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  • 掲載:2023年03月01日 更新:2023年03月01日

バーチャルの世界に現実の建築空間を創出するBIM

栗原 弘
株式会社栗原弘建築設計事務所
栗原 弘(HIROSHI KURIHARA)
代表取締役/一級建築士/管理建築士/住宅性能表示評価員/栃木県震災建築物応急危険度判定士/震災建築物被災度区分判定復旧技術者/既存住宅状況調査技術者
〒327-0821
栃木県佐野市高萩町1235-19 アトリエK 2F
TEL:0283-24-7099
FAX:0283-24-7176
<主な業務内容>
建築、外構の企画・設計・監理
リノベーション
家具の設計、デザイン
耐震診断業務(木造、鉄骨造、RC造)
<主な実績>
戸建住宅、商業建築、公共建築、他、新築・改修など多数
詳しくは弊社Web Siteをご覧ください


BIMを取り入れたきっかけは

8年前に、BIMを利用する設計コンペの運営に携わったのがきっかけでBIMに興味を持ちました。
各ベンダーのデモ体験会に参加したりしてシステムの概要や操作性などを実際に経験してみて、しばらく検討後、4年前に導入しました。

昨年2台目を導入し、現在はそれぞれのソフトの強みを生かしながら併用しております。

GLOOBE(福井コンピュータアーキテクト)…左)国産ソフトならではのきめの細かい設定と操作が特徴である。
右)採光、換気、排煙、斜線制限などの建築基準法上、必要な計算もビジュアル的に確認しながら進められる。



使用しているBIMソフトは?

最初に導入したのは、福井コンピュータアーキテクトのGLOOBEです。
最初にGLOOBEを選んだのは主力ベンダー4社(GRAHISOFT、AUTO DESK、A&A、福井コンピュータアーキテクト)の中で、唯一の日本製建築基準法に対応したモデルの構築ができることや、操作がわかりやすかったのがポイントでした。

2台目の導入は、AUTO DESKのRevitです。Revitを導入したのは、意匠・構造・設備を1つのソフトでシームレスにモデルを構築でき、それぞれの設計段階で解析機能を利用できることなど総合的に設計業務が進められるところで選びました。
RevitのデータをGLOOBEに直接読み込みができるため互換性は抜群によく、モデルも詳細に表現できることから、法令検討の際には非常に重宝しております。




導入のハードルはありますか

導入へのハードルはありますね。なかでもコスト面が大きいかと思います。
従来の2次元及び3次元CADに比べても高額なので、導入したいけどコスト面で躊躇したり、「CADでも十分」という方がいるのも現実です。
普及率が今ひとつ伸び悩んでいるのもそのあたりが大きいのではないでしょうか。

Revit(AUTO DESK)…左上)平面図と矩計図それぞれで詳細を検討しながら同時に設計業務を進めることができる。 右上)検討段階の外観パース。 左下)構造の検討段階でもモデルと図面を2画面同時に検討できる。 右下)設備設計も同様にモデルと図面で同時に検討し、構造材との干渉などチェックもできる。



CADとBIMの違いは

よく3次元CADとBIMを混同しがちですが、中身は全く別物だと思います。
3次元CADは粘土をこねてモデルを造りあげる感覚、BIMは情報を持ったオブジェクト(部材など)を積み上げてモデルを造りあげる流れ。3次元CADで造るモデルは単なる3次元データ、BIMで造るモデルは実際の建築と同じ情報を持った、いわばバーチャルの世界に現実と同じ建築を造っている、というところが決定的に違います。

BIMは、情報がダイレクトに図面に反映されるので情報の食い違いが起きにくいこと、細部納まりの検討でモデルを切断し意匠・構造・設備とビジュアル的に検討できるなど各工程がシームレスにできるのは大きなメリットです。逆にデメリットは、モデル入力に時間がかかること、ソフトを使いこなすまでに時間を要すること、BIMオペレーターの不足などではないでしょうか。
ただ現時点では、全ての設計業務をBIMのみで完結することは難しいので、しばらくはBIMと2次元CADの併用が続くかと思われます。




これから導入を考えている方に向けてアドバイスをお願いします

弊社は、BIM導入後、しばらくはソフトに慣れるまでCADをメインに業務を進めていましたが、導入半年過ぎた頃には完全にBIMをメインとした業務工程を確立しました。
工事種別(新築、改修等)問わずにBIMでモデルを構築し最後に図面化する、という流れにしてから作業の後戻りがかなり減りました。
クライアント様とも基本設計段階からモデルを活用しながら打合せを進めることができるため、プレゼンでもその効果は発揮しています。

また施工計画や工事段階でも、建設会社との打合せ時にモデルと図面を併用しながらできるため、打合せに要する時間も減りお互いにその効果を感じているところです。 BIMは企画・設計から維持管理まで対応できる便利な「道具」です。
業務効率を上げるのであればBIMのメリットは大いにあるのではないでしょうか。弊社も3名で日々の設計業務に勤しんでおりますが、BIMの便利さは大いに感じています。
いま考えている方は一日も早い導入をおススメします

左)設計段階の外観パース、右)竣工写真 計画段階から詳細に提案、表現することによって誤差なく完成することが可能となる。



ARCHITECT
設計士インタビュー
シーズン毎で取材させて頂いている設計士へのインタビュー記事です。2007年秋にスタートして四半期毎に新しい記事の更新をしています。住宅、集合住宅、商業施設、公共施設など設計士の体験談をお楽しみください。
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