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  • 掲載:2023年03月01日 更新:2023年03月01日

BIMの導入により施主との情報共有が劇的にスピードアップ

稲見公介
株式会社 稲見建築設計事務所
稲見 公介(KOUSUKE INAMI)
一級建築士/代表取締役/CASBEE建築・戸建て・不動産・ウェルネスオフィス/省エネ適合判定員/住宅性能評価員
〒030-0962
青森県青森市佃1-5-7
TEL:017-742-2636
FAX:017-742-2637
<経歴>
1975年 青森県青森市生まれ
1994年 青森県立高等学校卒
建築以外の大学に行き、建築以外の職業に就き、退職後専門学校へ
2002年 東北文化学園専門学校建築科卒
2008年 稲見建築設計事務所 主宰
2018年 法人化により株式会社稲見建築設計事務所 代表取締役へ
<賞歴>
第3回あおもり産木造住宅コンテスト「最優秀賞」
第5・10回あおもり産木造住宅コンテスト「優秀賞」ADKパートナーズアワード2015グラフィック部門「銀賞」第9回東北住宅大賞「奨励賞」
エコハウス大賞・「温熱性能部門賞」
あおもりキャリア教育応援企業表彰 他


BIMを取り入れたきっかけは

取り入れようとした理由は、時代の流れがBIMになることが明確だったからです。
また、私の建築士会や建築士事務所協会の他県の仲間達が積極的にBIMを導入していたこともあり、BIMを学ぶうえで疑問点を聞きやすい環境になってきたこともあります。




使用しているBIMソフトは?

BIMはArchicadVectorWorksの2つを使用しています。メインで使用してるのはArchicadです。Vectorは、詳細図、店舗などで使用しています。
また、BIMではないですが、構造計算、省エネ計算、天空率などの検討でアーキトレンドを使用しています。
3つのソフト連携は、2次元では綺麗にいきますが、3次元ではなかなか上手くいきません。どのソフトにも一長一短があり、得意なところを使い分けています。出来れば一本化したいです(笑)




導入してみていかがでしたか

BIMを導入したときに感じたのは、時間の大幅短縮ができたことです。
時間短縮により人件費を削減することができ、削減できた人件費をBIMの導入コストに割り当てることができました。
また、時間にもゆとりが生まれたので、設計の検討に使うことができて設計の質が高まっていくと感じています。

2次元CADで十分と発言している人は、CADが普及するかしないかの時に、手書きが早いと話しているのと同じです。
またJWCADなど無料のCADを使っている方々からすると、金銭面のハードルは大きいと思います。
しかし、我々設計事務所にとっては、CADなどのソフトは、職人さんの工具と一緒ですし、美容師さんのはさみ、料理人の調理器具と一緒なので、必要な道具にお金をかけない人に、良い設計はできないと思います。金銭面のハードルを乗り越えられない企業は、今後は設計する機会が大幅に減ると私個人は考えています。

技術面のハードルについては、習うより慣れろで使わないと乗り越えられません。
BIMの操作に慣れるまでは、時間を要します。時間がかかっても納品するという覚悟で一つの物件を納めないと、なかなかBIMへの乗り換えは難しいです。




CADとBIMの違いは

BIMと3DCADは似ていますが、BIMには情報が入れられる点が大きな違いです。
例えば外壁のBIMなら、メーカー情報や単価、断熱材の断熱性能などの情報を持たせられます。 サッシのBIMなら、断熱性能、気密性能、防火設備かどうか、認定番号などの情報を持たせることができます。

3DCADとBIMで画面上同じように見える外壁やサッシが、情報をもつことで、その情報を表などにして吐き出せます。自動とはいきませんが、採光・排煙・換気・斜線制限・建ぺい・容積率などの計算もBIM上で行えます。
パーツを増やしていくと、簡単に外壁やサッシを変更することが出来ます。

BIMは、線や面のデータでないことが大きな特徴であり優位性なのです。半面、詳細図を書くときの操作性は、残念ながらまだまだ2次元CADには及びません。弊社でも詳細図は、2次元CADで描いてます。




BIMのメリット、デメリットは

メリットは、基本設計がとにかく早く作成できることです。公共建築物の基本設計の検討案3つ提出と言われたところ10案提出できました。
また、施主様と情報共有がしやすいです。BIMxという無料ソフトで、施主様にBIMデータと図面データをスマホやタブレットで見せることができ、合意形成がしやすいです。外観のプレゼンは、BIMだけでワンストップで終了します。

デメリットは、構造、設備、施工側が二次元CADでデータを納品してくるので、結果自分で入力し直さないといけないことが一番のストレスです。
維持管理や施工計画は、施工業者さんの対応がなされないとまだ、実務レベルにはならないと思いますので時間がかかるイメージです。(対応している施工業者さんが少ない。)




BIMの活用に向けて、建材メーカーに求める事はありますか。

BIMデータ化しているメーカーがまだまだ少ないので、対応していただけると設計はかなりしやすくなります。
設備メーカーさんが特に、BIMデータがあるほど検討がしやすいです。住宅なら、ユニットバスやシステムキッチンのデータがあると便利だなと感じています。
値段、認定番号、性能値、メンテナンス年数など色々なメーカー推奨の情報を入れて世の中に普及したら建築業界の大革命になります。




BIM導入を考えている方に向けてメッセージを頂けますか。

BIMは、難しいものではありませんが、考え方の切替と、BIMで全てが楽に出来るわけではないことを念頭に置いた方がいいと思います。
私もBIMでなんでも出来ると思っていたので、最初は戸惑いましたが、BIMで出来ること、2次元CADでできることを整理したことで、一気に技術習得につながりました。
全てのデータをBIMデータにすると時間がかかるし、容量が重くなってファイルの読み込みなどに時間がかかります。そこでBIMと2次元CADの共存が必要になります。

現在はBIMモデル=設計図書でなく、一度BIMデータを二次元の図面に変換しないといけません。
それであれば、BIMで表現すると時間がかかるものや表現できないものは2次元CADで作り、BIMから作られた図面データに貼りつけることで、複雑なBIMモデルを作らなくてもよくなります。

BIMでやるところ、2次元CADでやるところを切り分けることも大切です。
私は、平屋の住宅の設計をBIMで行い、BIMで足りないところは2次元図面で補うことから始めました。
BIMで出来ることが、どんどん増えてきています。皆さんにも出来ることからチャレンジしてみることをお勧めいたします。




ARCHITECT
設計士インタビュー
シーズン毎で取材させて頂いている設計士へのインタビュー記事です。2007年秋にスタートして四半期毎に新しい記事の更新をしています。住宅、集合住宅、商業施設、公共施設など設計士の体験談をお楽しみください。
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