Special Interview for Architects
2015年 夏号
【THE SPACE DESIGN】では、これからの住宅や商業施設における設計、デザインの動向を知り、そこで使用されるさまざまな建材アイテムの方向性を探るため、設計士、建築デザイナーを中心とするプロフェッショナルの方々に取材してまいります。
プロフィール
株式会社SiZE
坂本 俊久(サカモト トシヒサ)
経歴  
1982年 国立有明工業高等専門学校建築学科 卒業
京都にて、社寺建築専門会社・設計部勤務の後、帰福。
市内設計事務所を経て独立
1989年 アーキスタジオ・テン 一級建築士事務所 設立
2009年 快適空間創造会社・株式会社SiZE 設立
2010年 省エネ建築診断士 資格取得
2011年 福岡パッシブハウス竣工
(ドイツパッシブハウス研究所認定パッシブハウス)
国内3棟目、九州では初の認定物件
株式会社SiZE

株式会社SiZE

お客様から先生への設計・デザイン上で要望で、最も多いものはなんでしょうか?

数ある選択肢の中から弊社に住まいの設計をご用命いただくお客様は、住まいの快適性能・省エネ性能まで重視される方々です。
これらは住み始めてから何十年と、住まい手の健康状態にまで大きく関わっていく事ですので、非常に大切です。そういった性能面と、暮らしやすく飽きがこない空間・間取りといった住み心地の良さ(私たちは‘フィット感’という言葉をよく使います)を両立できるプランとテクニックを求められています。
ただ一括りに暮らしやすさと言っても、それは住まい手ご家族により千差万別。私たちは常に、住まい手ご家族それぞれのより良い暮らしを、共に思い描けるパートナーである事を求められています。 実際、決して他言できないようなお話をそっと打ち明けて下さるお客様も多いものです。

一般ユ-ザ-さんに対して、良い家を建てる為に先生から何かアドバイスがあれば教えてください。

まず、ご自分に合った相性の良いプロのパートナーを見つける事。そしてそのプロに、忌憚なく希望をぶつける事。
矛盾があってもそれを取りまとめてくれるのがプロの仕事です。住まい手にとっては、溢れんばかりの要望があって当たり前です。それらに優先順位をつけて整理し、形にしていくのが「設計」という作業なのですから。
昨今の日本の住宅事情では、この当たり前の事が軽視されているような気がします。自称プロから理想型を押し付けられたり、逆に住まい手の要望を整理する事なく詰め込んだ挙げ句、混沌とした秩序のない空間になってしまったり。また、「設計」という言葉が、間取り決めだけに終始してしまってもいけません。
間取りと空間構成、性能、コスト、これらをトータルで「設計」できるプロとの出会いを大切にして下さい。決して焦らない事も大切ではないかと思います。
是非じっくりと、信頼し合えるパートナー探しから始めてください。

先生が設計士として建築に携わられて、仕事にやりがいや喜びを感じられるのは、どんな部分でしょうか?


弊社の仕事はほとんどが個人のお客様のお住まいの設計ですが、住まいづくりは特に、住まい手の暮らし、延いては人生と直結しています。住まい手ご家族の幸福に貢献できるというところが、私たちが住まい作りを続ける原動力であり、使命であると感じます。
私たちは完成後も多くのお客様とコンタクトを取り続けますが、新しいお住まいでの暮らしが始まってから、ご夫婦仲が一段と良くなった、お子さまの情緒が安定してきた、おじいちゃま・おばあちゃまがお元気になられたなどというお話が聞けたときは、本当に幸せを分けていただいたような嬉しさです。

先生が、今一番注目している、技術又は工法などございましたら教えてください。

日本の住まいの性能は、他の先進諸国からすると数十年の遅れをとっています。世界中に工業技術を輸出している自負のある日本人にはあまり自覚のない事実ですが、本当です。こと快適性や環境負荷の点では顕著です。
この点を重視する高性能住宅のプロたちは、人間にとって快適であり、なおかつ環境負荷の少ない高性能な住まいで世界を牽引する「ドイツパッシブハウス基準*」に学び、国内での普及を試みています。
弊社は2011年、福岡で国内3棟目のドイツパッシブハウス認定をクリアした住宅【「福岡パッシブハウス」キーアーキテクツ株式会社/森みわ氏と共同設計】の設計・監理に携わりました。日本でこのレベルの高性能住宅が選ばれていくには、当然住まい手側の意識も高まっていくことが必至なのですが、その後も弊社はより快適で省エネな住まいを目指しています。
※ 「福岡パッシブハウス」の施工事例はコチラ

これからの住宅はこんな風になるだろうという予測、あるいはこんな風になるべきであるという、先生のお考えがありましたら教えてください。

遅ればせながら日本の住まいも、今後、必要に迫られて高性能化が進んでいきます。 2014年に省エネ基準が改正され、この4月より完全施行となりましたが、それでも「ドイツパッシブハウス基準*」のシビアさにはほど遠く、日本の住まい全体の性能がそのパッシブ基準に近づいていくにはまだまだ時間がかかるのですが、これから様々な問題が生じながらも、蛇行しつつ進化していくのではないでしょうか。
日本の住宅にも「カーボン・オフセット」の概念が浸透し、環境共生型の住まいが一般的なものになる未来を、一日も早く実現したいものです。」

※ ドイツパッシブハウス基準とは
ドイツのパッシブハウス研究所が規定する性能基準を満たす認定住宅。
各国の定められた省エネルギー基準の中で最も厳しく、基準を満たすためには、窓や断熱材、換気装置の選別、気密・断熱の施工技術力、熱損失や消費エネルギーの計算など高レベルな建築設計並びに施工が求められる。

施工事例