリング
  • 掲載:2011年12月01日 更新:2011年12月01日
埼玉県 月輪ノ家

エコロジーで快適な“パッシブデザイン”建築のすすめ

古市 久美子
古市久美子建築設計事務所
古市 久美子(KUMIKO FURUICHI)
代表
神奈川県横浜市
<経歴>
1977年 横浜生まれ
2002年 日本大学大学院生産工学研究科建築工学専攻修士課程修了
2002-2005年 HAN環境・建築設計事務所勤務
冬暖かく夏涼しいパッシブデザインの建築を多数担当
2007年 独立
戸建住宅をメインに
材料、土、風、熱、気候の特性をいかした建築を設計している。

<賞歴>
2013年 家づくりの会 大賞展 空間構成部門賞/月輪の家
2014年 ozone what’s家展 ozoneショールーム賞/小平の家
2014年 ozone理想の住宅10+5選/小平の家

<掲載>
2001年 建築文化no.654/2001年8月号/彰国社
2011年 suumo別冊ほしいリゾート/2011年秋号/リクルート/川奈の家
2013年 建築技術/新建ハウジングプラス1/201305月号/新建新聞社/月輪の家
2013年 埼玉の注文住宅/月輪の家
2016年 チルチンびと 夏号/小平の家


古市先生の今注目されている建築技術・工法についてお聞かせ下さい。

昔ながらの住まい方です。深い庇、自然素材、自然通気などです。

しかし、それらを現代に活かす設計にはあるポイントがあります。それがパッシブデザインです。まず機能的で快適な空間性能を実現させます。
それと同時に空間は機能だけではないですね。すまいごこちを決定させる、もうひとつの大事な点、居心地の良い空間性も実現します。

わたしが気持よいと感じる空間は、せまくても広々とみえること、広々とみえるけれども閑散とせず居心地がよいこと。
たとえばわたしは登山をよくします。木陰はとても気持がいいです。閉じているわけではないのに、瞑想したりするのによいある意味でせまくて閉じられた場所です。
でも一方で、昼のおにぎりを皆でひろげるような広く開かれた場所でもあるわけです。

このように空間は伸縮すると考えています。自分のそのときの状態にフィットするような、広くなったりせまくなったりするといいんじゃないかと考えます。




パッシブデザインとは、具体的にどんな仕組みで成り立っているのでしょうか?

パッシブデザインが実現できれば自然を感じる心地よい暮らしがうまれ、同時に消費エネルギーを減らすことができます。

パッシブデザインの簡単なモデルを紹介します。
あたたかな日差しのもとに石をおきます。しばらく放っておいてさわってみるとひんやりしていた石があたたかくなっています。そして日差しが移動してからもしばらくその石はほかほかと暖かいです。
これを家のなかにおくと考えます。 家の中には夏と冬とでは日差しの奥行きが異なります。
これは太陽高度が季節により異なるためです。夏は太陽高度が高く日射の角度が75度ほど、冬は日射角度が30度ほどです。
そこで部屋の中に夏はあたらないけど冬日差しがあたる場所ができるわけです。その場所へ先ほどと同じように石をおきます。
この冬のおひさまでぽかぽかあたたまった石によって暖房を可能にします。

どうです?シンプルでしょう。
実際には空間のサイズによって石のサイズを選ばないといけないし、綿密な日差しの考察、また石だけでも暖が可能なように部屋の断熱をしっかりさせることが必要です。




なるほど。自然のちからを利用して部屋を暖めるのですね。では逆に、パッシブデザインで夏涼しい家とは...

石のはなしは基本的には冬暖かい家の話です。(ひんやりした石による夏の冷房効果はまだまだ研究中、発展途上です。)

では少し季節外れですが、夏涼しい家について。
兼好法師の話をだすまでもなく住まいは夏をむねとすべし、とは関東関西の夏の高温多湿ぶりから古今かわらずです。

夏涼しい家のポイントは2点です。風と日射遮蔽です。
なにはともかく夏の日射をさえぎること、これが基本の基本となります。
まず、窓からの直射光を遮ります。おなじみのゴーヤ、キュウリ、ブドウなどの壁面緑化、西の落葉樹、それから伝統的な方法で深い庇があります。私が設計する家には深い庇が多いです。太陽高度の関係で冬はたくさん日差しがはいり、夏は日差しがカットされるようなコントロールが庇の深さによって可能となります。

次に風です。意外に風がむずかしく、いつも設計するときはドキドキしています。
風をつかまえるのはそう簡単なことではありません。地域や敷地によってまた季節、時間によってかわります。だから当然のことのようですがまずはどの方向から風がふいてもよいように風の入口と出口を考えます。
又、夏の夜間の風をつかまえることを考えます。夜間は昼間あたためられた空気を外に排気する絶好の機会です。




今お聞かせ頂いたパッシブデザインも含め現在関心があつまっている「エコ住宅」ですが、導入の際に気になるコスト面ではいかがでしょうか?

確かに、パッシブデザインのほかに太陽光パネル、暖房設備などエコ設備をパーフェクトに追加するには30坪ほどの家で500万円ほどプラスになることがあります。パッシブデザインだけであればプラス100万円ほどで可能です。ご予算に応じて選んでゆくかたちにはなります。

ただ、少なくともパッシブデザインは空間の快適性をおおきくのばします。コスト分以上の価値はあると考えています。
エアコンに頼らない生活というのはたのしいですよ。開け閉めをしたり日差しを遮るための工夫等、、家と話し合いをしているみたいです。




最後に、これから家をたてる方へのアドバイスをお願いします。

予算や現実の生活に応じて考えると同時に、そこから少し離れて空想してみるとよいんじゃないでしょうか。せっかく建築をたてるのだから、もし制限がなければこんな家に住みたい、とかこんな空間がほしいと想像し、それを描いてみるとよいと思います。

最初からこれは無理に決まってると決めてかかってしまってはなんだかもったいないなあ、と思います。もちろん時間と予算があります。
しかしそこはプロである私たち建築家が解く問題なので、どうぞみなさんは自由に空想の羽をひろげてください。

ばらばらでまとまっていなくてもいっこうに構いません。一見、矛盾する要望でも解けることがあります、おまかせください。




ARCHITECT
設計士インタビュー
シーズン毎で取材させて頂いている設計士へのインタビュー記事です。2007年秋にスタートして四半期毎に新しい記事の更新をしています。住宅、集合住宅、商業施設、公共施設など設計士の体験談をお楽しみください。
先月よく読まれている記事
玉上 貴人|日常的な事象や原理を「視覚化」
下田恭子|「そこにしか存在し得ないもの」としての建築
小野寺一彦|地域で活きる人たちの為の建築を魂を込めて造る
片岡直樹|構造設計者・設備設計者の立場に立ち、設計上の高度な判断ができる統括設計者を目指してます。
藤田慶|聞き上手で論理的な思考、そして確かな実践力をもつ設計者と一緒に建築することが大切です。