建材情報まとめサイトすまいリング
  • 掲載:2010年06月01日 更新:2023年10月13日
呉の家Ⅱ

家をつくることはあくまでも「家族の生活が良くなるため」の手段

髙志 俊明(TOSHIAKI TAKASHI)
有限会社 アルキプラス建築事務所
髙志 俊明(TOSHIAKI TAKASHI)
代表 / 一級建築士
〒730-0013
広島市中区八丁堀3-8-204
TEL:082-502-6556
FAX:082-502-6557
<経歴>
1973年12月 徳島県徳島市生まれ
1997年03月 広島大学工学部第Ⅳ類建築学課程 建築意匠学研究室 卒業
1997年04月 株式会社創設計コンサルタント 入社
2002年04月 arch+建築事務所 設立
2003年05月 有限会社アルキプラス建築事務所 設立

<所属団体>
社団法人 広島県建築士会 正会員
社団法人 日本建築家協会 正会員

<資格>
一級建築士
(社)日本建築家協会 登録建築家
(社)日本建築士会連合会 設計専攻建築士

『既成概念』にとらわれない

特に得意な分野・・・といったことは意識せずに設計を行っています。
実績としては、主に、住宅・店舗・賃貸マンションがメインですが、店舗の考え方を住宅に用いたり、反対に住宅の考え方を店舗に用いたりと、既成概念にとらわれないようにしています。


その家族にとって一番のプランはその人の頭の中にある

家造りって本当に分からない事だらけだと思います。土地を探すにしても、どんな土地がいいのか?資金計画は?まず、何からはじめればいいの?

まず、一番大切なことはしっかりと考えることだと思います。わがままになっていろんな要望をあげてみてください。その上で一度立ち止まって考えてください。「何のために家を造るのか?」なぜ家を造ろうと思ったのでしょうか?家造りで大事なことは何ですか?・・・家族が楽しく暮らせること。
どのような家を希望しますか?
家に無くてはならないものは何ですか?
家造りをする上で一番したくないことは何ですか?
現在の課題・問題・・・分からないことは?
家を造ることが目的になっていませんか?

多くの人が家造りが進めば進むほど実際に出来上がったあとの生活ではなく、家そのもののことを考えがちです。建物と生活とどちらが大事でしょうか?
家をつくることはあくまでも「家族の生活が良くなるため」の手段です。それぞれの家族の生活が大切です。あくまでも家を造ることは手段なので・・・どのような生活をしているのかどのような生活をしたいのか・・・・によっていい家が変わってきます。その家族にとって一番のプランはその人の頭の中にあるはず。

理想のプランは我々設計するものよりも実際にそこに住もうとしている方のほうがよく分かっているはずです。我々建築のプロと実際に生活する・生活のプロが良いパートナーとなって一緒に考える。他に何が必要ですか?


各段階でそれぞれ違ったカタチの喜びがある

やりがいや喜びを感じるタイミングは何度かあると思います。
まず、最初にお話をさせていただいたときのワクワクから始まり、実際にプランを考える段階でのひらめき、プレゼンをして受け入れていただいたときの喜び・・・各段階でそれぞれ違ったカタチの喜びがあります。言ってみれば、常に喜びを感じながらできるのかも知れません。

やりがいについては、建築が出来上がり、実際に使われはじめてから、改めて、良かったといっていただくことが一番のやりがいです。 以前、引渡しのときに「もう、打ち合わせすることもないんですね。なんかさびしいです。」といわれたときにはこれ以上ない喜びを感じました。


望まれるのは、フレキシブルでありローコストであること

これからの住宅に限らず、建築全般に望まれることは、フレキシブルであることとローコストであることがあげられると思います。
フレキシブルであることで、ライフスタイルに合わせて間取りの変更が可能であったり、新築当初は必要だった子供部屋を将来的には店舗に改装したり・・・さまざまな可能性があると思います。
フレキシブルに造ることで将来の可能性を増やし、当初予算をローコストに抑えることで、将来対応に対しての予算にも余裕を持たすことが出来ます。


今必要なものは”必要”として整理する

今必要なもの(欲しいもの)と後々必要なもの(欲しいもの)、今あったらいいもの、今は無くてもいいもの・・・等々、要望の中で整理をすることがまずローコスト住宅の第一歩だと思います。要望の中には、欲しいし、今必要だけど、金額的に諦めているようなものもあると思います。ローコストなのでと諦めてしまうのではなく、単純に今必要なものは必要として整理すれば良いと思います。実際に何故必要なのか、その物のどの要素(機能)が必要なのかをはっきりすれば、意外とローコストでも実現できることがあります。

整理がついた時点で、今必要なもの(欲しいもの)をどのような方法で現実化していくかですが、実際には時間をじっくりとかけて、お話させていただくことが必要です。時間をかけて詳細に検討を進めていくことで解決することも多々あります。

今は必要ないけれど、後々必要なものについては、必要になったときにその部屋(設備)を設けられるように考えてみてはいかがでしょうか?金額的に見ても、当初10年間必要の無いものを最初からつくっておくよりも、10年後にとっておいてそのときに再度お金をかけたほうが、ローン金利を考えた場合にも結構な金額差が出てきます。ひょっとすれば、当初は必要だと思っていたことが実際には必要でなかったり、全く別のものが必要になることも考えられます。

ライフスタイルはどんどんと変化していくものです。その変化に伴って住宅も変化していくべきです。住まいながら家を育て、家に家族が育てられるような関係の家づくりはいかがですか?


どのような物が好きで、どのような考え方をされるのかできるだけ早く理解するよう努める

ここ最近特にSNSの写真を提示されて「こんな感じが良い。」というのが増えています。
SNSの写真だけではなく、インターネット等にて随分と勉強されてからご相談に来られる方も多くなっているように思います。もちろん、ご自身で勉強されていろいろとご要望をお伝えいただくことは決して悪いことではありません。

私の場合、ご要望をヒアリングする際には「なぜ、それが欲しいのですか?」と質問をします。
その際に理由が明確でなかったり、「SNSでみてよさそうだった」「ネットでこうすれば良いって書いてあった」というお答えをいただいたりします。ネット関係の情報がすべて間違っていなければよいのですが、実際は結構いい加減な情報も多くあるように思います。
住宅の場合は特に家族ごとの生活習慣も違えば、立地条件も大きく違います。極端な例ですが、沖縄の大家族の方の情報を北海道の3人家族の方が見て単純にまねをしようとしてもなかなか簡単にはいきそうにありません。

SNSの写真を見せていただく際にも、好きな写真だけではなく、好みじゃないものも同時にご提示いただくようにしています。また、具体的に好きな写真のどこが良いのか、好みじゃない写真のどこが悪いのかを一緒に話させてもらうようにしています。

我々はもちろん設計の専門家ですが、なかなか人の心の中までは見ることができません。その人がどのようなものを好んで(反対に好まなくて)、どういった考え方をされるのかをできるだけ早く理解できるように努めるようにしています。


現場の職人さんからの意見を聞く

「図面で表現していることは設計時点での完成形であり、現場で設計内容が変わっていくこともあり得る。
現場で様々な人の意見をできるだけ取り入れて設計図よりもよりよくなっていくべき。」と考えていますので、現場での職人さんにも気になったことがあれば、どんな些細なことでも言ってもらえるように意識しています。

ただ、なかなかこだわりの強い職人さんも減ってきています。(反対に効率的に仕事を進めようとする方は増えてきているように思いますので、悪いことばかりではありませんが・・・)そんな状態では特に、現場監督さんの存在はとても大きいです。設計者と職人さんとの間を上手に取り持ってくれて、その現場に携わる人の気持ちを良いものを作ろうって方向にしっかりと向けてくれる人がいる現場は特に楽しいですね。


最終的にはお客様の価値観で判断してもらう

一番、難しい注文といえば予算と要望との大きな差があることだと思います。
住宅の場合、特にですが、要望は出始めるときりがないです。せっかく建てるんだからあれもこれも・・・といった具合に様々な要望が出てきます。
そんな場合は、最初にすべての要望を出し切ってもらうようにしています。(もちろん、途中で様々な要望も出てくることや、考え方・好みも変わってくることも普通にあり得ますのでその時点での要望)

その後、出していただいた要望について、一つずつ具体的に、なぜそれが欲しいのかをヒアリングします。すべての要望について具体的な理由をお話ししていく段階で、2割程度は「別になくていいかな・・・」に代わっていたりします。

次にその時点で残った要望について、同居できないもの(よくあるのは、単純にご夫婦でのデザイン的な好みの違い、や趣味に関すること)について、それぞれ対立するものの優先順位を一緒に考えます。この時点で残った要望については、そのままで進めます。

ある程度、設計を進めた段階で、施工会社さんに見積を依頼して概算にはなるものの金額を出していただきます。金額を出していただいてあと、この段階で残っている要望に対してその内容に対して掛かる費用を一覧表にします。
ここまでで単純に欲しいものの一覧、金額一緒にすることで、各要望が値札付きになり「価値観」といった尺度が追加されます。とても欲しかったものでも金額と見比べた際に「そんなに金額がかかるならいらない」ということも、逆にそれほどでもなかったものが思ったより安かった場合に「その金額なら欲しい」ということも出てきます。

本当に必要なものかどうか、何故ほしいのかを最初にしっかりと話し合い、最終的には金額と見比べて「価値観」で判断してもらうのが一番良いと思います。


フレキシビリティーの向上が最も効果的であり、とても大切な要素である

これからの住宅・建築全般に言えることだと思いますが、今まで以上にフレキシブルなものが求められるようになると思います。
いつも考えることですが、日本の住宅において、水回り以外は基本的に一間(ひとま)で完結できていました。朝起きて、布団を上げ、そこにちゃぶ台を置くことで、先ほどまで寝室だった空間がダイニングに代わります。欧米のようにそれぞれの部屋に役割がしっかりと与えられているのではなく、その時々に応じて様々なつき方ができるような空間が、本来日本には向いているように思います。

ただ、先ほどのちゃぶ台の話のように、瞬時に代わるものではなく、もっと長いスパンで考えた場合に、ずっと同じ用途でしか使うことができないような空間はつくるべきではないと思います。一時期からテレビの影響等もあり、リフォーム・リノベーションも盛んになってきています。リフォーム・リノベーションも空間に手を入れることで別の空間へ生まれ変わらせることができます。
住宅・建築の長寿命化が求められるようになり、性能や素材に目が行きがちですが、もっと効果的なのが「フレキシビリティーの向上」であり、これからはとても大切な要素になると考えます。

住宅において、最初にどんな部屋が必要かを質問すると、多くのご家族がその先数十年にわたって必要になるであろう部屋をすべて最初から欲しいという回答が返ってきます。とにかく、部屋は多い方が良いといった考え方がまだ根強いのが実際です。
まだ結婚間もないご夫婦が、お子様が生まれたのをきっかけに住宅を建てようという場合、今はまだ子供一人だけどもう一人予定しているから、子供部屋二つと二人の寝室、それに若いうちはフローリングが良いけど、老後は畳の上で過ごしたいと思うようになるかもしれないから和室・・・といった具合に。

では、生まれたばかりのお子さんが実際にその子供部屋を使い始めるのはいつになるのでしょう?平均的には小学校高学年のようです。そうなると10年程度は使われない部屋になってしまいます。
お子様の小さいうちは、リビングは広い方が良いですが、子供部屋を使うくらいの年齢になればそれ以前に比べてリビングの広さはそこまで必要ないかもしれません。
使わない子供部屋をつくるのにも当たり前ですが、お金はかかります。10年も経ってしまえば子供部屋にあった方が良いものも変わってくるはずです。同じお金をかけるなら、実際に使うようになった時につくった方が、より使い勝手も性能もよいものができるはずです。

反対に、リフォーム・リノベーションで最も多い要望は、部屋を減らして広くすることです。もう、物置にしか使っていない部屋がもったいないし、もう少しリビングも広い方がいい・・・ということが多くあります。

この2つのことを「フレキシビリティーの向上」で解決できるのではないでしょうか。必要な空間は必要な時だけあれば良く、それによって同じ住宅でも間取りをどんどんと変えていくことができるのが理想だと思います。

といっても、なかなか何度も工事をするのも・・・。
その部屋、本当に必要でしょうか?例えば、子供部屋。子供って(特に男の子の場合)自分のまわりにいろんなものを並べて自分のスペースを作る遊びをよくやります。それが子供部屋の始まりではないでしょうか?つまり自分のまわりに何か他と区切りものがあればそこは自分の空間。
例えば、目線の高さが隠れるパーティションで区切られた空間があれば、そこは大人にとっても十分部屋としての機能を果たします。

となると子供の成長に合わせて、必要な収納量が増えるのに合わせて、収納家具で空間を仕切っていけばそこは自分の部屋。その後、子供一人暮らしを始めてその空間が不要になったときには、その収納を壁に並べてしまえば、広い空間に戻ります。

「フレキシビリティーの向上」は設計だけでどうにかなるものではなく、その空間を使う人の考え方や使い方による部分も大きくなります。新築時にどこまでそのあたりをしっかりと話し合い、考えて作っていくことができるかが今後、最も大切なことになると考えます。


我々建築家と一緒に楽しもう

家づくりにおける土地探し、資金計画は比較的わかりにくい部分が多いと思います。ただ、その全てを、我々建築家と一緒に楽しんでできるとしたらどうでしょう。土地の良し悪しは、そのような家でどのような生活をしたいかによっても変わってきます。資金計画においても、何を優先にするかによっても変わってきます。その家に住まう家族にあった土地の探し方、資金計画はあるはずです。

家づくりは実際には楽しいことよりも、大変なことの方が多いと思います。ただ、何度も体験できるものではありません。せっかくの機会です。難しいことは、信用できる専門家に任せて(われわれ専門家を上手に使って)しっかりと楽しんでください。



先月よく読まれている記事
トミオカアーキテクトオフィス 冨岡 繁|お施主様と共に創り上げた「床に座す家」
小野寺一彦|地域で活きる人たちの為の建築を魂を込めて造る
遠藤知世吉|建築におけるSDGs「いつまでも家族が輝ける家造り」
片岡直樹|構造設計者・設備設計者の立場に立ち、設計上の高度な判断ができる統括設計者を目指してます。
玉上 貴人|日常的な事象や原理を「視覚化」
ARCHITECT
設計士インタビュー
シーズン毎で取材させて頂いている設計士へのインタビュー記事です。2007年秋にスタートして四半期毎に新しい記事の更新をしています。住宅、集合住宅、商業施設、公共施設など設計士の体験談をお楽しみください。